性転換する牡蠣、木に登るカタツムリ、致死温度に近い温泉に生息するオタマジャクシなど、世の中にはおもしろい性質をもつ動物がたくさん生息しているのをご存知ですか? そんな「おもしろ動物」を対象として研究を行っている研究者のみなさんに、それぞれのおもしろポイントを聞きました。

謎だらけの深海生物「テヅルモヅル」

研究者からのコメント:クモヒトデ綱のいちグループであるテヅルモヅル類は、腕が分岐することから、見た目が植物のようにもじゃもじゃになってしまう奇妙な形をした生き物です。深海(生物の世界では200m以深)に棲むものが多く、かつ大型で、飼育も難しいため、どうやって子孫を残しているのか、どうやって餌を食べているのか、そもそも、なぜ腕をもじゃもじゃに分岐させてしまうのか、などの基本的な事ことも明らかになっていません。それよりもさらに基本的な「系統」や「分類」についても、大まかな系統は私たちの研究である程度わかってきましたが、細かい種の分類などについては、まだまだ研究が進んでいません。最近では、DNA解析や最新の形態観察手法を用いることによって、日本で1種と思われていたものが複数種に分けられる例などが見出されつつあります。世界にはまだまだこのようなテヅルモヅルの新種が潜んでいると考えられ、大規模なDNA解析を行うことで、それらをまとめて発見できるものと期待されます。

乾いても死なないクマムシの謎

研究者からのコメント:真空でも超低温でも宇宙でも生き延びる地上最強生物、クマムシ。そのへんの道路に生えるしょぼいコケの中など、私たちの身近なところにも住んでいます。クマムシは緩歩動物門という分類群に属しており、昆虫ではありません。クマムシは体の水がほぼ全部なくなってカラカラになっても死にません。この能力は乾燥への適応進化の結果と考えられています。クマムシには他の生物には見られない遺伝子がいくつもあることが判明しており、この生きものの能力の全容解明が急がれています。

クロレラと細胞内共生をするゾウリムシ

研究者からのコメント:ゾウリムシ属の一種であるミドリゾウリムシは、クロレラという藻類と細胞内共生(二次共生)をするという特徴をもっています。共生クロレラを除去したミドリゾウリムシに、あらかじめ宿主から単離した共生クロレラを一定時間だけ混合すると、活発な食細胞活動によって、真核細胞どうしの二次共生の再成立を大量の細胞に同調して誘導することができます。このように二次共生を誘導できるのはミドリゾウリムシだけの特徴で、その最適条件は私たちが開発しました。ミドリゾウリムシと特定の藻類のあいだでだけ細胞内共生が成立するという事実は、そこに細胞内共生成立に必要な条件が隠されていることを示唆しています。私たちは現在、二次共生の成立に必要な分子機構を解明しようとしています。

僕、メスになります – 性転換する牡蠣たちの事情

研究者からのコメント:私たちが普段何気なく食べているマガキですが、実は性転換することが知られています。牡蠣にもオスやメスがいる、ということも驚きかもしれないですが、実は私たちが知らない間に性を変えているようです。しかし、見た目ではオスかメスか区別ができません。そこで、麻酔をかけて性を調べ、同じ個体を追跡することで性転換を確認しました。すると大部分の個体がオスからメスに変わるのですが、性転換が起こりにくい条件があったり、メスからオスへの性転換も見られたりと、マガキの性転換は一言では説明ができない、さまざまなパターンがあるということがわかりました。

木登りカタツムリ「サッポロマイマイ」はなぜ木に登るのか?

研究者からのコメント:サッポロマイマイは、一見、ごく普通のカタツムリです。しかし驚くことなかれ、一年の半分ぐらいは木の上で生活しているという、木登りの名手でもあります。秋には気温が下がってきます。すると、定規ではかったように地上に降りてきて、落葉の中で越冬します。そして春、暖かくなってくると、また木の上に登ります。サッポロマイマイがわざわざこんな行動をするのはなぜなのでしょう? サッポロマイマイを木に登れないよう地面にくくりつけてみました。すると夏はタヌキやネズミ、オサムシなどに食べられるなどして多くが死んでしまうことがわかりました。樹上は、サッポロマイマイにとって、捕食者から逃れ、生存率をあげるための大切な空間であるといえます。

謎多き稀少動物「キューバソレノドン」の研究最前線

研究者からのコメント:キューバソレノドンは、地球上でキューバ島にしか生息していませんが、現在は生息域が極端に減少し、捕獲されることも希です。このために生態や行動についてはほとんど知られていません。また、唾液に有毒物質をもっているとされていますが、詳細は不明です。まさに珍獣というのにふさわしい動物です。さらに、ソレノドンは恐竜と共存していた古い哺乳類の生き残りで、生きた化石などとも言われていました。しかし、ソレノドンは化石記録が少ないことから、詳しい進化過程は不明でした。このたび、我々の調査チームが、DNAの塩基配列に基づく研究を行い、ソレノドンは恐竜絶滅後に進化したことが確かめられ、通説が覆されました。

致死温度に近い温泉に生息するオタマジャクシ

研究者からのコメント:琉球列島に広く分布するリュウキュウカジカガエルは、汽水域から山林までさまざまな環境に生息しています。そして彼らは、温泉ですら生息地として利用しています。屋久島のすぐ南に浮かぶ口之島のセランマ温泉では、リュウキュウカジカガエルのオタマジャクシが生息しています。生息水温は40度を超え、ほかのどの両生類をも凌ぎます。温泉では60度以上の熱湯から30度前後のぬるま湯が入り乱れ、オタマジャクシは致死温度ぎりぎり、まさに死と隣り合わせの極限環境にその身を置いているのです。