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この春、名古屋で盛り上がっているアレを皆さんはご存知だろうか?! テレビのCMでも、街中のポスターでも、いたるところで目にするそいつは……そう、”ティラノのうんち”である。なんと今、名古屋市科学館では、世界最大のティラノサウルスのうんち化石を展示した「恐竜・化石研究所」という特別展が開催されており、連日大盛況なんだそうだ。

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これは気になる……。特に右下

うんちの化石の科学といえば、1月の泉賢太郎氏のコラムも記憶に新しいところ。これは……2016年は、うんち化石がアツいかも!!

そこでさっそく筆者の白瀧が、名古屋市科学館「恐竜・化石研究所」会場へと赴き、この特別展の企画者である西本昌司学芸員にお話をきいてきました。

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西本さん、よろしくお願いします!

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shirataki

白瀧:うんちの化石が展示されているらしい、ということで気になりまして……興味が湧いて、来てしまいました。

 

nishimoto

西本さん(以下、敬称略):気になったでしょ? 狙い通りです(笑)

 

 

shirataki

白瀧:ブツはどちらにあるのでしょうか。

 

 

nishimoto

西本:せっかちだなあ。じゃあ、会場の中へどうぞ。

 

 

shirataki

白瀧:あっ、ティラノサウルス発見です!

 

 

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写真左側がティラノサウルス全身骨格。右側はテルミノナリス骨格など

 

shirataki

白瀧:やっぱり迫力がありますね。さて、うんち化石は…? ティラノサウルス骨格の下には、特になにも無さそうですが……。

 

 

nishimoto

西本:下ではないですが、ティラノサウルスのしっぽの近くに展示してありますよ。

 

 

shirataki

白瀧:しっぽの近く? ま、まさか、通り道の奥のほうに見えるショーケースは、もしや。

 

 

nishimoto

西本:そう、そのショーケースの中にあるのが、ティラノサウルスの糞化石です。

 

 

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これが”ティラノのうんち”!!

 

shirataki

白瀧:うひゃー。こいつが世界最大のティラノサウルスのうんち化石ですか。

 

 

nishimoto

西本:実は、世界最大というか、より正確には、世界で唯一「ティラノサウルスの糞であると認められた化石」なんです。

 

 

shirataki

白瀧:えっ、どういうことですか。

 

 

nishimoto西本:ほかのうんち化石は、ティラノサウルスの糞かどうかまでは決めることができていないんです。肉食恐竜の糞化石である、ということまではわかっても、その恐竜がティラノサウルスかどうかはわからない。でも、この化石だけは、きちんと論文でティラノサウルスの糞の化石だと発表されているんです。

 

 

shirataki

白瀧:なぜティラノサウルスの糞だとわかったのですか。

 

 

nishimoto西本:ポイントは3つでした。まず、サイズが大きいこと。小さな恐竜が大きな糞をするとは考えにくいです。次に、糞化石に骨片が入っていたこと。肉食動物の糞だとわかりました。そして最後に、同じ地層から見つかる大型肉食動物が、ティラノサウルスのみだったということ。これらの理由から、ティラノサウルスの糞だと断定されたんです。

 

 

shirataki

白瀧:そんな風に、ティラノサウルスの糞だとはっきり突き止められたのは、今ここにあるうんち化石だけなんですね。研究者の熱意を感じます……!

 

 

nishimoto西本:会場にはほかにも、いろいろなうんち化石を集結させてみました。うんちの化石を調べれば、その時代の生き物が何を食べていたのかもわかるし、どんな石になったかを調べることで、石化した際の環境、つまり過去の地球の姿を知ることもできます。

 

 

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「石を見ることは、過去の地球を知ることです」

 

nishimoto西本:実は、私が今とても知りたいのが、「生物はどうやって石になっていくのか」ということです。石になっていくプロセスに、ぜひ皆さんにも興味をもってもらいたい。だから、「恐竜・化石研究所」では、こんなコーナーを作ってみました。

 

 

shirataki

白瀧:えっ、何ですか、ここ?! 凄い!!

 

 

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“化石の中の結晶”のコーナー。本特別展のとっておき!

 

shirataki

白瀧:キラキラしていて綺麗ですね……!こんなコーナー、初めて見ました!

 

 

nishimoto西本:化石が長い間その形をとどめたままでいられるのは、固い石になるからです。生き物の体が、石に置き換わっていく。体の隙間が、鉱物で埋まっていく。”化石の中の結晶”や”結晶になった化石”を見て、過去の地球の姿や、地球で起こってきた出来事に……”地球の営み”に興味を持ってもらえたら、と思いました。

 

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オパール化した二枚貝。虹色なのがわかりますか?

 

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黄鉄鉱化したアンモナイト。金色に輝いています

 

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魚の中で、方解石の結晶が成長

 

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殻の隙間に鉱物結晶ができたアンモナイト。西本さんのイチオシ化石

 

shirataki

白瀧:生き物が石になるプロセス……本当に不思議ですね。私もとても知りたいです。

 

 

nishimoto

西本:そんな風に、たくさんの人に思ってもらえたら嬉しいです。過去の生き物の姿だけではなく、地球の営みの全体を見て、感じてほしいという思いで、このちょっと変わった特別展を企画しました。是非、多くの方に楽しんでいただけたらなと思います。

 

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オリジナルガイドブックも会場で発売中

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一風変わった、見応えたっぷりの特別展「恐竜・化石研究所」。ご紹介できなかった展示も、ワクワクするものばかりでした。こんなの有り?!という斬新な展示も…来場すれば、時代の目撃者になれるかも?!この春の休日、名古屋市科学館で地球の歴史に思いを馳せてみるのはいかがでしょうか。

 

恐竜・化石研究所 公式ウェブサイトはこちら
※2016年6月12日まで開催中

この記事を書いた人

白瀧千夏子
白瀧千夏子
生体分子に魅せられて、信州大学理学部生物科学科で生物学を学んだ後、名古屋大学大学院理学研究科物質理学専攻にてタンパク質化学の研究で博士(理学)の学位を取得。趣味は科学系の博物館巡りと美味しいケーキ屋さん探し。