アカデミストは2019年10月5日(土)、リアルクラウドファンディングイベント「academist PRIZE vol.4」を東京・大手町ビル6FのInspired.Labにて開催しました。イベントには11名の研究者が登壇し、約30名の一般参加者が集まりました。

academist PRIZEは、チャレンジャーである博士後期課程の大学院生や若手研究者がそれぞれの研究の魅力をピッチおよびポスター形式で発信し、それに共感した聴講者が研究者に直接その場で”研究費”を支援するという、現実の空間でクラウドファンディングを体験できるイベントです。

今回のテーマは「研究は未来を創る、創るを応援できる」。研究者は、一般参加者であるサポーターの皆様からの得票数 × 500円分のAmazonギフト券を獲得することができます。さらに今回は、academist PRIZE初の試みとして、協賛していただいた企業様による特別賞をご用意しました。聴衆から一番共感を得られた研究者、そして企業特別賞を手にした研究者は誰だったのでしょうか?

難しいテーマを簡潔に説明できるか? 1分ピッチ大会!

まずは1分ピッチで、各研究者が研究の概要について発表しました。後で行われるポスター発表にサポーターを呼び込むため、短い時間でいかに聴衆の心に刺さる説明をするかが重要です。ここでは、1分ピッチでのプレゼンテーションをもとに各研究者のテーマについて簡単にご紹介いたします。

■ 梅谷凌平さん「協力の進化メカニズム」
「みなさん、人間はライオンに勝てると思いますか?」という質問から入ったプレゼン。梅谷さんは「勝てると断言できます。なぜなら人間は『協力』できるから」と語り、なぜどのようにして、人間は「協力」を進化させてきたのかという自身の研究テーマについて紹介しました。梅谷さんはacademistの月額課金制クラウドファンディングに挑戦中ですので、詳しい研究内容について知りたい方はプロジェクトページをぜひご覧ください。

■ 岡西政典さん「深海生物キヌガサモヅルの新種を発見する」
academistの第一弾チャレンジャー岡西さん。深海生物「テヅルモヅル」という深海生物の研究者です。現在、米国発のクラウドファンディングサイト「experiment」にて第二弾のクラウドファンディングに挑戦しています。第一弾のクラウドファンディングの資金で新種を発見し分類を進めた「キヌガサモヅル」の研究を世界展開し、さらなる分類を進めます。

■ 桑江博之さん「ぐにゃぐにゃ曲がる透明な電極をつくる!」
スマートフォンやPCなどの電子機器が身近なものになって久しいですが、AI技術が発展していくことで、電子機器に用いられるディスプレイはもっと私たちの身近にあるものになると考えている桑江さん。そのときにはぐにゃぐにゃ曲がるディスプレイが求められるようになるといいます。現在、柔軟性の高い透明電極の開発を進めています。

■ 垣内健太さん「呼吸できる水で肺を洗う!」
水に酸素を入れることで、水の中でも呼吸ができるようになるのでは? また、その水を使って肺を洗浄することができれば、たばこの煙などで汚染された肺をきれいにできるのでは? 垣内さんは、そうした疑問をもとに「呼吸できる水」の効果を探るための研究を進めています。

■ 立原義宏さん「薬物送達システム」
立原さんは、さまざまな特性をもつ環状化合物の薬を体内に適切に届けるための研究に取り組んでいます。環状化合物は、薬理活性が強い一方、副作用が強かったり水に溶けにくかったりというデメリットをもっています。環状化合物を特定の場所に届けるため、「ナノマシン」を活用し、これまで日の目を見ることのなかった環状化合物に新たな活躍の場を与えようとしています。

■ 小松和真さん「電子の「宇宙」を見る??」
「アト秒=10-18秒」と聞いてピンとくる方はあまり多くないかもしれません。電子が原子核の周りを1周するのに掛かる時間は152アト秒であるといわれています。小松さんはこうしたアト秒スケールの減少に着目し、どうやって原子の動きを観察するか? そのときに何が見えるか?というテーマで研究を進めています。

■ ホンテーフンさん「ポリメチルトリプトファンを用いた免疫治療」
本庶佑博士のノーベル賞受賞などによって注目を浴びているがんの「免疫治療」。ホンさんは、免疫治療に活用できる薬物伝達システムの確立に向けて、生体内の「関門」を突破できる薬の開発を進めています。

■ 波多野豊晃さん「電気の力を使って”体に良く効く優しい薬の材料”を探し出せ!」
良く効く薬=体に良く吸収される薬であるといえます。しかし、副作用があったり、毒性があったりして、安全に吸収できるかどうかというところまでを判断することは難しいのが現状です。波多野さんは、電気による精密計測システムを使って安全に吸収できる薬のみを判別できるようにすることで創薬に役立てようと研究に取り組んでいます。

