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クラウドファンディングで研究費を調達することに興味はあるけど、自分の研究をうまくアピールできる自信がなかったり、実際の手続きがどうなっているのかわからなかったりして一歩踏み出せない……という研究者の方の声をときどき耳にします。

academistは、獲得した研究費を自由に利用できる、Webをとおして自分の研究の面白さを多くのひとに知ってもらえるなどというメリットがある一方で、一筋縄ではいかないことが多くあるのも事実です。

そこで今回は、実際にacademist第1弾のプロジェクト「深海生物テヅルモヅルの分類学的研究」に挑戦し、約60万円の研究費を獲得した京都大学フィールド科学教育研究センター 瀬戸臨海実験所 研究員の岡西政典さんにお話を伺いました。

 

ーacademistへのチャレンジを決めた理由について教えてください。

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京都大学研究員 岡西政典さん

私は「系統分類学」という学問を専攻していますが、非常にマイナーな学問で、この分野で獲得できる助成金はかなり限られています。一方、ベーシックな学問ということで、旅費、実験の設備代、試薬のお金さえあれば研究を進めることができるので、そこまで多くの費用を必要としません。

研究費獲得の手段としてacademistを紹介された際、私の研究でも自由にチャレンジできるという”受け皿”の広さに魅力を感じました。金額を自由に設定できるというのも、academistに挑戦した理由のひとつです。

 

ーacademistで研究内容を発信する際に、なにか工夫したことはありますか?

かなりマイナーな研究ということもあり、まずはみなさんに「おもしろい」と思ってもらえるよう、なるべくわかりやすく、インパクトが出るように心がけました。最終的には「キヌガサモヅルの分類」をテーマにプロジェクトを作成しましたが、当初はDNA情報や地史イベントから地球環境変動がどのように変化してきたかということを調査する「分子生物学地理」について発信できればと思っていました。

しかし、academistのスタッフと話していたところ、「テヅルモヅル」という生物だけで相当なインパクトがあるのではと指摘されたのと、新種を発見しなくとも種の分類をするだけで十分わかりやすいという提案をされたことで、シンプルかつわかりやすい最終的な形に落ち着きました。

ークラウドファンディングをやってみて良かった点を教えてください。

研究を進められるということももちろんですが、私の研究を支援してくださる方がこんなにいるとわかったことがとてもうれしかったです。非常にマイナーな生き物を研究しているので、「その研究が何の役に立つのか」と言われることもあります。そういう指摘に対しては、「環境変動を調査できる」という説明をすることもあるのですが、やはり私自信は、キヌガサモヅル・テヅルモヅルが好きで、その分類が面白いと思っているので研究をしているわけです。

今回挑戦をしてみて、academistのページで支援者からのメッセージをみてみると、「もともとテヅルモヅルが好きだった」「分類することがおもしろい」というものが多かったんです。私の研究が進むだけで喜んでくれるひとがこんなにいるんだということが実感できたのが最も良かったと思っています。私自身の研究の励みにもなりました。

ーチャレンジをとおして、予想外だったことや驚いたことはありますか?

Yahooニュースに取り上げられたこともあり、想定より多くの資金が集まりました。目標金額を超えて集まったお金をどのように使うのかといったことを考えるのは、予想していなかった部分です。また、3万円のリターンであったテヅルモヅルの標本が真っ先になくなったことも驚きでした。

テヅルモヅルの標本

 

ー今後、挑戦する方々へのアドバイスをお願いします。

やはり研究内容をわかりやすく、インパクトが与えられるよう発信することが大事だと思います。また、支援者の方々が支援したお金が、実際どういうところへ利用されるのかということが明瞭にわかると良いチャレンジとなるのではないでしょうか。あとはリターンですね。どういったものが支援者にとって嬉しいものとなるのか考えると良いと思います。

また、academistによる研究費獲得は、これまでになかったお金の動きが発生するので、その資金をどのように使っていくかということを、大学や所属組織とともに事前に考えておく方が良いと思います。私の所属機関の場合は、こういった方法で集めた研究費は必ず大学に寄付をしなければならないという制度がありました。これをチャレンジが終わったあとに知ったことで、事務などといろいろとやりとりをしなければならず、研究費を利用できるのが予定より2ヶ月延びることになってしまいました。やはり事前に確認しておくことはとても重要です。

 

ー最後にひとことお願いします。

academistへのチャレンジは、一般の方たちにどうやって自分の研究をおもしろく伝えられるか考える良い機会となりました。そのなかで、自分が研究している学問を一歩ひいてみることで、自分の研究へ新たな還元もできました。academistのチャレンジャー第1号としてさまざまな経験をしたので、チャレンジを考えていて、なにか不安なことなどがある方は、いつでも私に相談してきていただければと思っています。

(※本稿は、2014年12月に行った下記取材を書き起こしたものです。)

 

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岡西さんがチャレンジしたプロジェクトのページはこちらです。

academistプロジェクト【深海生物テヅルモヅルの分類学的研究】