SSF

生物はなぜ進化し、我々人間のような姿になったのかーー約5億万年前のカンブリア爆発直前〜カンブリア紀初期の地層から発見されるSmall Shelly Fossils、通称SSFと呼ばれる化石たちを調べることでこの謎を解き明かそうとしている東京工業大学地球生命研究所(ELSI)の研究員 佐藤友彦さんによるトークライブ「生物進化の起源にせまる!」が、11月3日に開催されました。

academistのプロジェクトページでもおなじみの付けヒゲをつけて、約40人の参加者の前に登場した佐藤さん。「なぜ生物は進化してきたのか、知っている人はいますか? わかる人がいたら僕にこっそり教えてください」と会場の雰囲気を和ませてから、とてもわかりやすく自身の研究について紹介してくださいました。

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東京工業大学地球生命研究所(ELSI)の研究員 佐藤友彦さん

カンブリア紀は、約46億年という長い地球の歴史のなかで最も急激に生物が進化し、現在生きている生物のすべての先祖が出揃った時代であるといわれています。現在はさまざまな研究者が、「三葉虫」や「アノマロカリス」といった当時の生物の化石を分析し、カンブリア爆発の謎の解明に努めていますが、佐藤さんは、その時代のどの生物よりも先に急激な多様化を遂げた「SSF」という化石のグループに着目しています。SSFが、どこでどのように進化したのか解明することで、謎に包まれたカンブリア爆発の「始まり」について明らかにしたいというのが佐藤さんの研究のモチベーションなのです。

 

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「SSF」は、その時代のどの生物よりも先に急激な多様化を遂げている

 

佐藤さんは中国の雲南省でのフィールドワークを中心に、SSFの化石がたくさん発掘されるという「リン酸塩岩」から構成される地層について調査しています。フィールドワークで岩石サンプルを採取し、研究室に持ち帰って酸で溶かしてSSF化石を抽出したり、切り刻んで岩石薄片にして堆積構造を調べたり、粉末にして化学分析を行い、どのような環境でSSFの進化が起きたのかを考察していくそうです。

また佐藤さんはSSFだけでなく、西アフリカ・ガボンにある21億年前の地層から発見された大型の化石についても研究を進めています。この大型化石が発見されるまでは、カンブリア大爆発が始まる6億年ほど前のエディアカラ紀に多細胞生物が出現したと考えられており、それ以前の時代には単細胞生物しか存在していないとされていたそうです。しかし、大きいもので体長十数センチほどあるガボンの大型化石は、それより遥か昔に多細胞生物がいた可能性を示すものになります。21億年前に一体何があったのか、生き物が大型化する要因は何なのか、佐藤さんはこの謎を解明しようとしています。

佐藤さんの研究に関する詳しい話は後日、インタビュー記事としてacademist Journalでお届けしますのでお楽しみに!

トークライブ終了時には多くの参加者から質問やコメントが寄せられていましたが、私のような古生物の素人に対しても、言葉を選びながら誤解のないよう丁寧に解説してくださる姿がとても印象的でした。また佐藤さんの研究は、生物学、化学、地質学などの幅広い分野の知識が求められるものだと思います。これらの視点から「生命進化の謎を解き明かす」という大きなビジョンに挑んでやるぞ、という気概がひしひしと伝わってくるトークライブでした。

 

この記事を書いた人

周藤 瞳美
周藤 瞳美
フリーランスライター/編集者。お茶の水女子大学大学院博士前期課程修了。修士(理学)。出版社でIT関連の書籍編集に携わった後、Webニュース媒体の編集記者として取材・執筆・編集業務に従事。2017年に独立。現在は、テクノロジー、ビジネス分野を中心に取材・執筆活動を行う。アカデミストでは、academist/academist Journalの運営や広報業務等をサポート。学生時代の専門は、計算化学、量子化学。 https://www.suto-hitomi.com/