【2020年版】研究コラム 年間バズランキングTop10!
2020年は、各業界が新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた1年となりました。学術業界も例外ではなく、研究の進め方やスタイルなどを見直さなければならなくなってしまった研究者も多かったと思います。
そうした厳しい状況のなかでも、今年もさまざまな分野の研究者が、成果をまとめたコラムをacademist Journalへ寄稿してくださいました。今年は「バズランキング」として、2020年に公開されたacademist Journalの研究コラムのうち、Twitterを経由したセッション数が多かった記事上位10本をご紹介いたします。
1. 人文学・社会科学系研究者にとって、「非常勤講師職」はどういう意味をもつか? – アンケート調査から見えたこと
第1位は、academistのクラウドファンディングプロジェクト「人文・社会科学分野の若手研究者が抱えるキャリアの問題とは?」がもととなった研究コラムでした。昨今、若手研究者のキャリアや雇用に関する問題が叫ばれるなか、本コラムでは、アンケート調査から明らかになった人文社会科学系ならではの問題点が指摘されています。
2. かなづちで叩くと酸化還元反応が進行する? – 物理的な「力」を利用した新たな化学反応
化学反応は、一般的に熱や光により促進されますが、機械的なエネルギー、つまり物理的な「力」を利用する有機合成反応はほとんど例がありません。第2位となった本コラムでは、機械的なインパクトを利用した「メカノレドックス反応」で大変ユニークな分子変換反応を実現した研究についてご紹介いただきました。
3. 天王星は巨大衝突で横倒しになり、大蒸発の果てに小さな衛星群が残る – 新たな理論モデルの発見
巨大衝突が原因で、自転軸がほぼ横倒しになっていると考えられている天王星。しかし、この「巨大衝突説」では、天王星の衛星たちの成り立ちを説明することができません。第3位は、この謎を見事に解く画期的なモデルを提唱した研究に関するコラムです。
4. 生物の移動パターンを数理モデルで探る – レヴィウォークの仕組みと機能的利点
アリから、サメ、アホウドリ、狩猟民族まで、さまざまな生物で「レヴィウォーク」という移動パターンが共通してみられます。なぜこれほどまでにレヴィウォークが生物の移動に見られるのでしょうか? 本コラムでは、レヴィウォークは自発行動の一種であり脳の臨界現象から生じるという仮説を数理モデルで検証した研究についてご紹介いただきました。
5. 人々が”自然”だと思う食べものの色は、どのように画一化されてきたのか – 消費主義社会における五感の歴史から探る
トマトの赤やバナナの黄色——人々はなぜ・どのようにある色を「自然な(あるべき)」色だと認識するようになったのでしょうか。 本コラムでは、食品の色の歴史的変化に着目し、色が食品の生産・マーケティングで果たす役割や、消費者の食に対する認識の変化を分析した研究について解説していただいています。
6. フンボルトペンギンの糞の最大飛距離は約1.34m! – 理論物理学者が本気出してうんちの軌道を計算してみた
ペンギンの糞がものすごい勢いで飛んでくるので、直撃して困るんです——水族館の飼育員のそんな一言からはじまった研究のコラムが第6位となりました。普段は冷却原子気体や中性子星を専門に研究を行う理論物理学者が、ペンギンの糞の動力学について検証し明らかになったこととは何だったのでしょうか。
7. ブラックボックス最適化と結晶構造解析の出会い – 機械学習で材料科学の新たな発見を導く
情報科学を材料科学に応用するマテリアルズ・インフォマティクスの研究では、計算機とアルゴリズムを用いて解決可能なのにも関わらず、手つかずとなっている材料科学の問題が数多くあるといいます。本コラムでは、粉末X線回折パターンのデータ解析に機械学習を適用した研究についてご紹介いただきました。
8.「ガシャモク」の発見から始まった、青森県つがる市の無名の池での水草研究
本コラムの研究は、研究チームが偶然訪れた青森県つがる市の無名の池で、謎の水草の断片を拾ったことをきっかけにスタートしました。この偶然は、日本から絶滅寸前だった希少種「ガシャモク」や、日本新産となる雑種「ツガルモク」の発見につながりました。
9. 日本文化に特有の「間」が脳機能に与える影響とは? – 音楽と脳の関係を科学的に探求する
特別な音楽教育を受けてきた音楽家は脳の聴覚機能が発達しており、それに伴い言語聴覚機能も向上することが知られています。しかし、これまで明らかにされてきたことのほとんどは、クラシックやポップスなど西洋音楽理論に基づいた音楽に関わることでした。本コラムでは、雅楽など日本伝統音楽の「邦楽」がヒトの脳にどのような効果をもたらすのかを検証した研究について解説していただいています。
10. 見た目は同じでも中身が違う!? – カブトムシの幼虫における成長速度の地理的変異を明らかに
カブトムシの幼虫の急速な成長が冬までに大きくなるための適応であるならば、冬が短い地域では、幼虫の急速な成長はみられないかもしれません。つまり、緯度と成長速度には正の関係がみられる可能性があります。コラムでは、青森から台湾にかけての12か所のカブトムシの成虫を採集し、卵から孵化した幼虫を同一の条件で飼育した結果について紹介していただきました。
<番外編:最もバズったインタビュー記事>
ゼニゴケにはあってタバコにはない遺伝子を追求したら、100年越しの謎が解明できた – 名古屋大・藤田祐一教授インタビュー【前編】
frxCという謎の遺伝子の機能について調べていくと「被子植物は暗所で育てると緑色にならないのに、裸子植物ではきちんと緑色になるのはなぜか」という1世紀前からの疑問の解決につながった——インタビューは、こうした名古屋大・藤田先生の研究に関する記事が最もバスりました。後編もあわせてぜひご覧ください。来年も、academist Journalをどうぞよろしくお願いいたします。
ゼニゴケにはあってタバコにはない遺伝子を追求したら、100年越しの謎が解明できた – 名古屋大・藤田祐一教授インタビュー【前編】
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