アカデミストは2019年6月15日(土)に、研究者向けフリーペーパー『アカデミスト』の創刊記念パーティを開催しました。

『アカデミスト』は「つながる、ひらめく、あつくなる」をコンセプトに、異なる分野を何の変哲もないテーマでつなげることで、新しいひらめきが生まれるような雑誌を目指しています。本誌の制作費はacademistのクラウドファンディングにて募りました。

本イベントは、クラウドファンディングにご支援いただいたサポーターと、academist運営チームのファンクラブ型クラウドファンディングにご支援いただいている会員の方にリターンとして提供されたイベントです。

当日は京都大学学際融合教育研究推進センターの宮野公樹准教授による基調講演や、異分野融合研究を実践する若手研究者たちによるパネルディスカッションなどを行いました。今回は、イベントの様子の一部をお伝えします。

調べれば調べるほど「青」とは何かがわからなくなってきた

イベントの冒頭では『アカデミスト』の編集長古戎道典氏が、雑誌のコンセプトや制作背景について説明しました。

『アカデミスト』創刊号のテーマは「青」です。古戎氏は、「制作にあたって『青』について調べれば調べるほど、『青』が一体どのようなものかわからなくなってきました」と話します。たとえば、照明器具の業界では、435nmの波長の光が青色の光であると定義されています。しかし、青信号や青菜など、実際は緑色のものを指して「青」という言葉を使うこともあります。黄色の背景にグレーの四角を重ねると青色に見える現象もあります。古戎氏は「これらは435nmの波長の光とは関係がない、自分の心や頭のなかにある『青』です。青を思い浮かべたとき、みんなの頭の中心には同じ青があるのに、外側を見ていくとだんだんぼやけていく」と、「青」というテーマの奥深さについて語ったうえで、『アカデミスト』創刊号に掲載されている記事のうちのいくつかは、ぼやけた青の外側でどこからどこまでが青なのかを線引きしようとしている研究であるという見解を述べました。研究は、誰もが常識だと思っていることの外側にある”ボヤボヤ”した部分をきれいにすることにおもしろみのひとつがあるのかもしれません。

学問とは、「前提を疑う」こと

つづいて、京都大学の宮野准教授による「ひらめきとは? – アカデミスト発刊にあたっての学術の問い直し」というテーマの基調講演に移りました。

宮野准教授が所属する京都大学学際融合教育研究推進センターのビジョンは「何かでるなら京大だろうね、という期待に応えるために」です。このようなビジョンのもと、同センターではワークショップや京大100人論文などのイベント、毎月の全分野交流会などを開催しています。

こうした活動を主導する宮野准教授は、学問とは何かという問いに対して「学問とは前提を疑うこと。言い換えると、自分を見つめるもうひとつの目を自分の内に持つということだと考えています。また、学問は生き様(よう)であるとも思っています。その人の生き死にそのもの、わからないものに対する姿勢自体が学問ではないでしょうか」と自身の考えを語ります。

そして「学問は『おもしろい』などという類のものではないです。学問がおもしろいというのは、あくまで一側面でしかありません。むしろ辛いものです。それしか自分にはないと思ってするもの、知らず知らずのうちにしてしまったものが学問だと思っています。人類の歴史のなかで、このような理想的な学問ができる大学はありません。しかし、理想の学問ができる場を、大学が求め続けることにロマンがあると思っています」と、大学のあり方についても触れました。

学問をつなげる研究者(プレイヤー)たち

「学問をつなげる研究者(プレイヤー)」たち」というテーマのパネルディスカッションに登壇したのは、慶應義塾大学のガリポン・ジョゼフィーヌ特任助教 、東京大学の境祐二助教、大阪大学の高橋英之特任講師です。3名とも自分の専門分野を活かしながらも、学問分野が融合した研究テーマに取り組んでいます。『アカデミスト』は、特集を通して「学問をつなぐ」ことを試みましたが、このパネルディスカッションでは、現場のプレイヤーとして「学問をつなぐ」ことに対してどのような考えを持っているかなどについてお話しいただきました。

パネルディスカッションの後は、参加者同士のネットワーキングを行いました。

アカデミストではこれからも四半期に一度のペースでイベントを開催して参ります。academist運営チームのファンクラブ会員の方は優先的にイベントへ参加できますので、ご興味を持たれた方はぜひ一度プロジェクトページをご覧ください。次回のイベントにてみなさまとお会いできることをスタッフ一同楽しみにお待ちしております!