■ 宮崎拓也さん「妊婦さんの化学療法を実現するナノカプセルの開発」
妊娠さんは、薬の使用に注意をしなければいけません。胎児や母体への影響が少ない薬もありますが、なかには悪い影響を及ぼしてしまう薬もあります。宮崎さんは、胎盤を薬が通過しないようにすることで、お母さんにだけ効くような革新的な薬をつくり、妊婦さんが安心して薬を飲めるような世界の実現を目指しています。宮崎さんは過去にacademistでクラウドファンデイングにもチャレンジしています。こちらも合わせてチェックしてみてください。

■ 向井香瑛さん「運動科学×マッチング~新たな相性研究手法の提案~」
陸上経験のある向井さんは、あるとき、一緒に走っていると気持ちよく感じる”相性の良い”選手がいることに気づきました。そこで、現在では2人一緒に運動するときの相性を定量化するために、社会心理学+運動科学のアプローチで研究に取り組んでいます。

■ 多喜川真人さん「脂質ナノ粒子で細胞に薬を運ぶ」
多喜川さんは、リポソームという脂質のナノ粒子を使って、細胞に薬を届ける研究を行っています。リポソームのアミノ酸基や脂質の長さを少しずつ変えていくことで、リポソームの性質は大きく変わります。この性質を活かして、多喜川さんは効率的に薬を細胞に届ける方法の検討に取り組んでいます。

お酒を飲みながら和やかな雰囲気でのポスターセッション

ポスターセッションでは、A4紙4枚に研究内容をまとめてプレゼンしていただきました。異分野の研究者や一般参加者からも鋭い質問が出るなど、非常に盛り上がりました。

今回は、academist PRIZE特製のクラフトビールもご用意。円滑で和やかな議論を手助けしてくれる”潤滑油”です

academist PRIZE初の企業賞は誰の手に……?

1分ピッチとポスターセッションでの発表を踏まえて、サポーターは支援したい研究者を1名選んで投票しました。そして、この結果をもとに「オーディエンス賞」「企業特別賞」が決まりました。

渋谷スクランブルスクエア株式会社様の企業特別賞「SHIBUYA QWS賞」を受賞したのは、「運動科学×マッチング~新たな相性研究手法の提案~」の向井さんです。向井さんには、2019年11月にオープンする会員制施設「SHIBUYA QWS」の活動権利3か月分が贈呈されました。SHIBUYA QWSは、沿線5大学やさまざまなパートナーと共に提供する「問い」をテーマにした独自のプログラムが特長。新しいイノベーション創出の場を目指しています。

株式会社ビットマイスター様の企業特別賞「ビットマイスター賞」は「妊婦さんの化学療法を実現するナノカプセルの開発」の宮崎さんが受賞しました。宮崎さんには、賞金20万円が贈呈されました。ビットマイスター様は、学術用ソフトウェア開発とアウトリーチサポートサービスを提供する研究開発サービス会社です。企業マッチング型クラウドファンディングにもご協力いただいており、現在はマッチングファンド・プログラムに挑戦する研究者の皆様を募集しています。ご興味のある方はぜひチェックしてみてください。

そして、イベントに参加したサポーターから最も支持を集めたオーディエンス賞は、SHIBUYA QWS賞の受賞者でもある向井さんに贈られました。自身の研究を発展させていくことで、多様な人たちが活躍できる社会をつくりたいというビジョンは、研究者の活躍の場を増やしたいと考えているアカデミストとしても非常に共感できるものでした。

研究者の専門分野もさまざまですが、参加者の皆様のバックグラウンドも多様であることが特長のacademist PRIZE。毎回、新しい出会いやつながりが生まれています。アカデミストでは年4回、academist PRIZEをはじめとするさまざまなイベントを開催しています。次回も皆様に楽しんでいただける企画を提供いたしますので、お楽しみにお待ちください。

また、academist Fanclubに入会していただくと、年4回のアカデミスト主催のイベントに無料で優先的にご参加いただけます。ご興味のあるかたはぜひプロジェクトページをご覧ください

この記事を書いた人

周藤 瞳美
周藤 瞳美
academist Journal 編集長
お茶の水女子大学大学院博士前期課程修了。修士(理学)。出版社でIT関連の書籍編集に携わった後、Webニュース媒体の編集記者として取材・執筆・編集業務に従事。2017年に独立。現在は、科学・技術、IT、ビジネス分野を中心に取材・執筆活動を行う。アカデミストでは、academist Journalの編集長としてWebメディアの運営に携わっているほか、クラウドファンディングのプロジェクトページなどコンテンツ制作全般をサポート。学生時代の専門は、計算化学、量子化学。 http://www.suto-hitomi.com/