アカデミストは4月25日、第2回「academist BAR」を当社が入居するインキュベーション施設 Inspired.Labにて開催しました。academist BARは、お酒を飲みながら最先端の研究について研究者から直接お話を聞くことができる少人数限定イベントです。第2回の講師は、早稲田大学表現工学科講師の矢田部浩平さん。「音を見る」というタイトルで、光を用いて音響現象を可視化・計測する研究についてご紹介いただきました。

光を使った音響計測とは

私たち人間の耳で聞き取れる「可聴音」は、0.1Pa程度の大気圧変動によるものです。0.1Paというと通常10万Pa程度の大気圧に対しては非常に小さい変化なので、音を圧力として知ることは非常に難しいといえます。たとえば音響測定で使う高精密なコンデンサマイクロホンは、数μmの厚さの振動板が電極から数十μmの位置に張られているような、とても緻密な構造となっています。

一方で、空気の疎密変化を捉えられればよいということは、原理的には空気の密度に依存する光の屈折率を利用することで音を検出できるということです。また光を使うことによって、マイクロホンでは扱えないような音を計測することも可能となります。そこで矢田部さんの研究室では、光を使った音響計測の研究に取り組んでいます。

研究室では、レーザドップラー振動計と偏光高速度干渉計という2種類の干渉計を使って干渉縞をつくる装置を用いているそうです。この干渉縞を解析することで、光の位相の空間分布が得られ、屈折率などを計測することができるといいます。研究の詳細は下記の解説論文にまとめてありますので、興味のある方はご覧ください。

・電子情報通信学会 基礎・境界ソサイエティ Fundamentals Review, 光学的音響計測, 2019年12巻4号 p.259-268

academist BARでは、実際に得られた干渉縞や可視化された音の動画などを見ながら解説していただきました。竹笛のような形の笛を吹いた際、空気は下に流れていく一方で、音は笛の穴から前方向に進んでいく様子がきれいに可視化できていたのは驚きでした。

毎週木曜日に開催中!

矢田部さんは、早稲田大学で240名の学生を対象にした授業を行う人気講師なだけあって、約10名の参加者のみなさんも矢田部さんのトークに興味津々。当日は非常に活発な議論が行われていました。また普段は音楽活動にも取り組んでいるという矢田部さんですが、研究について「研究では世界で初めてのことに携われるので、音楽よりもクリエイティブ」と熱く語る姿が印象的でした。

academistBARには今後も、人文・社会科学から情報科学、理学、工学、医歯薬学まで、幅広い分野の研究者にゲスト講師としてお越しいただく予定です。開催予定はこちらのサイトにてご確認ください。毎週木曜日19時より開催していますので、ご興味のあるテーマや研究者を見つけてぜひ参加してみてください!