本連載では、academist Journal編集部が注目するacademistの月額支援型クラウドファンディングのチャレンジャーに、プロジェクトや研究の魅力について聞いていきます!

化学反応のメカニズム解明に向け研究に取り組む小林さんは、会社員としての研究所勤務を経て、博士後期課程へ進学しました。現在は単一分子の分子振動を捉えられる装置を構築し、個々の分子でどのように化学反応が起こるのかという究極的な問いに挑んでいます。

クラウドファンディング一問一答

——クラウドファンディングで募った支援金はどのような活動に利用していますか?

数か月分の支援金を貯金してiPadを購入しました。ノートをすべて電子化したり、論文を読んだり、考えごとのメモに使ったり、今は研究活動には欠かせないくらい使い倒しているので、本当に感謝しています。あとは、サポーターの方から「美味しいケーキでも食べて一息つけますように」とコメントをいただいたことがあって、自炊とお弁当と水筒の節約生活の中で、たまに美味しいお菓子を買ってリラックスさせてもらったりしています。

——プロジェクトページの活動報告欄では、いつもどのような内容について書いていますか?

研究の話、課外活動として行っているSNS開発の話、ちょっと話しづらいような博士課程学生のお金の話など、毎月2〜3トピック書いています。研究の面白い部分を発信するのはもちろんですが、日々の生活や考え、へこたれたこと、課題意識についても包み隠さず書いています。このあいだは、大学の入学式でノーベル物理学賞受賞者の益川先生の講演を聴いたときのエピソードも書きました。いろいろな背景の方が支援してくださっているので、科学にまつわることはなるべく平易に解説するように心がけつつ、外側からは見えづらい研究の色々な側面を知ってもらいたいというモチベーションで書いています。

——academistの月額型クラウドファンディングで継続的なサポートを受けることに対して、どのように感じていますか? また、ご自身の研究活動にどのような影響がありましたか?

本当にやってよかった! 直接の知り合いでない人も含めて、さまざまな背景の方々から応援してもらえることは正直驚きで、今は大げさにいうと精神的な支えになっています。博士課程は孤独になりやすいし、努力しても科学の神様はなかなか振り向いてくれないので、自分の研究の価値がわからなくなるときがあります。でも応援してくれている方がいると思うと、博士課程に挑戦していること自体に価値があると思え、それを報告して少しでもいいリターンにしたいという意欲が湧いてきます。また、学生の研究に一定の社会的ニーズがあることを知れたことで、課外活動として行っているアカデミックSNSの開発において、社会と学生をつなぐアイディアも生まれました。今は私の大事な活動のひとつです。

——普段の研究活動のなかであなたがいちばん「楽しい」「テンションが上がる」瞬間はいつですか?

測定したい信号が出たときと、勉強して「わかった」感覚になったときです。私の実験は新しい装置を作ることがメインです。色々な条件を試しては何度も落胆しますが、たまに成功します。そのときは不思議と、「これがほしい信号だ!」とわかり、一気にテンションが上がります。ですが、なぜうまくいったかなど検討事項が一気に降りかかってくるので、冷静でいなければと自分を落ち着かせないといけません。一方、実験結果を説明するために勉強していて、理解できたときは素直にテンションを上げられるので、このときの方が楽しいかもしれません。

——最後に、クラウドファンディングに対する意気込みやサポートを検討している方々へのメッセージをお願いします!

クラウドファンディングは、人と人との新しいかたちの出会いだと感じます。私にとってサポーターの皆さまは一緒に研究をしてくれるチームだと感じますし、サポーターの皆さまにとってもそうだといいなと思いながら研究生活の報告を書いています。やるからにはチームを大きくして、研究の喜びをより多くの人と分かち合いたいです。少しでもご興味がある方は、ぜひチームの一員として一緒に研究を進めてほしいです!

▼小林柚子さんのプロジェクトはこちら▼
単一分子を追える装置で化学反応のメカニズム解明に挑む!