異業種・異分野が有する技術やアイデアなどを組み合わせて革新的な製品・サービスやビジネスモデルを開発する「オープンイノベーション」が、近年ますます重要視されています。ここで課題となるのが、マッチングです。オープンイノベーションに取り組む企業のニーズを満たす最適な技術を探すためには、時間とコストが掛かります。

こうした課題を解決すべく、技術のマッチングプラットフォームを開発・運営するリンカーズ株式会社。2017年には、オープンイノベーション普及を目指したオープンイノベーション研究所を設立しました。この研究所では、日本の大手メーカーを主なクライアントとして、多様なバックグラウンドとライフスタイルを持つ人たちが、新規事業・研究開発テーマ立案や連携先探索等に向けた先端技術動向調査をはじめとするリサーチやレポート作成業務を担当しています。

今回は、オープンイノベーション研究所で働く3名の技術リサーチャーに、仕事内容とそこで求められるスキルや経験、働き方の実態についてお話を伺いました。

長年模索していた子育てと仕事の両立を実現

まずはじめにご紹介するのは、佐藤ひとみさん。完全在宅ワークで技術リサーチャーの業務を行っています。長年、子育てと仕事の両立を模索してきたという佐藤さんの現在の働き方について聞きました。

佐藤ひとみ氏 プロフィール
国立大大学院農学研究科にて応用微生物学を専攻(修士)。修了後、体外診断用医薬品メーカーにて勤務。出産、育児を経て、大手食品メーカーや医薬品メーカーで分析専門の派遣社員として業務を行った後、現在はフリーランスの技術リサーチャーとして、バイオ系や化学系を中心とした文献調査やレポート作成業務を担当。

——これまでのご経歴について教えてください。

大学院では、酢酸菌が持っている酵素の精製や解析など微生物学の研究を行っていました。修了後は体外診断用医薬品メーカーに入社し、妊娠検査薬をはじめとする臨床検査試薬の開発に携わりました。退職後、結婚・出産を経て仕事に復帰したい気持ちはありましたが、子どもの体調のことなどを考慮して小学校入学までは専業主婦に専念することを決めました。

そして、派遣社員としてキャリアを再スタートした後は、食品会社や環境分析会社、医薬品メーカーなどで分析業務を担当していました。これらの仕事内容は好きだったのですが、朝早くから出勤し、残業もあり、家族に対してずっと申し訳なさを抱えていました。どう働いたら家族に負担を掛けないで両立できるか、何年も働き方を模索していましたね。

そんなときに友人から紹介されたのが、リンカーズの仕事でした。在宅ワークという選択肢をそれまであまり考えたことがなかったのと、現場での実験が好きだったこともあり正直迷いましたが、まずは副業として始めてみることにしました。はじめの1年間は副業として業務を行っていましたが、今はこの技術リサーチャーの仕事に専念しています。在宅ワークは時間の融通が利きやすいので、家庭の都合に合わせて柔軟に働くことができています。

——実際に技術リサーチャーの仕事に取り組んでみていかがでしたか。

技術関係の記事や論文を読んで最新の情報に触れられることはとても面白いですね。働き方も、ライフスタイルに合わせることができるので非常に助かっています。これまでは、時間の都合で子どもの習いごとをあきらめなければならないなど、家族に我慢させていたところもありましたが、そうした課題が解消された形です。

——技術リサーチャーに必要な心構えやスキルなどはありますか。

リサーチでは記事や論文などさまざまな文章を読むことが多いですが、そうした際に大学院での研究経験や過去の仕事の積み重ねが生きていると感じています。過去の仕事では特許文献を扱う機会もありましたし、研究経験があるおかげで文献中のどこにポイントがあるかということを素早く探すことができます。

——技術リサーチャーとして今後の展望があれば教えてください。

他の技術リサーチャーの仕事ぶりを見ていると、どこからその文献や特許情報を見つけてきたの? と思えるくらいリサーチ力の高い方もいらっしゃいます。私も分野の幅を広げて、検索スキルをさらに身につけていきたいですね。

働き方の柔軟性 × 企業研究者としての経験

続いてご紹介する大西由香利さんも、子育てと両立させながら技術リサーチャーとして活躍されています。企業研究者として長年のキャリアを持つ大西さん。現在の仕事にその経験や専門性が生きているといいます。

