「異分野融合」という言葉がイノベーション創出の文脈で語られるようになってきました。大学や研究機関においてもその重要性が認識されており、異分野融合研究を行うための分野横断型組織が次々につくられています。しかし、異分野の研究者が集まって行う融合研究は、専門用語や考え方の違いなどさまざまなハードルがあるのも事実です。

今回の特集では異分野融合に取り組む組織のあり方や考え方、異分野融合研究によって生まれた研究成果についてまとめました。今回の特集から、分野間をつなぐ適切な「キーワード」そして「環境」が重要であることがみえてきます。

地元の特産「日本酒」をキーワードにうねりを生み出す

新潟から「日本酒学」でうねりを生み出す! – 新潟大学日本酒学センターの挑戦

新潟大学で今年から開講した講座「日本酒学(sakeology)」。日本酒の文化、日本酒と健康、日本酒と農業……、というように、日本酒の裏に隠れているさまざまな事象を体系的に学び、日本酒を深く知ることを目指しています。この取り組みを推進する「新潟大学日本酒学センター」には、新潟大学のさまざまな分野の研究者たちが所属しており、日本酒を切り口とした新たな研究アイデアを模索しているといいます。

「真理探究」という共通の目標を掲げ、異分野を衝突させる

学問論とは何か – 京大・宮野公樹准教授にその理念と実践を聞く

「全79分野の研究者をひとつの部屋に集めて、この部屋に学問があるって言いたいんです」。そう話すのは、京都大学学際融合教育研究推進センター・宮野公樹准教授。宮野准教授は、異分野交流会や学際研究着想コンテスト、京大100人論文など、学際融合を目指した数々の取り組みを形にしてきた立役者であり、日々「学問論」について考えを巡らせる学者でもあります。

分野融合のカギは、「環境」に尽きる

理研・初田哲男博士、分野横断型組織iTHEMSについて語る。「分野融合のカギは、”環境”に尽きる」

原子核物理学の分野で優れた業績をあげてきた理化学研究所(理研)の初田哲男博士。現在は、2016年11月に始動した同研究所の数理創造プログラム(iTHEMS)のグループディレクターとして、数理科学を軸とした分野横断型研究を進めています。初田博士は、2015年のNature誌のインタビューで、日本における分野横断型研究の取り組みは海外と比較して遅れをとっている状況にあると指摘しています。

「ニオイ」に着目し、要素技術の垂直統合を推進

ニオイって実は超複雑で超有用! – ニオイに秘められた情報に迫る新たなアプローチ

ニオイは非常に複雑かつ多様であり、それゆえにその分析は簡単ではありませんでした。しかし、裏を返せば、ニオイにはその発生源に関する詳細な情報が秘められているとも言えます。物質・材料研究機構のグループは、日常生活を大きく変えるほどのさまざまな可能性を秘めたニオイに着目し、誰もが使える嗅覚センサの実現と標準化に向けて、各種最先端要素技術の垂直統合を推進しています。

「裏切りアリ」の謎にロボットで挑む

集団を絶滅させる”裏切りアリ”の謎に挑む – 京大・土畑重人博士

ロボット工学や情報工学、数理生態学など、さまざまな分野を専門とする研究者で取り組む異分野連携型のプロジェクト「アリに学べ!ロボットの集団行動最適化プロジェクト」。プロジェクトメンバーであり、進化生物学を専門とする京都大学・土畑重人博士に、ご自身の研究内容と異分野連携のメリットについて、詳しくご紹介いただきました。