2017年2月に「ペルー初となる電波望遠鏡を稼働させ、星の成り立ちに迫る!」プロジェクトで目標金額を達成した、ペルー地球物理研究所 ワンカイヨ観測所のイシツカ・ホセ博士によるサイエンスカフェが、2017年5月6日(土)に東京で開催されました。

今回のサイエンスカフェには、イシツカ博士とともに長年研究を行う国立天文台の三好真博士および、国立天文台天文部情報センターの根本しおみ氏が登壇し、二部構成で講演が行われました。約2時間という短い時間ではありましたが、三好博士からふるまわれたペルー・アチャマル村のコーヒーやインカコーラを片手に、活発な意見交換が行われました。今回、その様子を一部お届けいたします。

ペルーに3Dで楽しめるプラネタリウムを展開!

根本しおみ氏による「ペルー・不屈の天文学」

サイエンスカフェではまず、根本しおみ氏が「ペルー・不屈の天文学」というタイトルで、ペルー天文学の発展の歴史について解説しました。

根本氏は、JICA(国際協力機構)のシニア海外ボランティアとして、2011年から3年間、ペルーに滞在しました。彼女の活動は主に、立体視できる天文シミュレーションプラネタリウム「Mitaka  3D」をペルー各地の天文台や博物館に展開することでした。ペルーにはプラネタリウム施設がほとんどありません。そのため天文イベントは非常にめずらしく、「astronomica 2013」という60cm望遠鏡のお披露目イベントの際には、 1000人を超える方が参加し、子どもから大人までプラネタリウムを楽しんだといいます。

“ペルー天文学の父”とよばれる石塚睦博士

「ペルー天文学の父」- 石塚睦 博士

根本氏はつづいて、イシツカ博士の研究の歴史についての解説を行いました。このたび、academistにてクラウドファンディングを行ったイシツカ・ホセ博士の父親である石塚睦(むつみ)博士も天文学者です。石塚博士は1957年、大気の澄んだアンデス山脈で太陽のコロナを観測するため、単身ペルーに渡りました。当初は3年で研究所を立ち上げ、観測を開始するという予定だったといいます。しかし当時、ペルー政府はまったく天文学への理解がなかったため、観測所の建設は遅々として進みませんでした。

石塚博士の孤軍奮闘により太陽コロナ観測所が完成したのは、なんと彼がペルーに渡ってから31年後の1988年のことでした。さらに、観測をはじめてわずか2ヶ月後、望遠鏡はテロリストによって爆破されてしまったのです。しかし彼は、このような状況でも諦めることなく、天体観測活動とペルーに天文学を根付かせる活動に尽力しました。このことから石塚睦博士は、「ペルー天文学の父」とよばれています。

どんな苦難が待ち受けようとも、電波望遠鏡を完成させたい!

ペルーからSkypeで参加するイシツカ・ホセ博士

この父親の背を見て育ったのが、イシツカ・ホセ博士です。サイエンスカフェ第二部では、Skypeにてペルーから参加したイシツカ・ホセ博士によって、研究開発の現状が報告されました。

イシツカ・ホセ博士は2002年に、ペルーの電話会社で不要になったパラポラアンテナを譲り受け、電波望遠鏡として再利用する計画を2002年にスタートさせました。国立天文台などの協力を得て2008年に観測所を開所、そして2011年にはファーストウェーブの受信に成功しました。現在、衛星通信用アンテナから電波望遠鏡への改造は最終段階にあります。24時間観測を行うためのインターフェースが完成すれば、ついに電波望遠鏡を継続的に稼働することができるようになるのです。

しかし、ここで問題が発生しました。昨年12月にペルー地球物理研究所の所長が変わり研究方針が変化したことで、完成まであと一歩まで来たというのに、電波観測所が閉鎖されるかもしれないというのです。現在、事態は流動的で、今後、電波望遠鏡をどのように立ち上げていくのか、また改めて計画を練らないといけないといいます。

イシツカ博士はこのような困難にも屈せず、電波望遠鏡を立ち上げる方針を変えることなくこれからも開発を進めていきたい、と強く決意を述べました。「現在は、電波観測所の存続と電波望遠鏡の立ち上げに理解を得るために、関連する方面にいろいろとお願いしている段階です。今後も暖かく見守ってください」(イシツカ博士)。

電波観測所を立ち上げる意義を語るイシツカ博士

質疑応答では、「通信衛星用アンテナから電波望遠鏡に改造するためには、どのような作業が必要となるのでしょうか」、「ペルー以外にも、通信衛星用アンテナを電波望遠鏡へと改造しようとするプロジェクトはあるのでしょうか」、「電波望遠鏡が取得する画像は、どのようにスキャンされているのでしょうか」など、電波天文学に関する質問が多数あがり、活発に議論が行われました。

どんな困難にもくじけることなく、不屈の精神でペルー天文学を発展させていく石塚親子。電波望遠鏡の立ち上げに奮闘するイシツカ博士の挑戦に引き続きご注目ください!

この記事を書いた人

宮内 諭
宮内 諭
アカデミスト株式会社プロジェクトプランナー。科学雑誌編集者。2011年3月に京都大学大学院薬学研究科博士後期課程中退。大学院時代はゲノム創薬研究室に在籍し、脂肪細胞に発現するタンパク質の機能解析に取り組んだ。