「第2の地球」の発見はもう間近?– 興奮が渦巻く系外惑星の世界へご招待
世界を揺るがした大ニュース
2014年4月17日、NASAのケプラー宇宙望遠鏡が「Earth 2.0」の発見を報告します。これは、人類が初めて見つけた、生命を宿す可能性のある太陽系外地球型惑星でした。そして、翌年の2015年7月23日には、再び NASAのケプラー宇宙望遠鏡により、太陽と同じタイプの星の周りで「地球の従兄弟」の発見が報告されました。
これらの発見は、我々人類がついに「地球外生命」について真面目に科学的な議論ができる時代に突入したのだ、ということを示す大ニュースであり、新しい時代の幕開けを告げる記念すべき出来事でした。
本記事では、系外惑星の発見の歴史を振り返りながら、「Earth 2.0」や「地球の従兄弟」が一体何者であるのかについて、簡単に解説をしていきます。そして最後に、私たちが開発した系外惑星データベース「ExoKyoto」について紹介させていただきます。
我々の世界観の大変革を巻き起こす可能性のある系外惑星の世界を、どうぞたっぷりとお楽しみください。
多様な系外惑星の発見
そもそも「系外惑星」というのは、太陽以外の星の周りを回っている惑星のことを指します。初めて系外惑星が見つかったのは、今からわずか20年ほど前、1995年10月のことでした。
その後、世界中で系外惑星探しが精力的に行われていきます。最初は年にせいぜい数個の発見だったものが、わずか10年後には年に数十個、トータルで200個近くの系外惑星が発見されることになりました。我々研究者にとっても、本当に驚くべきペースでした。
さらに、驚くべきはその数だけではありませんでした。発見された惑星のほとんどが、この太陽系の惑星とは全く異なるタイプの惑星だったのです。星のすぐ近く(1年が数日!)を回る木星のようなガス惑星「ホットジュピター」や、とんでもない楕円軌道で星の近く(灼熱)と遠く(極寒)を行ったり来たりしている惑星「エキセントリックプラネット」、はたまた、太陽系には存在しない地球の数倍程度のサイズの惑星「スーパーアース」など、次々と「異形の惑星」たちが発見されていきました。
こうした発見により、太陽系以外にも惑星は普遍的に存在している、ということがわかった一方、系外惑星は非常に多様な姿をしており太陽系もその多様性の中のひとつにすぎない、ということも明らかになってきました。
Kepler宇宙望遠鏡の衝撃
その後も系外惑星の発見数は伸び続けますが、残念ながら発見される惑星のほとんどは、木星や土星のような巨大ガス惑星ばかりでした。しかしこれは、宇宙にはガス惑星ばかりが存在している、ということを意味しているわけではありません。惑星を探す際、大きい惑星ほど見つけやすい、逆に言うと地球のような小さい惑星を見つけるのは非常に困難なため、巨大ガス惑星ばかりが選択的に見つかってしまったのです。
しかし、ほとんどの人にとって系外惑星探査における最大の関心事は「地球のような惑星は他にもあるのか?」でしょう。そこで登場したのが、2009年にNASAによって打ち上げられたKepler宇宙望遠鏡です。
地球上では大気の影響でデータに誤差が乗ってしまいますが、宇宙に出てしまえばほぼ真空の世界なので、より精度の高いデータを得ることができます。Kepler宇宙望遠鏡はこの利点を活かし、地球上の望遠鏡では成し得なかった、より小さな惑星の探索を行いました。
そして打ち上げからわずか数年、Kepler宇宙望遠鏡によって衝撃的な結果が次々と報告されることになります。
まず驚くべきは、その発見数です。あっという間に数千個におよぶ惑星候補天体が発見され、2014年には700個あまりの惑星、2016年には1,300個あまりの惑星が、新たに系外惑星として追加されることになりました。それまで発見できなかった小さなサイズの惑星も、Kepler宇宙望遠鏡により大量に発見されていきます。ミニ海王星サイズ、スーパーアースサイズ、地球サイズ、いずれも発見数は数百個にのぼりました。
そしてさらに驚きだったのは、小さな惑星の方が発見数が多い、ということでした。データをもとに見積もってみたところ、なんと全惑星のうち1/3〜半分ほどが「地球型惑星」だということがわかったのです。
「Earth 2.0」と「地球の従兄弟」
