【2021年版】世界の学術系クラウドファンディングサイトランキングTop5
こんにちは!アカデミストの柴藤です。年末が近付いてきたので、昨年にひきつづき世界の学術系クラウドファンディングサイトTop5を紹介します。7年目となる今年は、いくつかの変化がありました。
第1位:Experiment@アメリカ(2,445プロジェクト:前年+154件)
今年のExperimentは順調で、昨年よりも公開件数が50件ほど増えました。達成したプロジェクトも1,000件を超えており、2022年には流通総額$10,000,000に到達しそうです。
また、2021年12月には研究者支援の新しい座組み「Footprint Coalition Science Engine」がスタートしました。この取り組みは、数々の映画に出演する俳優でありプロデューサーのRobert Downey Jr.が主導しており、5つの研究領域に対してそれぞれ50,000ドルの特別研究費を準備するというものです。
上記の研究領域に関心のある研究者・大学院生は、Experimentでクラウドファンディングにチャレンジし、自分で集めた金額と同じ金額の研究費(最大5,000ドル)を運営母体であるFootprint Coalitionから受け取ることができます。
この仕組み自体は、academist Grant のクラウドファンディング型に近いのですが、5つの研究領域のプロジェクトリーダーが決まっている点が特徴的で、特に若手研究者には魅力的に写るのではないでしょうか。academist と似た動きがUSでも進められているということを、とても心強く感じています。
第2位:academist@日本(223プロジェクト:前年+40件)
昨年に続き、academist が第2位となりました。今年からスポット型に加えて月額支援型もカウントしていきます。2023年12月末には Experiment に追いつけるように取り組んでいきます。
今年はスポット支援型では、academist 史上最高金額となるプロジェクト「記憶のメカニズムを解明し、健忘症ゼロの社会を実現する!」が誕生しました。また大学・研究機関提携も進み、東京医科歯科大学や東海大学、東京家政学院大学の特設ページを公開することができました。
そして月額支援型では、2021年9月より academist Prize supported by 日本の研究.com が始動しました。8名の若手研究者が、賞金総額100万円を目指して2022年8月まで月額支援型のクラウドファンディングにチャレンジしていますので、ぜひプロジェクトページをご覧ください。
第3位:Sciencestarter@ドイツ(149プロジェクト:前年-1件)
老舗のSciencestarter、この1年はプロジェクト数に変化がなく、運営が止まってしまっているみたいです。ドイツも研究費事情は厳しいみたいなので、うまく連携していけると良いのですが…。
第4位:precipita@スペイン(109プロジェクト)
第4位はスペイン発の「precipita」。2011年から有志の研究者たちが学術系クラウドファンディング&クラウドソーシングを実現するプラットフォーム「VORTICEX」をスペイン科学技術財団(FECYT)のサポートのもとで運営していたのですが、継続的な運営が難しくなり、2019年に活動を休止しています。
現在は「precipita」が唯一の学術系クラウドファンディングで、このサイトはスペイン政府が運営しています。日本でいうと文科省がクラウドファンディングサイトを運営しているようなものですね。VORTICEXの発起人にその背景を聞いたところ、リーマン危機で科学研究への公的支援が劇的に減り政府が危機感を覚えたためはじめたとのことでした。
第5位:CROWDSCIENCE@イギリス(61プロジェクト:前年+1件)
ドイツのSciencestarterと同様に、ほとんど稼働していない状況です。
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ランキングに大きな動きはありませんでしたが、Experiment のプロジェクト数が増えてきているのが良いニュースでした。学術系に特化していない総合型のクラウドファンディングサイトは世界にたくさんあり、そのなかにも魅力的な研究プロジェクトはあるのですが、全てを発掘することはできません。academist は来年も、研究プロジェクトの制作力・宣伝力を高めていくことはもちろん、特化型である強みを活かして世界のプラットフォーマーたちをつなぐ役割も担っていきたいと思います。2022年の academist にもご期待ください!
この記事を書いた人
- アカデミスト株式会社代表取締役。2013年3月に首都大学東京博士後期課程を単位取得退学。研究アイデアや魅力を共有することで、資金や人材、情報を集め、研究が発展する世界観を実現するために、2014年4月に日本初の学術系クラウドファンディングサイト「academist」をリリースした。大学院時代は、原子核理論研究室に在籍して、極低温原子気体を用いた量子多体問題の研究に取り組んだ。