本来ならば、3月は学会シーズンの真っ只中。しかし今年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、さまざまな学会が開催中止に追い込まれてしまいました。

そこでアカデミストは3月14日(土)、ここ最近注目を集めているWeb会議サービス「Zoom」を活用し、お蔵入りになってしまう可能性のある発表内容を集めて異分野融合型のオンライン学会を開催することとしました。その名も「アカデミスト学会」

今回のアカデミスト学会で発表していただく内容の分野やテーマは自由。登壇者には、学会やセミナーで使う予定だった発表資料を活用してオンライン上で発表していただきました。当日は、超新星爆発からミトコンドリア、ムラブリ語まで、実に多様な分野から16名の研究者が集結。約200名の聴講者が彼らの発表に耳を傾けました。

発表内容と登壇者(発表順)

セッション1:宇宙・光・空間
1. 「重力崩壊型超新星の爆発タイムスケールについて、元素合成からの制約」澤田 涼(京都大学大学院 理学研究科 宇宙物理学教室 博士後期課程)
2. 「スネルの法則を超えた光の異常な振る舞い」大上 能悟(Imperial College London 博士課程)
3. 「空中超音波の制御による遠隔冷覚提示」中島 允(東京大学大学院 新領域創成科学研究科 複雑理工学専攻博士後期課程)

セッション2:”生命”に迫る
4. 「タンパク質と導電性材料をつなげる遺伝子暗号拡張技術」尾花 満衣子(カリフォルニア工科大学化学科PhD課程)
5. 「ミトコンドリア内エナジェティクスの電気化学反応速度論的解析」武安 光太郎(筑波大学 助教)
6. 「水族館で新種発見!?―チュラウミカワリギンチャク Synactinernus churaumi」泉 貴人(東京大学大学院・国立科学博物館)
7. 「地球と火星の岩石内生命から制約する生命の起源」鈴木 庸平(東京大学大学院理学系研究科准教授)
8. 「新型コロナをLとSの2株に分けるのは乱暴すぎなイカᔦꙭᔨ」緒方 法親(株式会社日本バイオデータ CEO and Founder)

セッション3:研究と社会実装
9.「プチイノベーション!『聴診アップ!™』」 石北 直之(国立病院機構新潟病院臨床研究部医療機器イノベーション研究室 室長)
10. 「産学連携プロジェクトを通じた企業側担当者の学習と組織への影響」森田 泰暢(福岡大学商学部経営学科准教授)
11. 「インシデントリテラシ向上のための情報セキュリティゲームと導入教育の融合」
廣瀬 司(放送大学)
12.「外貨建て保険の国際金融・学部生用講義内容への組み込み」小川 健(専修大学経済学部准教授)

セッション4:人と人の関係
13. 「資源の多寡と協力行動:囚人のジレンマを用いた分析」梅谷 凌平(立正大学大学院経営学研究科修士課程)
14.「ムラブリ語の方言分岐:忌避による語彙変化」伊藤 雄馬(富山国際大学 講師)
15. 「『遊び』から捉える言語・音楽・ダンスの共進化ーーバリ島「ろうの村」を事例に」土田 まどか(東京大学文化人類学コース博士課程)
16. 「演技音声にあらわれるジェンダーの表現」丸島 歩(大阪経済法科大学特別専任准教授)

聴講者が選ぶ「オーディエンス賞」は誰の手に?

先にご紹介したように、アカデミスト学会の特徴は、オンラインであることと異分野融合型であること。そしてもうひとつは、一般の聴講者がQ&Aツール「Slido」を通して研究者に質問できたり、おもしろいと思った投票に投票できたりすることです。当日は聴講者から最も人気を集めた発表に「オーディエンス賞」として賞金10万円を贈呈しました(アカリク様、Co-LABO MAKER様にご協賛いただきました)。

オーディエンス賞は、「重力崩壊型超新星の爆発タイムスケールについて、元素合成からの制約」というテーマで発表していただいた京都大学の澤田涼さん。背景知識から最新の成果までをわかりやすく解説していただいたことで、聴講者の約3割の方が澤田さんに投票するという結果になりました。

また、企業賞として、アカリク様、Beyond Next Ventures様、ヒマラボ様より、それぞれ下記の研究者に賞金が贈呈されました。

アカリク賞:泉 貴人さん
Beyond Next Ventures賞:武安 光太郎さん
ヒマラボ賞:石北 直之さん

おわりに

アカデミストとしては、完全オンラインでのイベント開催は初の試みでした。オンラインでなければ、ここまで分野も居住地も多様な研究者が集結することは不可能だったのではないでしょうか。一般の聴講者もこれだけさまざまな研究に触れられる機会はなかなかないと思います。一方で、専門家同士の白熱したディスカッションが生まれにくかったり、ちょっとした雑談をしたくてもできなかったりなど、双方向型のコミュニケーションがとりづらいというオンラインのデメリットも見えてきました。当日の参加者のみなさんの声はtogetterにまとめていますので、こちらもぜひご覧ください。

新型コロナウイルスの感染拡大は、各業界の人々の働き方やライフスタイルにまで影響を及ぼし始めています。それは、アカデミアに対しても例外ではありません。学会や授業のオンライン実施やリモートワークの導入など、大きな変化が生じています。私たちアカデミストはこれまでに、「開かれた学術業界」という新しいアカデミアの実現に向けてクラウドファンディングサービスやWebメディアの運営など、主にインターネットを活用した取り組みを進めてきました。その一環として今回、アカデミスト学会を開催した形です。新型コロナウイルスの感染拡大は図らずも、新しいアカデミアのあり方を模索するにあたってインターネットの可能性を感じる機会になっているのではないかと感じました。

アカデミストはこれからも、開かれた学術業界の実現に向けてさまざまな取り組みを展開していきます。

この記事を書いた人

周藤 瞳美
周藤 瞳美
academist Journal 編集長
お茶の水女子大学大学院博士前期課程修了。修士(理学)。出版社でIT関連の書籍編集に携わった後、Webニュース媒体の編集記者として取材・執筆・編集業務に従事。2017年に独立。現在は、科学・技術、IT、ビジネス分野を中心に取材・執筆活動を行う。アカデミストでは、academist Journalの編集長としてWebメディアの運営に携わっているほか、クラウドファンディングのプロジェクトページなどコンテンツ制作全般をサポート。学生時代の専門は、計算化学、量子化学。 http://www.suto-hitomi.com/