大西由香利氏 プロフィール
国立大学農学部卒業後、大手製薬企業の研究部門で研究職として約10年間新薬の合成研究に携わった後、研究部門の企画職として約6年勤務。家庭の事情で退職した後は、ライターや秘書などの仕事を経てリンカーズへ。バイオ系、化学・材料系を中心に技術リサーチャーの業務を行う。

——これまでのご経歴について教えてください。

農学部卒業後、製薬企業の研究職に就き、有機合成化学の手法による新薬の研究を約10年間行っていました。そのあいだに一度、産休・育休を取得して、同社研究部門の企画戦略の部署へ異動しました。そこでは6年間、意思決定会議の運営事務局業務や中期経営計画の策定と実行の支援、社内外の共同研究の立上げやマネジメントなど、研究推進に関わる支援業務に携わっていました。

この仕事は好きだったのですが、夫が海外に留学することになったタイミングで退職し、2年ほど米国で生活しながら、フルリモートでできるライフスタイルメディアなどのライティング業務を行っていました。

帰国後は、第二子出産を経て、再び仕事をするなかで、より自分の専門性を生かせるような仕事をしたいと考えていたところ、リンカーズとご縁があり、今に至ったという流れです。2人の子どもの歳が離れていることもあり子育ての時間が必要だったので、ある程度フレキシブルに働けること、また、サイエンスやものづくりの力で社会を変えていくサービスに貢献できることが、技術リサーチャーという仕事を選択する決め手になりました。

——実際に技術リサーチャーの仕事を行ってみていかがでしたか。

フレキシブルさは想像以上で、とても助かっています。特に今年の3月以降は、コロナ禍を受けて小学校の休校や保育園の登園自粛などで子育ての環境が変わりましたが、技術リサーチャーの仕事は、平日・土日祝日や時間帯問わず柔軟に業務時間を調整可能であるため、夜中やゴールデンウイークなどにカバーするという働き方ができたことはありがたかったです。

——技術リサーチャーとしての仕事にはどのような経験やスキルが求められますか。

技術リサーチャーとして働きはじめてまだ8か月ですが、科学系の情報を読みこなし、一番重要なポイントを見抜くことが大事だと感じています。こうしたスキルは自分自身が企業研究者として手を動かしていたときに得たものでもありますし、研究の話を聞いて大事なポイントを理解するという研究企画戦略スタッフとしての経験も生きていると思いますね。また、研究組織の意思決定をする方々と仕事をしていた経験のおかげで、クライアントが判断材料としてどんな情報を求めているかをイメージしやすいというのも自分の強みかもしれません。

——技術リサーチャーとしての今後の展望を教えてください。

自分のバックグラウンドである有機合成化学の知見を生かしてこれまで仕事をしてきましたが、バイオテクノロジーへのニーズが高まるなか、化学とバイオを組み合わせることでより自分の強みを磨いていきたいと考えています。バイオ系案件の依頼も増えているので、仕事を通して情報をキャッチしつつ、自分の知識を蓄えていくというサイクルができあがりつつあります。

——最後に読者のみなさんへメッセージをお願いします。

専門用語の知識や科学文献を読みこなす力、それをロジカルな文章に落とし込む力があるのは、研究者としてのスキルを重ねてきた人の強みなのではないかと8か月技術リサーチャーの仕事をしてきて感じています。研究者のキャリアから別の場所へ飛び込むことはすごく勇気がいることかもしれませんが、自分の能力を生かせる場所は意外に多くあるのではないでしょうか。

アカデミアからフリーランスの道へ

最後にご紹介するのは、大学や研究機関で長年研究を続けてきた久留和成さんです。アカデミアの研究者からフリーランスの道を選んだ理由は何だったのでしょうか。

久留和成氏 プロフィール
医学で博士号取得後、財団法人日本宇宙フォーラム・博士研究員、University of Dundee. Postdoctoral Research Fellow、Imperial college London. Research Associate、佐賀大学医学部助教、北海道大学大学院歯学研究科助教を経て、現在はフリーランスとして技術リサーチャーの仕事を行う。

