今回は2023年8月30日に開催された「academist Prize 第2期FINALアカデミスト賞発表イベント」についてレポートいたします!
このイベントのテーマは「若手研究者と考える30年後の未来」であり、academist Prize第1期から第3期までのチャレンジャーの集結する第2期の締め括りに相応しい豪華なイベントとなりました。また、このイベントでは聴講者も投票により2期生の応援ができ、充実かつ白熱のピッチとなりました!また、ピッチに加え科学技術・学術政策研究所(NISTEP)林和弘さん、三菱総合研究所 小野由理さんを交えた特別対談も行われ、将来の基礎研究の社会実装に向けた30年へ向けた意思、問題意識、希望を共有する有意義な対話の場となりました。

開幕を飾る1期生によるピッチ!

2期生によるピッチに先立ち、まずは1期生によるピッチが行われました。第1期が終わった後も、引き続きより一層活動に力を注ぐ様子に勇気づけられた参加者の方は多かったのではないでしょうか。

渡部 綾一 さん
「意識」という側面から多様性について解明していく、30年後の目標について力強く語られました。この1年多様な活動を行ってきた渡部さんに期待が高まります。

坂本 光士郎 さん
坂本さんは「人々が老いに苦しむことなく、本物の長寿社会を実現する」という目標での研究の一方、「すべての研究者を加速させる」という目標のもと、先月研究自動化の分野で起業されました。いずれも未来のための行動力を感じさせるものでした。

高谷 直己 さん
髙谷さんが30年後の目標に掲げるのは「生活習慣病がかつての病になっている社会」です。現在増加の一途をたどる現状を踏まえ、小さな蓄積の積み重ねの重要性が確認されました。

安掛 真一郎 さん
「微生物の力で持続可能な農業を支える」という目標に向け、枝豆の活用した農村活性化について活動するなど進捗が目覚ましいものでした。

今泉 拓 さん
クラウドファンディングを通して感じた、支援者とのつながりによる自身への影響、「日常生活に彩りを増やす」という輝きのあるビジョンが語られました。

2期生のアカデミスト賞を決する、 怒涛のピッチ!

野口 真司さん
「作られたものの輝きが失われない」という未来を目指す野口さんは、光の制御により構造に由来する色を左舷するなど、現在の着色剤などの課題に向き合っています。また、「研究者自身が熱意を持って研究し続ける」ことが色褪せてはいけないという言葉は研究者のみなに響くものでした。

高木 志郎さん
高木さんは「どこまで世界が理解できるのか」という着眼点から、「ほぼすべての研究を機械が行う」ことを目指し研究活動を進めています。研究とは「社会にとって新しい知識の生産をする活動」という価値観も相まって、これからの研究の未来を基盤から作っていく期待を強く感じました。

櫃割 仁平さん
俳句の研究をする櫃割さんは、「30年後の未来のことはわからない」という誠実な向き合い方でありつつ、今後の自らの方向性についてさまざまな道をすでに模索していることが伝わってくるものでした。多様な角度からの検討は、参加者の皆さまがワクワクする部分も多かったのではないでしょうか。

五十嵐 大輔さん
五十嵐さんは30年後を考えるために30年前を考えるという、温故知新の観点からお話を展開されました。研究分野であるリチウムイオン電池の発明において、多種多様な分野の人同士の交流が果たしてきた役割に触れ、まさに今回のような研究者同士が繋がっていく場の大切さが確認できるピッチとなりました。

河口 謙二郎さん
「自然と健康になれる環境づくり」を掲げる河口さんは、将来のまち作りにおいて、人生100年時代、生涯未婚率の増加、高齢者の増加といった社会課題に着目し、コミュニティの再興が解決策の1つであると提案しました。この「慈しみ深いコミュニティ」というキーワードは、誰しもが関係のあることだからこそ響くものがありました。

中野 佑紀さん
広島大学の中野さんは、半導体や電子デバイスに関する機能性材料の研究を行っており、AIや情報技術による高度な情報化社会が未来に確実に訪れると言及しました。その実現のために電力をほとんど必要としない新しいメモリー材料の開発に焦点を当てており、そのためにマテリアルゲートという会社の設立を通し、さらに力強くその未来に近づいていることを報告しました。

佐藤 玲央さん
「遠い宇宙の環境がどうなっているのか」という解明を目標に、今年実験装置の開発、新たな発見を達成した佐藤さんは、将来の未来では多くの研究者が宇宙をテーマに研究するだろうと述べました。宇宙の、さまざまな手法や対象を提供する性質は、今後より大きな広がりとなり、相互作用によって多様な分野の発展がもたらされるという希望を感じるピッチでした。

