こんにちは、科学系博物館めぐりが趣味の白瀧です。突然ですが、皆さんは、お酒はお好きでいらっしゃいますか。私は大好きです。そして、実はacademist Journal編集長の周藤氏も酒好きだということが先日発覚いたしました。折しも世はバレンタインデーのムード一色。これは、想いを伝えるしかない。

 

shira

白瀧「あの……良かったら、上野の国立科学博物館で今やっている『ワイン展』でデートしませんか?」

 

 

suto

 

周藤「いいですね! 行きましょう!」

 

 

……と、トントン拍子に話が進み、2月14日、ふたりでワイン展に行ってきました。

 

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ワイン展会場に到着。ドキドキしますね!

 

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展示はとても大人っぽい雰囲気。ワインが飲みたくなります

 

shira

 

白瀧「会場は大きく3つに分かれている……みたいですね?」

 

 

suto周藤「そうですね。ワインの作り方を学べるZone1、ワインの世界規模での歴史を知ることができるZone2、そしてより深くワインを楽しむことができるようになるZone3、という感じのようですね。」

 

 

shira

 

白瀧「Zone1に足を踏み入れ……っと。わあ、ブドウがたくさん!」

 

 

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ブドウの紹介から入るZone1。いろんな種類のブドウがあるもんだ

 

shira

 

白瀧「美味しそうですね〜」

 

 

suto

 

周藤「……まだお酒になってないですよ。」

 

 

shira

白瀧「うう、発酵させないとですよね……あっ、発酵のコーナー発見しました! 微生物が展示されてますよ!」

 

 

赤ワインは、まずブドウの粒をつぶし、発酵させた後にしっかりとブドウを搾って種や皮などを取り除き、熟成させることで作られるのだそうです。そして、この「発酵」というプロセスを行っているのが、酵母とよばれる微生物。もともとブドウには複数種の酵母がおり、この中の一種類であるSaccharomyces cerevisiae (いわゆるイースト菌)にアルコールを作らせてブドウ果汁をお酒にしていく、ということがわかりやすく展示されています。

 

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ブドウにもともといる酵母

 

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アルコール発酵。酵母がグルコースからエタノールを作ります

 

shira

白瀧「私、Saccharomyces cerevisiaeのフォルムが凄く好きなんです……丸くてコロンとしていて」

 

 

suto

 

周藤「あ、顕微鏡で実際に観察できるみたいですね。どれどれ……」

 

 

 

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顕微鏡で酵母(Saccharomyces cerevisiae)を真剣に観察する周藤氏

 

shira

 

白瀧「丸かったですか?」

 

 

suto

 

周藤「丸かったです。」

 

 

科学の基本はやっぱり観察ですよね。実際の形は、ぜひ会場で直接確かめてみてください……!

ちなみに、発酵の後のプロセスである熟成についても、こんな展示が。

 

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熟成していないワイン(手前)と熟成したワイン(奥)の色の比較。左は赤ワイン、右は白ワイン

なんかこう、実験室に置いてある試薬が空気酸化されて変色していく様を思い出してしまいますね……私だけでしょうか……。ワインの熟成の正体も、空気による酸化ですものね。うん。美味しくなってほしいです。

さて、Zone1、Zone2を順調に見学していった我々。Zone3で予想もしなかった展示を見つけました。Zone3では、バルト海の沈没船から2010年に引き揚げられたという約170年前の非常に貴重な最古級シャンパーニュ(日本初公開)が展示されていたのですが、なんと、そのすぐ側に米国アカデミー紀要(PNAS)に掲載された論文が展示されているのです! ビックリ!

紹介されていた論文は、

Philippe Jeandet et al. (2015) Chemical messages in 170-year-old champagne bottles from the Baltic Sea: Revealing tastes from the past, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 112, 5893-5898

です。この最古級シャンパーニュの成分分析の結果を報告したもののようですね。ロマンチックなタイトルにも注目です。会場には1ページ目のみしか展示されていなかったため、後日ゆっくり見てみようっと。オープンアクセスの論文なので、こちらから誰でもダウンロードできますよ。

Zone3が終わったあとは、お土産コーナーでした。白瀧はワイン展の図録を、そして周藤氏は美味しそうなお土産用ワインをしっかりゲットして帰路についたのでした。

ワイン展は2016年2月21日まで、つまり今度の日曜日までです。気になるな、行こうかな、と思っている方……この週末がラストチャンスです!

科学系の博物館だし、文系だと楽しめないのかな……なんていう心配もご無用。Zone2には、ワインに関する古代の壁画など、世界史や考古学が好きな人には垂涎モノなのでは?! と思われる展示が盛りだくさんでした。

特別展であるワイン展だけではなく、常設展も非常に見応えがある国立科学博物館。
両方合わせると、1日居ても見きれないほどです。老若男女、たくさんの方が来館されていますよ。まだ行ったことがないんです、一人でも大丈夫かな……という方、一人でもまったく問題ありません!ぜひとも気楽に、国立科学博物館に遊びに行ってみてくださいね。

この記事を書いた人

白瀧千夏子
白瀧千夏子
生体分子に魅せられて、信州大学理学部生物科学科で生物学を学んだ後、名古屋大学大学院理学研究科物質理学専攻にてタンパク質化学の研究で博士(理学)の学位を取得。趣味は科学系の博物館巡りと美味しいケーキ屋さん探し。