アカデミストは4月18日、理化学研究所 数理創造プログラム(iTHEMS)と共同でオンラインイベント「数理で読み解く科学の世界」を開催いたします。 本連載では、同イベントの講演の内容について簡単にご紹介していきます。詳しい話はぜひ当日の講演でお楽しみください!

#1 ブラックホールに入ったリンゴはどこへ行く?
#2 ゲーム理論で学ぶ男女比の進化:学級の男女比はなぜほぼ一対一なのか?
#3 量子コンピュータって何?どう使うの?
#4 暗黒物質の色は何色? 〜見えないモノを調べる方法〜
#5 世にもふしぎな素数の世界 ~まだこんなことがわからない~
#6 人工知能に絵を書かせる方法

いま、ブラックホールが蒸発しているとしましょう。「え?!」と思うかもしれませんが、ここではとりあえず、コップの水が蒸発しているくらいに思ってください。そのブラックホールは時間が経てば完全に蒸発しきってしまうとします。

さて、このブラックホールにリンゴを投げ入れたとしましょう(場合1)。そのリンゴはブラックホールと共に蒸発したとします。今度は、バナナを投げ入れてみましょう(場合2)。今回もブラックホールと一緒に蒸発してしまいます。水が蒸発する場合は、水蒸気が外に逃げていきます。なので、今回のブラックホールの蒸発過程でも、“何か”がブラックホールから放出されているはずです。

問題です。「私たちが投げ入れたものがリンゴだったのか、バナナだったのかを、蒸発後に区別できるでしょうか? つまり、“放出された何か”を調べることによって、最初に投げ入れた物体の情報を区別できるでしょうか?」もし区別できるならば、情報が残っていることになります。もしまったく区別できないならば、それは情報が消えることになります。

この不思議な想像上の実験(思考実験と言います)は、「情報問題」という最先端の物理学で研究されている問題で、未だに明確な答えが出ていません。というのも、そもそもブラックホールとは一体何なのかが未だにわからないからです。

この講演では、「ブラックホールとは何なのか?」「情報とはそもそも何なのか?」「ブラックホールはどうやって蒸発するのか?」「どうして情報問題を考えるのか?」を説明し、情報問題にチャレンジします。不思議な世界をお楽しみください。

iTHEMS × academist オンラインイベント「数理で読み解く科学の世界」

iTHEMSでは「数学」を共通言語として、物理、生物、宇宙などさまざまな科学分野の横断的な研究をしています。オンラインイベント「数理で読み解く科学の世界」では、Web会議サービス「Zoom」を利用し、iTHEMS所属の若手研究者6名が最先端の研究に関する30分の講演をオンラインで行います。講演後も研究者たちと話せる時間がたっぷりありますので当日はぜひ、たくさんの疑問・質問を投げかけてみてください。

【イベント詳細】
日時:2020年4月18日(土)10:00〜17:00
場所:Web会議サービス「Zoom」(申込者に事前に招待URLをお伝えいたします)
参加費:無料
対象者:どなたでもご参加いただけます
お申し込み・特設サイトURL: https://www.ithems.academist-cf.com/

【講演者および発表タイトル】
横倉祐貴 「ブラックホールに入ったリンゴはどこへ行く?」
入谷亮介 「ゲーム理論で学ぶ男女比の進化:学級の男女比はなぜほぼ一対一なのか?」
入江広隆 「量子コンピュータって何?どう使うの?」
廣島渚「暗黒物質の色は何色?ー見えないモノを調べる方法ー」
宮﨑弘安 「世にもふしぎな素数の世界 ~まだこんなことがわからない~」
田中章詞 「人工知能に絵を書かせる方法」

この記事を書いた人

横倉祐貴
横倉祐貴
理化学研究所iTHEMS上級研究員。博士(理学)。京都大学理学部卒業後、同理学研究科物理学宇宙物理学専攻において修士課程及び博士課程を修了。その後、基礎物理学研究所の研究員、ICTS-TIFRの研究員、理化学研究所の基礎科学特別研究員を経て、現職。専門は理論物理学。特に素粒子論。趣味は食事と料理。