年末恒例となった記事閲覧数ランキングを今年も発表します! 今回は2019年に公開されたacademist Journalの研究コラムインタビューのなかから、特に閲覧数の多かった記事上位10本をご紹介いたします(集計期間 2019年1月1日〜12月25日)。

1. 高齢者の体が震える原因とは? – 「本態性振戦」の発症メカニズムをマウスの脳から探る

第1位は、手先の震えなど老化と共に顕著に見られる「本態性振戦」という現象のメカニズムに迫った研究です。本態性振戦は日常的にもよく見られる病気でありながら、なぜ発症するのかについては明らかになっていません。多くの人々が不思議に思う現象のようで、検索からこの記事にたどり着く方も多いようです。

高齢者の体が震える原因とは? – 「本態性振戦」の発症メカニズムをマウスの脳から探る

2. 日本人の基本6感情の表情は「エクマン理論」に従うか? – 人工知能を用いて検証

表情には、基本的な6つの感情(怒り・嫌悪・恐怖・喜び・悲しみ・驚き)を表す普遍的なものあるという「エクマン理論」。多くの研究がそのような普遍的な表情があることを前提として行われていますが、日本人ではどうでしょうか? 表情の実証的研究と人工知能による客観的分析からこの謎に迫ります。

日本人の基本6感情の表情は「エクマン理論」に従うか? – 人工知能を用いて検証

 

3. シカの個体数増加が川の生きものに与える影響とは – 10年におよぶ研究林の調査データから明らかにする

研究者自身すら予想していなかった成果にたどり着いたというこの研究からは、野外での長期観察、ひいては基礎的な調査に取り組むことの重要性がうかがえます。Twitterでの反響が大きく、堂々の3位にランクインです。

シカの個体数増加が川の生きものに与える影響とは – 10年におよぶ研究林の調査データから明らかにする

 

4. 身のまわりでもブラックホールの量子現象が起こる? – バタフライ効果における「量子論的な発熱現象」を予言

ブラックホールで起こっている「量子論的な発熱現象」が、コーヒーにミルクを注ぐといった日常の何気ない一場面でも起きている可能性があることを理論的に予測した研究です。遠く宇宙の果てで起きているのと似た現象が私たちの日常にもあると思うと、どことなくロマンを感じますよね。

身のまわりでもブラックホールの量子現象が起こる? – バタフライ効果における「量子論的な発熱現象」を予言

 

5. なぜ、命がけでフィールドワークをするのか? – ゴリラ研究の第一人者 京都大学・山極寿一総長に聞く

ゴリラ研究の第一人者である京都大学の山極寿一総長に、ジャングルでのフィールドワーク研究について生々しく語っていただきました。「ゾウにやられたらまず助かりません」「ゴリラにとってペットのような存在になる」など、経験者にしか語れない数々の名言が登場します。

なぜ、命がけでフィールドワークをするのか? – ゴリラ研究の第一人者 京都大学・山極寿一総長に聞く

 

6. 芥川賞受賞者は長生き? – 社会的地位が余命に及ぼす影響

芥川賞を受賞すると、受賞しなかった候補者に比べて、余命が1.7年延びる。一方で、直木賞を受賞すると余命が5.3年縮まる——衝撃的な研究成果ですが、実際に経済学の学術誌に掲載されたものです。SNSでの反響が非常に大きい記事でした。

芥川賞受賞者は長生き? – 社会的地位が余命に及ぼす影響

 

7. 高分子の”伸び縮み”で「人工光合成」を加速する! – 電子伝達を制御する高分子の相転移

環境問題やエネルギー問題を解決するためのヒントとして注目される植物の光合成。この記事では、高分子が”伸張/収縮する挙動”を使うことで、新しいコンセプトの人工光合成システム構築を目指した研究についてご紹介いただきました。

高分子の”伸び縮み”で「人工光合成」を加速する! – 電子伝達を制御する高分子の相転移

 

8. 非生命から生命を作れるか? – 光からATPを生産してタンパク質を作る「人工細胞」の挑戦

7位に続いて、生命現象を人工的につくる研究がランクインしました。なぜ、人工細胞を作るのでしょうか? それは、生命がシステムとして成立する仕組みや条件を完全に理解するためであるといえます。

非生命から生命を作れるか? – 光からATPを生産してタンパク質を作る「人工細胞」の挑戦

 

9. 原子核の「かたち」はまんまるではない? – あらゆる原子核の”理論計算核データ”を公開

原子核の「かたち」だけでなく、質量や半径、核変換するために必要なエネルギーなど、原子核物理学だけでなくさまざまな応用のために有益な情報を公開した「InPACS」というWebサイトの公開にあわせてご寄稿いただいた記事です。原子核についてとてもわかりやすく解説していただいています。

原子核の「かたち」はまんまるではない? – あらゆる原子核の”理論計算核データ”を公開

 

10. 油脂の味は6番目の基本味か? – “脂肪酸を感知する神経”とその役割を探る

ラーメンから油を取り除いたら、美味しく感じるでしょうか? 5つの基本味である、甘味、塩味、酸味、苦味、うま味に新たに加わる6番目の味は、油脂の味かもしれない——そうした可能性があることを神経科学的に明らかにした研究です。

油脂の味は6番目の基本味か? – “脂肪酸を感知する神経”とその役割を探る

 

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今年は「研究キャリアの生かし方」という連載を立ち上げるなど、academist Journalとして新しい企画にチャレンジした年でもありました。2020年も引き続き、さまざまな分野の研究をご紹介していきますのでお楽しみに。また、研究者のみなさまからの寄稿も受け付けております。新しい研究成果や論文の内容をacademist Journalの研究コラムとして紹介してみませんか? ご興味のある方はお問い合わせフォームよりご連絡ください。今後とも、academist Journalをどうぞよろしくお願いいたします。