クラウドファンディングをきっかけに世界へ拡大した研究活動
※本記事は、下記クラウドファンディングのチャレンジャー・堀部和也さんによる寄稿です。
脳のしわは神経活動の伝播に影響するか? 非線形物理学で挑む(スポット型、支援期間終了)
サマースクールの参加費がない、じゃあ、クラウドファンディングしよう
クラウドファンディングをやろうとしたきっかけは、複雑系科学の発祥の地アメリカ・サンタフェ研究所のサマースクールの選考を突破したが、参加費の50万円と渡航費がないという差し迫った事情からでした。私が挑戦した2019年はアカデミックでのクラウドファンディングが現在に比べ浸透しておらず、暗中模索しながら、アカデミストのスタッフの方と二人三脚で準備し、目標額を達成することができました。
無事サンタフェの地に降り立つことができ、濃密な1か月をサンタフェで過ごすことができました。世界中の若い研究者と交流ができ、プロジェクトの立案から形にするまでの速さに驚きながらも、必死でついていきました。早朝のランニングやヨガ、サンタフェの街でのサルサやクラフトビールでの息抜きも活発に行われ、積極的に参加することで、仕事と生活のバランスについて改めて考えることができました。一部の友人とは共同研究という形で今も連絡を取り合っています。今まで日本でしか研究活動をしてこなかった自分の視野は広がり、海外へ出る心的なハードルは消え去りました。
アメリカからヨーロッパへ
アメリカから帰国後、並行して準備をしていた長期のデンマーク滞在のためにまたすぐに日本をたちました。デンマークではサンタフェ研究所にも縁のある人工生命の研究を行いました。初めての海外長期滞在でしたが、素晴らしい同僚と環境に恵まれ、7か月研究に集中することができ、国際会議に論文を発表することができました。
帰国、そして学位取得
7か月のヨーロッパ滞在は新型コロナウイルスのパンデミックにより予定より少し早く帰国せざるを得ませんでした。帰国すると博士論文の執筆の期限が迫っていました。デンマークでの研究を引き続き行ったり、企業のインターンをおこなったり、自分の能力以上の仕事を抱えてしまったため、パンクして何も手がつかなくなってしまう時期が数か月単位で続いてしまいました。多くのお世話になった先輩方に相談にのってもらい、博士論文以外のことを中断し論文執筆に注力することにしました。正規の卒業から3か月遅れてしまいましたが、なんとか博士論文を書き切り、博士号を取得しました。
大学スタッフとなった現在から振り返って
学位を取得した後、今の所属で新たな研究分野に飛び込み日々奮闘しています。クラウドファンディングに挑戦した2019年からの2年を振り返ってみると、アカデミストでのクラウドファンディグから自身の研究が世界へ拓け、ライフスタイルの視野を広がったと感じています。今後も、引き続きさまざまなことに挑戦していきたいと考えています。
この記事を書いた人
- 大阪大学大学院基礎工学研究科特任助教。現在はヒューマンエージェントインタラクションおよび人工生命の研究に従事。博士過程では大脳皮質の形づくりについてコンピュータシミュレーションを用いた研究を行っていた。仮想生物の進化をコンピュータ上で再現し、生まれてくる新奇な個体の観察が日課。生物・生命の理論モデルからそれらを対象とする芸術にも関心を持ち、ハッカソンで出会ったアーティストと一緒に制作を行っている。
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