今回は2023年12月27日に開催された、「AI for Science」をテーマとした「academist Prize 第3期 企業賞発表イベント」をレポートします!このイベントは、会場、オンライン、そしてメタバースも合わせてacademist Prizeとしては最大規模の盛り上がりを見せ、academist Prize3期生がピッチ形式で研究の進捗や成果を発表し、参加者がその場で投票できるスタイルで行われました。

ショートピッチ・特別講演・パネルディスカッションを中心として優れた知見、独自性あふれるアイデアが発表され、最後まで熱気冷めやらぬ大盛況のイベントとなりました。参加者は多様な視点からAIの科学への応用に関する新しいアイディアや発見を共有されました。今回のテーマであるAIは、今現在、あるいはこれから関わらない人はいないといえます。そんな中で、異なる専門分野からの参加者たちは多様な考え方を交換する貴重な場となりました。

 

特別講演「AI for Scienceの現在地」

大澤さんの特別講演は、深い興味に基づいており、その情熱と信頼が参加者に深く伝わっていました。ドラえもんを作る夢や、ロボットと人との新しい関わりに対する研究は、その熱量が研究の隅々まで感じられるものです。AIを単なる科学の道具ではなく、サイエンスとAIの交差点として位置づけ、その可能性について語っていました。大規模言語モデルを通じた心のアーキテクチャの模倣や、若手研究者に向けたアドバイスも、彼の独自の視点からのものであり、参加者も各々の興味・関心といったモチベーションに改めて向き合うきっかけとなったのではないでしょうか。

大澤さんの「やりたいことを追求することが大事だが、一人では限界がある。いろいろな人の得意分野を借りながら協力し合うことで、新しい可能性が広がる」という言葉は非常に印象的なものでした。特別講演は学術的な枠を越えて、リラックスした雰囲気で共感を呼び起こすものでした。

熱意あふれる3期生のピッチ

ここからは今回集まった3期生8名の怒濤のピッチとなります。それぞれの力強い動機、信念、そしてこれからのビジョンが感じられるものでした。何よりAIとScienceの関係性についてのそれぞれの創造性にあふれる発表は、参加者の視野を大きく広げるものとなりました。

待井さん

待井さんは研究者の多様な視点を活かし、異なる分野の協同や融合に焦点を当てた研究を行っており、その中で情熱と共に知識を共有する重要性を強調しました。実践を通じたワークショップにおいて、AIを活用してその価値を最大化することを目指します。異なるバックグラウンドを持つ研究者が集うこの場だからこそ、有意義さを感じた参加者も多かったことでしょう。

カナ グレイスさん

カナ グレイスさんは、ニューロダイバージェンスに焦点を当てたピッチを行いました。この概念が日本で広まる必要性を訴え、その普及が医学的・社会的な適切な対応を促進し、偏見を排除する上で不可欠であると語りました。また、AIが診断に活用される事例に触れつつ、障碍を持つ人々が合理的な配慮を受け、社会的な障壁を克服するためには、情報知識の差を埋めることが不可欠であると強調されました。

櫃割さん

櫃割さんは俳句にスポットを当てました。AIとプロ俳人の作った俳句を紹介しましたが、参加者には見分けが極めて困難なものです。熟達者であっても見分けが難しい場合や、AIと熟達者がコラボする新たな可能性を模索中です。また、人の心を評価する際に自由記述を用い、それを自然言語処理して得点化する事例も紹介。俳句を通じて、櫃割さんならではのアプローチでAIと人の心について興味深い研究を進めていることが伺えました。

石崎さん

石崎さんのピッチでは、材料力学の重要性が強調され、ほとんどのモノが材料開発に基づくものであるという指摘は現代に生きる私たちには非常に痛感されるものでした。彼は実験条件の多様性からくる課題に対し、自律的な実験を行うAIの導入が研究手法を大幅に変える可能性を提案しました。現在、部分的な自動化を進めつつ、将来的には完全な自動化を目指しており、世界的に研究が進む中石崎さんご自身も発信を努めています。

大道さん

大道さんのピッチでは、大規模言語モデルと人間の相違を身体的経験と客観的知識の観点から提示されました。そして、AIに身体性を組み込むことで、人間とのコミュニケーションが互いに世界を有する新しい次元に進化し、新たな物語が生まれる可能性を示唆しました。この発想を元に、大道さんは居場所ロボットの開発に取り組んでいます。参加者のロボットへの見方もより一層進化し、新たな展望が開かれたのではないでしょうか。

