2016年4月10日(日)13時〜18時、慶應義塾大学日吉キャンパスにて「第1回クマムシ学研究会」が開催されました。昨年オンラインで「クマムシ博士のクマムシ研究所」を立ち上げたクマムシ博士・堀川大樹氏がモデレーターを務める誰でも参加できる研究会です。通常、学会に参加するには年会費や参加費等のハードルがあるのですが、今回は一般公開ということもあり、ここぞとばかりに参加してきました。

クマムツ
当日の案内板。ク、クマムツ…?

狙って作られた(?)案内板に和みながら、いざ会場へ。200名近く入る大教室に、全国のクマムシ研究者やクマムシファンの方々が集結していました。

いまから10年前、クマムシ研究会が東京大学で開催されたそうなのですが、継続的な開催にはつながらなかったようです。そこで今回、「もう一度、クマムシ研究会を開催したい!」という思いを形にするために、慶応義塾大学先端生命科学研究所の荒川和晴氏、慶応義塾大学医学部の鈴木忠氏、慶応義塾大学先端生命科学研究所の堀川大樹氏の3名により、本研究会が立ち上げられました。現在クマムシを研究している人たちがほぼ全員集結しているため、「クマムシの現在を知るなら、ここしかない!」濃密な場所であると言えます。

クマムシ博士
開会の挨拶をするクマムシ博士

クマムシは、体長1mm以下で、8本の脚を持ち、土壌や苔、海などに生息しています。周囲が乾燥してくると体を縮め、ほとんど代謝を行わない状態になります。この状態のクマムシは、100℃ほどの高温や、ほぼ絶対零度(約-273℃)の低温、人類の致死量の1000倍のX線に耐えることができて、再び水を与えると動き回ることができるようです。

当日は、そんなクマムシを愛してやまない現役研究者と大学院生、高校生まで合計14名の研究者によるトークが5時間に渡って繰り広げられました。

トピックとしては、

  • 南極のクマムシの生態
  • 凍っても死なないクマムシの謎
  • クマムシの窒息仮死
  • ヨコヅナクマムシのアルコール耐性
  • クマムシ一匹からのマルチオミクス解析

など、興味をそそられる研究が多くありました。発表内容は極めてガチではあるのですが、演者の方々が初学者向けに発表を工夫していただけていたこともあり、大変刺激的な時間を過ごすことができました。

グッズ販売
販売されていたクマムシさんグッズ

通常のイベントでは、参加者間の付き合いが当日限定になることがほとんどで、近い興味を持つ人たちの関係性を保ちにくい傾向にあります。ただ、今回はクマムシ学研究会のオンライン版とも言える「クマムシ研究所」があるため、一度できた関係性を時間と空間を超えて深めていくことが可能です。

イベントのような短期間での取り込みに加えて、オンラインサロン等を活用した中長期的な取り組みを加えることで、より魅力的なコミュニティができるのだろうと感じました。

第2回クマムシ学研究会、今から楽しみにしています!

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特別ゲストの巨大クマムシさん

この記事を書いた人

柴藤 亮介
柴藤 亮介
アカデミスト株式会社代表取締役。2013年3月に首都大学東京博士後期課程を単位取得退学。研究アイデアや魅力を共有することで、資金や人材、情報を集め、研究が発展する世界観を実現するために、2014年4月に日本初の学術系クラウドファンディングサイト「academist」をリリースした。大学院時代は、原子核理論研究室に在籍して、極低温原子気体を用いた量子多体問題の研究に取り組んだ。