2016年3月~5月にかけて、京都大学文学部山本孟さんが、academistにて「「愛」は普遍なのか? ヒッタイトの楔形文字から探る!」というプロジェクトに挑戦し、目標金額を達成しました。今回のレポートでは、2016年7月16日に開催された、山本さんによる一般向けのワークショップと講演会の様子をご紹介いたします。前編では、楔形文字サークショップの様子をお届けします。

竪穴式住居と楔形文字

今回のイベントは、大阪府和泉市にある、大阪府立弥生文化博物館(以下、弥生博)での平成28年度夏季特別展「世界の文字の物語:ユーラシア 文字のかたち」の、楔形文字関連イベント、という形で開催されました。

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弥生博の外観。のどかな場所

 

弥生博は、その名のとおり、国内の弥生文化全般を広く対象とする博物館です。弥生博に隣接するのは、池上曽根史跡公園。南北1.5km、東西0.6kmの範囲に広がる総面積60万m2に達する、弥生時代の大集落遺跡の一部が史跡整備された広い公園です。掘立柱建物や竪穴式住居に後ろ髪を引かれながら、弥生博へと急ぎます。

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奥にある、掘立柱建物の内部は、見学できるらしい

 

楔形文字にも書き方の癖ってあるのかな?

午前中は、楔形文字ワークショップが開催されました。参加者として、小学生や、古代ローマが専門の学生さん、近所の年配の方など、老若男女が30人程度集まっていました。定員いっぱいの盛況ぶりです。

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粘土の色を選んで着席すると、楔形文字の50音表と割り箸が用意されていました

まずは、山本さんより、楔形文字の概要や成り立ち、言語システム、書き方などについて、スライドを用いて解説していただきました。

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刻み方紹介動画を真剣に眺める参加者のみなさん

その後は実際に、粘土板の作成に入りました。自分で選んだ色の粘土をこねて、好きな形に成形します。そして、50音表を見ながら、自分の名前や好きな言葉など 、思い思いの楔形文字を刻んでいきます。今回は、先端が三角形に加工された割り箸を用いて文字を刻みましたが、楔形文字が用いられていた当時は、葦や竹を使って粘土板や金属板に楔形文字を刻んでいたそうです。

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1画1画丁寧に刻んでいきます

私も体験させていただきました。久しぶりの粘土細工にワクワク。割り箸を用いて文字を刻むのが難しかったです。

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粘土板マグネットのできあがり! さて、何と書いてあるでしょうか

当時の粘土は、泥を水で溶かして作っていたのだろうか? 楔形文字の、個人の書き方の癖ってあるのかな? 葦や竹と割り箸では、どちらが書きやすいのかな? 長い文章を書いたとき、間違ったらどうやって消しているのだろう? などと、自分で粘土をこねて、楔形文字を刻んで初めて考えることがたくさんありました。

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「何を刻まれたのですか?」「自分の名前とね、孫の名前」と来場者同士の会話も弾みます

ワークショップでは、黙々と作業をされる方、友人同士で相談しながら作業される方など、参加者のみなさんが各々夢中になって作成している様子が見受けられました。

プロジェクトのリターンのひとつである、楔形文字講座と重複するところもあるので、詳細な説明は、省略させていただきましたが、リターンの講座では、もう少しじっくり濃い経験ができるはず。参加される方はご期待ください!

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研究者に直接、自分の疑問をぶつけることができるのも、イベントならでは

(後編に続きます)

この記事を書いた人

馬場 翔子
生命科学(修士)。本職は、知的財産関連職ですが、一般市民とアカデミアのよりよい関係を探るべく、記事を書かせていただいています。