白砂さん

白砂さんは、認知科学を通じて知性の特徴とメカニズムを研究しています。今回はAIと比較して情報量が圧倒的に少ないにもかかわらず、人間が正確な判断を行う特性に注目しました。特にクイズにおいて見られる駆け引きやエンタメ性、人間特有の思考について考察し、認知科学のアプローチを通して人間の知性に迫りたいと語りました。その独自のアプローチが、知性における研究に新たな視点を提供しています。

菅原さん

菅原さんのピッチでは、AI、歴史学、クラウドファンディングが融合したプロジェクトに焦点が当てられました。人間とAI、そして歴史学が共に歩む歴史観を実現するため、AIを活用した資料解読、対話、記憶のリブートプロセスを説明しました。このプロセスを通じて、こぼれ落ちていく人々の歴史を救い上げたいという彼の強い思いが感じられました。参加者は歴史への新たな理解を得る興味深い展望に触れました。

梅谷さん

梅谷さんは協力行動と進化メカニズムを専門としています。彼は人類の発展において「赤の他人と手を結ぶこと」を鍵とし、社会規範が他者評価の基盤であると指摘しました。相互協力社会を維持できるAIに組み込むべき社会規範を模索し、同時にAIがこの規範を脅かす可能性にも警鐘を鳴らしました。梅谷さんのピッチは、参加者にとってAIの多面性を考察し、人間との協力における新たな視点を提供する貴重な機会となったでしょう。

 

パネルディスカッション『長期投資が未来を作る』

参加者の投票のあいだ、アカデミスト柴藤とさわかみ投信CIOの黒島さんを交えたパネルディスカッションが展開されました。ディスカッション中、サプライズとしてさわかみ投信賞が発表され、櫃割さんが受賞者として発表されました!これにより、ディスカッションは櫃割さんも加えた中で進行することに。

黒島さんは、世の中に欠かせない技術サービスを応援し、長期投資を通じて社会に残したいという姿勢を強調し、成熟した社会にふさわしい経済の形成を語りました。また、AIとの融合領域において研究者は、新しいサービスやコミュニケーションの主役になるとの展望を示しました。柴藤は「長期」のキーワードに重ね、有限な枠を超えて可能性を広げる重要性に言及し議論はさらに白熱しました。研究の価値を伝えていく当事者である櫃割さんからの質疑も交えつつ、価値を伝え、受け取り、長期的に持続可能にする視点に焦点を当てたディスカッションとなり、参加者にとって非常に貴重な、学びとなる時間となったことでしょう。

結果発表!オーディエンス賞に輝いたのは!

パネルディスカッションの余韻が残るなか、オーディエンス賞の発表が行われました。この投票は、会場の参加者だけでなく、オンラインとメタバースからも広範な参加があり、誰が受賞してもおかしくない緊迫感ある結果となりました。

オーディエンス賞3位には櫃割さんが、2位には梅谷さんが選ばれ、1位には菅原さんが輝きました。それぞれのピッチは圧巻で、研究への情熱や深い洞察、そしてその研究が社会にもたらす影響についての考えが参加者の心を打ちました。

受賞者に限らず、登壇者の皆さんが示した研究の重要性と情熱は、単なる成果発表にとどまらず、参加された一人ひとりの考え、ひいては将来の学術界や産業において大きな影響を与えることでしょう。イベントを支えた全ての参加者やスポンサーに感謝の意を捧げながら、また、アカデミアの今後に期待が尽きません。

サイエンスと、私たちのこれから

閉会後には登壇者も発表者も垣根なく、研究と未来の展望について自由な意見交換が行われる素晴らしい場となりました。最後まで続く熱気に満ちた雰囲気は印象的で、AIがテーマとなるなか、AIを利活用するだけでなく、AIと共研究の進化に対する模索へのきっかけとなりました。さまざまなバックグラウンドを持つ多種多様な研究者たちが一堂に会し、共有された知識やアイデアから生まれた価値は計り知れません。単なる「AIを利用する」ではなく、AIと共にある未来を築くための展望が広がりました。

この場を提供してくださったスポンサーの皆さまに深く感謝申し上げます。academist Prizeは技術や研究の進歩だけでなく、人々が協力し合い、新しいつながりを生み出す場として、今後も続いてまいります。今回登壇した3期生の皆さんのプロジェクトはこちら!どうぞ3期生のこれからの活躍にもご期待ください!