【特集】がん研究の現状と未来
日本人の死因第1位となる疾患、がん。免疫チェックポイント阻害剤や重粒子線療法など、新しい薬や治療法が開発されていることをご存知の方も多いだろう。しかし一方で、その実態については不明な点がいまだに多く残されており、多くの研究者が、新たな治療法開発やメカニズム解明に向けて、日々、基礎研究を進めている。本特集では、各種がんに関する最新の研究成果や、がん研究の第一線でご活躍されている研究者へのインタビュー記事をまとめることで、がん研究の現在と未来に迫る。(ページ作成:2017年4月)
「血液のがん」のメカニズム解明に挑む、順天堂大・小松教授
「基礎研究の裾野を広げなければ、応用研究への発展性はありません。」そう語るのは、順天堂大学医学部の小松則夫教授だ。小松教授は血液内科医として働く傍ら、20年以上に渡り基礎研究に取り組み、2016年に発表した論文が国際専門誌『BLOOD』のトップ10に選ばれるなど、重要な成果を残している。医学に結びつく基礎研究というのは、どのようなものなのだろうか。
がん遺伝子「GRWD1」の発見 – 新たな抗がん剤の開発を目指して
そもそも「がん」とはどのような状態のことを指すのだろうか。また、どのような方針で治療法を考えていけば良いのだろう。九州大学薬学研究院の藤田雅俊教授より、がん遺伝子「GRWD1」を新たに発見した研究成果ととともに、がんのメカニズムについてご紹介いただいた。
腫瘍内に形成される血管 – 「がん幹細胞」の片鱗を見る
遺伝子の変異を入れるのではなく、iPS細胞から「がん幹細胞」を作ることでがん研究を進める岡山大学副学長の妹尾昌治教授。これまでのがん研究のアプローチと比べて、どのような点にメリットがあるのだろうか。
がんなどの狙った部位で薬を現地合成して治療する
理化学研究所の田中克典主任研究員らのグループは、「生体内合成化学治療」という方法で、体内で直接金属触媒反応を行ったり、あるいは病気の部分で過剰に発生している分子を有機反応の試薬として活用することで、生きている動物内の狙った臓器やがんなどの疾患の部分で、ある時間枠にピンポイントで薬などの生理活性分子を直接合成して治療しようと考えている。
「がん予防」の夢に挑む、北大・藤田教授
がんの「予防薬」の開発を目指して研究を進める北海道大学遺伝子病制御研究所の藤田恭之教授。「細胞競合」の分野の第一線で活躍する藤田教授のキャリアは、決して平坦なものではなかった。