地球最後のフロンティア、深海ーー。独特な生物や鉱物資源、海底地震など、さまざまな謎が潜んでいるが、高水圧で暗黒、電波が届かないなどといった過酷な環境であるため、その研究・開発は困難を極める。本特集では、知恵と技術をもって深海に挑む研究者、そして最新の研究成果を紹介する。(ページ作成:2017年5月)

日本の海底探査チーム「Team KUROSHIO」に勝算はあるか

地球表面の2/3を覆う海だが、そのうち海底の地形が明らかになっている範囲はたったの1割程度。残りの9割については、分解能の低い地図しかない。これは、月面や火星表面の調査結果と比較しても荒いものである。この状況を打破すべく開催されることになった国際大会「Shell Ocean Discovery XPRIZE」に日本の若手研究者からなる「Team KUROSHIO」が挑む。チームの代表を務める海洋開発研究機構・中谷武志博士にお話を伺った。【academist挑戦中!】無人探査ロボットで東京ドーム1万個分の海底地図を描きたい!

日本で唯一の深海生物に特化した水族館

巨大な眼や半透明な身体、するどい牙に、暗闇にキラリと光る発光器。深海にすむ生物は、私たちの想像をはるかに超える興味深い形態と生態を持っている。沼津港深海水族館の石垣幸二館長は、「深海生物を生きたまま観察することでその生態に迫り、その姿をみることで深海生物に愛着を持ってほしい」との思いから、日本で唯一の深海生物に特化した水族館を運営する。深海生物には、共通する特徴があるのだろうか。またどんな日常を過ごしているのだろう。

深海に住む”悪魔のサメ”の驚くべき捕食方法

深海に生息するサメ「ミツクリザメ」。顎が前方に飛び出し、歯がむき出しになった恐ろしげな容貌と色素を欠いた桃色の体から、欧米では「goblin shark(悪魔のサメ)」の呼称で知られている。その発見から一世紀以上経っても、生態はほとんど明らかになっておらず、特にミツクリザメの最大の特徴ともいえる、前方に大きく突出する顎が捕食時にどのように使われるのかは大きな謎となっていた。しかし、近年NHKが海中での捕食シーンを撮影し、謎の解明に歩み出すことができた。その驚くべき捕食方法とは……。

深海に眠る海底鉱物資源を人工熱水孔で「養殖」する!?

鉄やアルミ、銅など毎日のように目にする身近な金属だけでなく、合金材料に使われるコバルト、クロム、モリブデン、タングステン、強磁性磁石に必須のレアアースなど、多様な金属資源によって私たちの生活は支えられている。しかし現在日本は、その金属資源の多くを海外からの輸入に頼っているという状況だ。海洋研究開発機構の野崎達生研究員は、新たな金属資源の供給元として期待されている「海底熱水鉱床」に注目して研究を進めている。

海底に設置された地震・津波の観測監視システム「DONET」とは

地震と津波の観測・監視を目的としたケーブル式観測システム「DONET」。紀伊半島から四国沖の南海トラフに展開されているこの広大なシステムの開発プロジェクトに関わっていた海洋開発研究機構 大木健博士に、その開発方法や成果、そしてロボットを用いて未知の世界を探査することの魅力について語っていただいた。