石坂 晴奈さん
石坂さんはケアについての考えについて、機械と人間の関係をまず読み解かれました。そこには、人間にとって、どういった関係がありうるべきなのか真摯に向き合う姿勢がありました。情報過多などの現象を引き起こしながら全てのものについて回る「発展」というなかにあり、30年後を見据えた相互の理解のために石坂さんの姿勢は必ず必要なものだといえるでしょう。

坂本 良太さん
医薬品の30年後の未来について、坂本さんは過去30年前の低分子医薬品とその問題点をまず紹介しました。そのなかでバイオ医薬品の主流性を占めるに至った経緯に触れ、それが生んだ社会的な課題に向き合うために低分子医薬品の効率的な製造という形での手法を提案しており、過去を参照することで必要なものが見えることに気付かされました。

野村 佳祐さん
野村さんは「腸内細菌と人の30年後の未来」というテーマでお話されました。世に触れることが多くなった一方、腸内細菌の研究課題はまだ多くあるそうです。AIの役割、将来の健康診断といったこれからの可能性について言及され、そのなかでの基礎研究の重要性を強調されました。

原 直誉さん
原さんは研究において枠に囚われず自然文化史など広範な分野から1年間取り組み、文化生物学プロジェクトチームも発足されました。ミミズについて研究するなかで原さん自身が叫び続けてきた「生きものとの付き合いを増やしたい」というメッセージを改めて訴えました。1貫したそのテーマは身近な生物だからこそ、私たちも1歩何かできないかと思わされるものでした。

渡邉 文隆さん
渡邉さんはまず、30年後への多くの課題や懸念について触れ、「研究に対する過小投資を終わらせる」と力強く宣言しました。マーケティングの研究によって、多くの人が抱くであろう「怖さ」を研究の力で打ち破り、アカデミアと社会の関係を改善していく試みは、集まった誰もが自分ごととして考えたことでしょう。


 

過去を見つめ、未来を考える鼎談

科学技術・学術政策研究所(NISTEP)林さん、三菱総合研究所 小野さん、アカデミスト株式会社 柴藤によるパネルディスカッションでは、「過去を見つめ、未来を考える」というコンセプトのもと活発な議論が行われました。長年に渡り、問いを変えながら科学技術政策を実践し、社会の興隆を分析されてきた林さん、小野さんだからこその充実した内容となりました。実際に「未来の見え方」が過去と現在では大きく変化していることがそれぞれの視点から具体的な形で触れられ、ただアカデミアの発展のみが独立してあるのではなく、どのような社会を私たちが描くか、ということがいかに重要か実感されました。
 

これからを担う3期生の紹介と、緊張の結果発表!

今回はピッチのみではなく、3期生の紹介も行われました。1人10秒という極めて短い中でありながら、1人ひとりの個性がすでに強く光っているのが印象的で、今後の3期生にも期待が高まります!

そしてそんな熱意溢れるピッチの嵐の後には、アカデミスト賞を決する時間がやってきました。今回は聴講の皆さまの投票から、総額50万円が配分されました。緊張の走る結果発表ですが、

1位:渡邉 文隆さん  (「研究への寄付募集」の研究で、日本の大学の10年後を変る)

2位:石坂 晴奈さん (介護する人もされる人もハッピーな認知症ケアを実現したい)

3位:中野 佑紀さん (「日の丸半導体」復活へ!究極の単分子メモリで世界を変える!)

となりました!今回ベスト3となった皆さんも、そこに至らなかった皆さんも、今回のファイナルに至るまでそれぞれの進化を重ね、また多様なつながりを経験してこられたところを感じるピッチとなりました。
 

2期から3期へ。アカデミストのこれから

このacademist Prize2期を通して、さまざまなつながりやアウトプット、広がりが生まれてきました。今回の大盛況のイベントはその集大成といえるものでした。30年後を考えることの難しさは何度となくこのイベントでも言われてきましたが、その変化を引き起こすきっかけがまさにこのacademist Prize2期の中にあったと思えます。そんな皆さまのご活躍はこちらのサイトからご覧いただけます。これらの成果や得られたものを、効果的な形で社会に提示し持続可能な展開を作るべくアカデミストは挑戦し続けて参ります。今回紹介のあった第3期のテーマは「AI×〇〇学」。このFinalの後、3期生の新たな挑戦が始まりました。どうぞ、アカデミストの、そしてacademist Prize 第2期、第3期生のこれからにご期待ください!