——これまでのご経歴を教えてください。

大学院では薬理学・神経生理学を専攻し、博士号取得後は、肥満や糖尿に関係する研究を続けてきました。留学時代は、仕事として研究だけに集中していればよかったのですが、日本の大学では、研究以外の業務も多く、研究以外の業務に追われる日々に疑問を感じるようになりました。もちろん、大学や研究室などによって状況は異なると思いますが、私自身は、研究の仕事をしたくてアカデミアの道を選んだので、研究に十分な時間の割けない日々を続けていくあいだに、アカデミアという職業に魅力を感じられなくなり、自分のこれまでの研究キャリアや専門知識を活用できる仕事としてフリーランスになることを選びました。リンカーズの仕事を知ったきっかけは、私と同時期に留学していた方からの紹介で、業務内容として最新の研究や技術情報に携われることに、非常に魅力を感じました。

——実際に技術リサーチャーとして仕事をしてみていかがでしたか。

特に自分の専門分野に近い案件は、なじみ深く、研究者の顔も思い浮かぶので面白いですね。自分の専門分野と100%一致する仕事だけではないので難しいときもありますが、自分の知らないことを勉強しながら仕事をしていくことは非常に楽しくやりがいを感じています。

また、現在は実家に帰り高齢の両親と暮らしているのですが、時間に縛られないので、両親の面倒をみながら働くことができています。突然の用事ができた際にも時間を調整し、自分のペースでお仕事させていただけるので、非常に助かっていますね。

——業務は文献調査がメインになってくると思いますが、アカデミアでの研究とのギャップを感じられることはありますか。

会社勤めの経験がないので「はたして、自分がやっていけるのだろうか?」と思っていたので、精神的なハードルは高かったですが、実際に技術リサーチャーの仕事をしてみると、大学での研究の仕事と非常によく似ていました。研究には2つの側面があると思っています。ひとつは、自分自身で手を動かして実際に研究を進めていくこと。もうひとつは、類似研究分野の進捗状況を把握するために論文を読んだり、さまざまな人に接して情報収集をしたりすることです。現在の業務に関していえば、実際に手を動かす部分はなくなっていますが、世界中の研究開発の動向を調査するということはアカデミアで研究していたころと共通しています。むしろ、以前より文献調査に集中できるので、楽しく仕事できていますね。

アカデミアでは人付き合いが限られているという特徴があり、会社員としてさまざまな方と接していくことを難しく考える方もいるかもしれませんが、技術リサーチャーの仕事においては人間関係の複雑さもないですし、アカデミアから移ってくる方にとっては非常にやりやすい仕事だと感じています。

ただ、アカデミアの研究と大きく異なるのは、マーケットがあるということです。商用的に応用可能性があるかというところまで判断できるような感覚を今後は身につけていかなければならないと感じています。専門分野の拡張もしていきたいですね。

おわりに

日本においては、専門的な教育を受けている人たちが多くいるのにも関わらず、専門知識を生かせる場所が限定的であるという課題があります。オープンイノベーション研究所では、埋もれてしまっている個人の専門性を生かすための仕組みをつくっていこうとしています。

そのひとつが、今回ご紹介した技術リサーチのサービスです。研究活動を経験したことのある方であれば、科学的な文献を読み込み整理してまとめる能力を持っているのではないでしょうか。技術リサーチャーの仕事は、そうした研究キャリアで得たスキルを場所・時間を問わず柔軟に生かせる仕事であるといえます。

オープンイノベーション研究所では今後、こうした個人の専門知識活用の基盤をさらに強固なものにしていき、リンカーズの強みであるものづくりネットワークとつなげていくことで、日本全体が研究開発部門として連携できるような世界を目指していきます。

技術リサーチャー募集!

「日本全体が研究開発部門となる世界」にあなたも貢献してみませんか? リンカーズ株式会社 オープンイノベーション研究所では、技術リサーチャーを募集しています。対象となる技術分野は、バイオ、メディカル、材料、デバイス、ソフトウエア、ロボットなど多種多様です。興味のある方は下記募集ページをご覧ください。

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この記事を書いた人

周藤 瞳美
周藤 瞳美
academist Journal 編集長
お茶の水女子大学大学院博士前期課程修了。修士(理学)。出版社でIT関連の書籍編集に携わった後、Webニュース媒体の編集記者として取材・執筆・編集業務に従事。2017年に独立。現在は、科学・技術、IT、ビジネス分野を中心に取材・執筆活動を行う。アカデミストでは、academist Journalの編集長としてWebメディアの運営に携わっているほか、クラウドファンディングのプロジェクトページなどコンテンツ制作全般をサポート。学生時代の専門は、計算化学、量子化学。 http://www.suto-hitomi.com/