academistのプロジェクト「空耳を自動生成するプログラムの開発を進めたい!」のリターンのひとつであるサイエンスカフェが開催されました。今回はクラウドファンディング挑戦者本人である島谷さんに当日の様子をレポートしていただきます。


2019年5月18日(土)に大阪大学豊中キャンパス基礎工学研究科にて、academistで挑戦したクラウドファンディング「空耳自動生成プログラムの開発を進めたい!」の支援者向けサイエンスカフェを行いました。当日は手伝いの方を含め7名にお越しいただき、密度の濃い刺激的な議論を行うことができました。参加者の方からは「盛りだくさんの内容でおもしろかった」「空耳が研究的にもおもしろい題材だと思えた」など、ポジティブな感想をいただくことができました。新たな研究のアイデアが多く提案されるなど、私にとっても非常に有益な場とすることができました。

ロボットのデモンストレーションと空耳自動生成研究の今

トークに入る前のアイスブレークをかねて、私の所属研究室である石黒研究室のロボットのデモンストレーションを行いました。石黒研究室には10種類以上のロボットがいます。そのなかで今回は、社会的対話ロボット「コミュー」および人間酷似型ロボット(アンドロイド)の「ジェミノイドU」が実際に動いたり話したりするところを見てもらいました。参加者の方がアンドロイドの肌に触れ、シリコンの生々しい質感に驚いている姿が印象的でした。

続いて、空耳自動生成研究の進捗と今後の展望についてトークを行いました。最新の替え歌動画デモを披露したあと、研究目的、関連研究、プログラムの動作原理、空耳替え歌のおもしろさの謎を探るために実施した心理評価実験の結果について説明しました。その後、クラウドファンディングをやってよかったこと、今後の展望、ビジネス化の可能性などについても話しました。

支援者から新しい実験のアイデア提案も

参加者のバックグラウンドが、生物研究者、工学研究者、空耳替え歌動画作成者など多様で、かつ年代も20代から70代と幅広かったことが印象的で、そのおかげか各々の観点からアイデアを出し合う非常に密度の濃い議論を行うことができました。研究者と動画作成者の視点が融合した新たな実験のアイデアが提案されるなど、研究者と非研究者が交わるサイエンスカフェならではの場面も見られました。気がつけばフリーディスカッションを含め2時間近くが過ぎていました。

このような場を実現できたことは、クラウドファンディングをやったからこそだと思います。単なる研究費獲得だけに留まらない、研究者と非研究者をつなぐというというクラウドファンディングのもうひとつの重要な役割を感じた瞬間でした。

ゴールデンボンバー「女々しくて」(作詞作曲:鬼龍院翔)の駅名替え歌

講演の締めに、研究についての私の思いを述べました。趣味でスポーツをする人に比べ、趣味で研究をする人が少ないと感じています。一般に研究というと高尚な、職業研究者にしかできないものと思われているように感じます。しかし、空耳自動生成プロジェクトが私の専門分野にとらわれず興味第一で開始されたように、職業や立場に関係なく「ちょっと気になった」から「ちょっと研究する」くらいのノリがもっと世の中にあってもよいのではと考えています。みんながみんな研究者、は極端かもしれませんが、少なくとも今よりは研究の敷居が下がる方向に世の中が進むと嬉しいです。

おわりに

本研究に興味をもち、研究費を支援してくださったみなさまに心より感謝申し上げます。また応援してくださった方、研究の議論に付き合い有益な示唆をくださったみなさまも、ありがとうございます。プラットフォームと挑戦の機会をくださったアカデミスト株式会社のみなさまにも大変感謝しております。引き続き研究していきたく思いますので、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

【クラウドファンディングページはこちら】空耳を自動生成するプログラムの開発を進めたい!

この記事を書いた人

島谷二郎
島谷二郎
大阪大学基礎工学研究科石黒研究室博士後期課程にてロボットを用いたコミュニケーション支援の研究に取り組んでいます。大阪大学理学部を卒業後、人間理解と教育分野への興味から、人間酷似型ロボット(アンドロイド)の先進的研究で知られる石黒研究室に進学しました。人同士が直接関わることが難しい場面にロボットを導入することでどう状況が改善できるか、その背後にあるメカニズムは何かということを調べています。また専門研究以外の時間で、自主研究として、限られた種類の単語で元歌の発音を再現する空耳替え歌の自動生成に取り組んでいます。