アカデミストは2019年3月20日(水)、春イベント「科学はどこからきたのか?」を当社が入居するインキュベーション施設 Inspired.Labにて開催しました。本イベントはacademist運営チームのファンクラブ型クラウドファンディングにご支援いただいている会員の方にリターンとして提供されているもので、非会員の方も有料でご参加いただけるイベントです。当日は科学史が専門の名古屋大学・隠岐さや香教授をお招きし、「科学はどこからきたのか?」というタイトルで講演を行っていただきました。今一度「科学」の歴史を振り返り、これからの科学や研究のあり方を考えるヒントを得るべく企画したイベントです。

科学に価値を見い出す価値観はどこから?

隠岐教授は、まず講演の冒頭でタイトルを具体的に解釈しなおしました。「科学はどこからきたのか」という問いは歴史学者にとっては禁じ手といってもよい問いだと言います。なぜなら、起源は遡ろうと思えばどこまでも遡れてしまうものであり、また当時のひとにとっては科学ではないものに今の私たちにとっての科学を当てはめてしまうアナクロニズム(時代錯誤)を犯してしまう可能性があるからです。そのため本講演では、隠岐教授の専門であるフランスの科学史を題材に、社会のなかで「科学が宗教的な信念や政治的な立場を超えて大事とされる見方がいつ頃からはじまったのか」という問いに答える形で講演を進めました。

科学が大事とされる見方が共有されていなかった時代の象徴的な例としてガリレオの異端審問が挙がりました。当時は政治的な立場が重要であり、議論好きで敵が多かったガリレオの科学は異端審問で「敗北」してしまいます。彼が生きた時代にはまだ科学的な考え方に価値を認める見方は社会に共有されていませんでした。

ガリレオの死後、17世紀後半にパリ科学アカデミーが設立されます。その頃から王権や貴族が科学者を保護するアカデミーが欧州中で増えはじめ、フランス革命の頃まで約100年間この傾向が続きます。当時、国家や貴族からのお金が不足し研究が止まることがあり、その場合には現代のクラウドファンディングのように有志の寄付によって研究が支えられることがあったそうです。また、ある種の文化革命でもあったフランス革命が起き、それ以前の文化や価値観が否定されたあとでも、教会の財産が没収される際に科学に関する標本などが大切に保護されたそうです。あらゆる権威や価値が転倒する混乱の時代であっても、科学に価値を見出し、それを守ろうとする人たちがすでにいたのです。科学に至高の価値を見い出す見方はこのアカデミーの時代から来たと言えます。

隠岐教授は最後に、アカデミーの時代の遺産である「科学に至高の価値を見い出す見方」を私たちはいかに受け止めて、次世代に伝えていくべきか?という問いかけをし、講演を締めくくりました。

質疑応答でさらにテーマを深掘り

講演のあとは質疑応答に移りました。今回のイベントには学生、研究者、企業の方と多様なバックグラウンドの方にご参加いただきました。そのため、質疑応答の時間ではより多くの視点でディスカッションをすることができました。

たとえば、「現代では役に立たない研究と言われて支援が不足することがあるがアカデミーの時代はどうだったか?」という質問がありました。隠岐教授によると、当時から研究支援の有無の判断のために「その研究は何の役に立つのか」と問われることはあり、答弁の記録も残っているそうです。当時の答弁記録の内容は現代を生きる科学者にとっても参考になるかもしれないとのことでした。

懇親会を通じたネットワーキング

質疑応答後は、Brew Dogのビールとともに懇親会を行いました。おいしいビールを潤滑油に、講演内容をさらに深めて議論するなど、活発な交流がされていました。

アカデミストではこれからも四半期に一度のペースで同様のイベントを開催して参ります。academist運営チームのファンクラブ会員の方はイベントに優先的に無料で参加できますので、ご興味を持たれた方はぜひ一度プロジェクトページをご覧ください。次回のイベントにてみなさまとお会いできることをスタッフ一同楽しみにお待ちしております!

(執筆・撮影:道林千晶)