挑戦期間
2023/09/05 - 2025/03/31
最終活動報告
2024/10/10 16:26:38
活動報告
20回
サポーター
11人
経過時間
2023/09/05 10:00:00
私は現在魚の進化について遺伝子レベルの研究しています。生物がどのようにして現在にみる多様性を進化の過程で獲得していったのかが、リサーチクエスチョンです。
普段の研究を進める一方で、異分野交流に興味があり、仲間たちと一緒にワークショップの運営を行っています。多様な分野がどうすればうまく相互に作用し合い、発展して行けるのかについてさまざまな議論しています。
異分野交流によって起こるリフレーミングは自分野の理解を深め、他分野と協同した創発的なアイディアにつながります。
私には、こうした意義のある異分野交流を起こし、日本の科学をもっと面白く改造していきたいという強い思いがあります。
よろしくお願いします!
理想的な異分野交流とはどのような交流でしょうか。
私たちは、異質な他者と自分を探究できる異分野交流だと考えています。そして、リフレーミングに着目することでこれを実現できるという仮説をもっています。リフレーミングとは、物事のとらえ方を変え、思考体系の再構築を行うことです。適切な異分野交流では、自分の専門とは異なる分野の研究を知ることや、自分の研究を他者に伝えることを通じて、他者や自分の専門分野に対するリフレーミングが起こると考えています。リフレーミングを重ねることで分野の越境が起こり、新しい視点からのアイディア創発が期待できます。同時に、交流における対話の基盤となる他者を受容する姿勢を醸成できると考えます。
私たちは「異質な他者とつながる→リフレーミングを起こす→自分自身の専門を深掘りする」という循環が起こるワークショップを実現したいと考えています。ただお互いの研究を紹介し合うだけでなく、他者の関心を互いに自分ごとにひきつけて考えることができる体験設計を目指しています。
まずは文献検討を行い、交流を分析する枠組みを検討します。リフレーミングやコミュニケーション、異文化間交流といった異分野交流に関連しそうなキーワードから文献を調査します。分析の基盤となる枠組みが決定したら、ワークショップの内容やデータ収集方法を計画し、ワークショップ実施後に対話記録を分析するとともに、参加者にインタビューを行い、その内容を分析します。
最も効果的に異分野交流を記述できる方法を検討し分析することで、研究者が異質な他者への理解を深め、自分の興味を探究するために理想的な異分野交流の方法を探ります。
また、AIの活用法として異分野交流の促進のためのツールと交流を分析するためのツールという二種類を考えています。異分野交流の促進のためには、研究者のこだわりや研究に関連するキーワードをAIに学習させ、研究者間の関連を見出すヒントの提案のために用います。
分析するためのツールとしては、AIに研究者の情報を学習させて交流させた結果と、参加者が実際に交流した結果を比較したり、リフレーミングを誘発する質問を投げかけて交流をシミュレーションすることを考えています。
私たちはこれまで、理想とする異分野交流を目指し、異なる専門分野の研究者を集めた座談会形式のワークショップを実施してきました。参加者には事前準備として、独自に開発したWebツールに各々の研究に対する根源的な問いを記入してもらいます。そして、自分の専門分野の視点から他の人の問いに対する仮説を立てます。ワークショップでは、その内容をもとにお互いの専門分野を尊重しながら対話します。対話後、ワークショップのアウトプットの一つの形式として、リフレーミングの感動を短歌で表現し、さらに連歌を繋げていくことで分野を越えて混じり合った作品を作ります。また、Webツールは分野の繋がりだけでなく、探究テーマと己の関係を考える内省体験にも焦点を当てています。
このように、私たちは実際の交流の場で培った経験と、専門分野の異なるメンバーによる議論から異分野交流のフローを作成してきました。そこで、参加者が交流を体験する中で何が起こっているかを今一度研究としてとらえなおそうと考えました。異分野交流のどのフェーズにで生成AIが異分野交流に役立ち得るかを提示し、探究行為を行う人々の営みをより豊かにします。
開かれた学術業界を実現するというacademistの理念と合致していることと、研究資金の獲得という2点の理由から挑戦しました。開かれた学術業界の実現には、研究者がそれぞれ学問のあり方を探究するだけでなく、多様な背景を持つ人が協力しあうことが重要です。研究者同士のつながりを探究しようとする本研究が、academistを通じて研究に関心を寄せるさまざまな人々とつながることで、研究がより発展すると考えました。また、ワークショップを運営しているメンバーには各自専門分野として取り組んでいる研究があり、それらの研究費からは本研究に出資ができません。そこで、研究資金を確保するために挑戦しました。
この企画は待井長敏、石坂晴奈、阿部祐大の3人で進めています。
待井君は私の研究室の学生として、進化生物学を専門とする研究に熱心に取り組んでいます。一方、自身の専門にとどまらないこうした様々な活動も積極的に取り組んでおり、私としても温かい気持ちで見守っています。
今回彼が行う異分野交流のワークショップを通じた活動が彼の研究のアイディアの源泉となり、研究のオリジナリティを高めてくれることを願っています。研究との両立は大変なところも多いと思いますが、頑張ってください。
待井君はじめ各メンバーとは、夜中まで彼らの目指す異分野交流のあり方について語り合ったことを今でも覚えています。VUCA社会において複雑に絡み合った社会課題を解決するためには、専門性にとらわない分野を越えた研究が重要ですが、専門の違う、いわば言語が違う研究者がどのようにしたら協力できるかの方法論についてはこれまで議論されてきませんでした。短歌というユニークな切り口や、学生の熱い想いで異分野交流研究を切り拓いてくれると確信しています。
時期 | 計画 |
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2023 9月〜12月 | 文献調査・研究者への訪問調査 |
2024 1月〜4月 | ワークショップ開催に向けた準備 |
2023 〜6月 | ワークショップ開催・分析 |