academistのクラウドファンディングプロジェクト「海底に突き刺さった潜水艦は伊58か?」の支援者向けプロジェクト報告会が、10月10日に東京で開催されました。報告会では、8月22日から25日にかけて行われた遠隔操縦式の無人潜水機(ROV:Remotely Operated Vehicle)を使った海底調査の結果について、ラ・プロンジェ深海工学会 浦環博士が詳細に解説しました。

1946年に長崎県・五島列島沖合水深200mに海没処分された旧日本海軍の潜水艦24隻は、日本テレビにより2015年に発見されています。そのうち「伊402」のみが特定されていましたが、ほかの潜水艦についてはどれがどの潜水艦であるか明らかになっていませんでした。潜水艦24隻が沈む東シナ海は、流れがあり、濁っているため、海底の調査は非常に難しいのです。

浦博士らの民間調査グループ ラ・プロンジェ深海工学会は、「伊58」「呂50」の特定に向けたプロジェクトの第一段階として、2017年5月19日〜21日に、曳航式のサイドスキャンソナーを用いた調査を行いました。この結果、日本テレビのデータには無かった潜水艦が存在しており、そしてその潜水艦は、海底に垂直に突き刺さる形で沈んでいたことがわかりました。

浦博士は、この海底に突き刺さった潜水艦をはじめ、海底に眠っている潜水艦24隻を特定するための資金の一部をacademistにて募集し、見事目標金額500万円を達成。8月22より行われた調査では、ROVを用いて詳細な状態を写真・動画撮影することで、各潜水艦の特定を試みました。

この結果、海底に垂直に突き刺さった潜水艦No.25は「伊58」ではなく「伊47」であることが明らかになりました。「伊58」は、船尾を上にして約60度の傾斜で海底に立っているNo.24、「呂50」はNo.19でした。

浦博士によると、潜水艦には漁網が絡んでおり詳細な形が判断しづらく、特に「伊53」と「伊58」の区別が非常に困難だったそうです。「調査時点ではNo.1が「伊58」だと思っていたが、その後の詳細な解析により、9月7日に行われた記者会見の3日前に特定に至った」(浦博士)とのことでした。

8月22日〜25日のROV調査の様子、および9月7日の記者会見の様子は下記ニコニコ生放送のサイトにてご覧いただけます。

みんなで特定しよう!旧日本海軍「伊58」潜水艦 水中ロボによる海底探査を生中継

潜水艦「伊58」特定プロジェクト 調査報告会見を生中継

今後は、今回のデータを生かして、VR等を用いたバーチャルメモリアルを作っていくことが期待されています。浦博士は講演の最後に、「海中技術者として海に落ちたものは必ず探し出したい。また、日本は海洋国家として、サルベージ技術を向上させていくことが大切。深海は自分のものであると思えるように今後も海中技術を利用したさまざまなプロジェクトを進めていきたい」と語っていました。

12月3日には、世界三大記念館「三笠」にて一般向けに講演会が行われる予定です。ご興味のある方はぜひご参加ください!

 

この記事を書いた人

周藤 瞳美
周藤 瞳美
フリーランスライター/編集者。お茶の水女子大学大学院博士前期課程修了。修士(理学)。出版社でIT関連の書籍編集に携わった後、Webニュース媒体の編集記者として取材・執筆・編集業務に従事。2017年に独立。現在は、テクノロジー、ビジネス分野を中心に取材・執筆活動を行う。アカデミストでは、academist/academist Journalの運営や広報業務等をサポート。学生時代の専門は、計算化学、量子化学。 https://www.suto-hitomi.com/