そしてついに「その日」がやってきました。Kepler宇宙望遠鏡が、ハビタブルゾーンに地球型惑星を発見したのです。
「ハビタブルゾーン」(日本語では「生命居住可能領域」とよびます)とは、液体の水が惑星表面に存在できる領域のことを指します。すなわち、ハビタブルゾーンに位置する惑星では、生命の発生や進化が起きる可能性があります。こうした惑星のことを「ハビタブルプラネット」とよびます。
最初に発見された地球サイズのハビタブルプラネットは、Kepler-186fという名前の系外惑星でした。この惑星はサイズが地球とほぼ同じでしたが、中心星が太陽よりも暗い「M型矮星」という別のタイプの星でした。そこで、地球と似てはいるがヴァージョンが異なる、という意味を込めて「Earth 2.0」という名付けがされたようです。
M型矮星は太陽よりも波長の長い赤色光で光っているため、この惑星上にもし植物が存在していたとすると、そうした光を吸収しやすい黒色の光合成色素を持っているかもしれません。
そして次に見つかったのが、Kepler-452bという名前の系外惑星です。今度は中心星は太陽と同じタイプの星でしたが、惑星自体が地球よりもやや大きい、いわゆるスーパーアースとよばれる惑星だったため、太陽系の親戚なんだけどもちょっと大きなお兄ちゃん、ということで「地球の従兄弟」という名付けがされたようです。
スーパーアースは、強い重力で分厚い大気を保持する一方、深い海がほぼ全球を占めている「オーシャンプラネット」になる可能性が高いと予想されます。この場合、陸地はハワイのような列島の形で点在することになるでしょう。
「第2の地球」の発見へ向けて
これまで見てきたとおり、系外惑星についての研究・発見は、わずか20年あまりの間にすさまじい勢いで進展してきました。地球と瓜二つの惑星はまだ見つかっていませんが、この勢いを考えると、「第2の地球」の発見はもう間近だと言っても過言ではないでしょう。
これほどホットで刺激的な系外惑星の世界を、一部の研究者だけのものにしておくのはもったいない。もっと多くの人と、この興奮や感動を共有したい。そうした思いを込めて、私たちは京都大学のメンバーを中心に、系外惑星データベース「ExoKyoto」の開発を行いました。このデータベースは、一般の方向けの記事や解説と共にホームページにて公開していますので、ぜひご覧になってみてください。
「第2の地球」が発見された日、そして「地球外生命」が発見された日、我々人類の世界観・生命観は大きく揺さぶられることになるでしょう。
“その発見は単に全てを変えるのではなく、全てを一度に変えることになるだろう”(Jill Tarter, SETI)
その素晴らしい瞬間を迎える日を、どうぞお楽しみに!
参考文献等
- E. V. Quintana et al., An Earth-Sized Planet in the Habitable Zone of a Cool Star, Science 344, 277 (2014)
- J. M. Jenkins et al., Discovery and Validation of Kepler-452b: A 1.6 R+ Super Earth Exoplanet in the Habitable Zone of a G2 Star, The Astrophysical journal 150:56 (2015)
- M. Mayor & D. Queloz, A Jupiter-mass companion to a solar-type star, Nature 378, 355 (1995)
- Jill Tarter, “Join the SETI search”, TED2009 (2009)
この記事を書いた人
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京都大学 大学院理学研究科 宇宙物理学教室 助教/「我々はどこから来てどこへ行くのか」そうした究極的な問いに答えるため、惑星科学という手法を用いて、惑星と生命の起源と進化についての研究を行っています。
ホームページ:http://sasakitakanori.com
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