Beyond Next Venturesです。私たちは、大学に眠る技術シーズの事業化を、草創期から支えるベンチャーキャピタルです。

日本では、博士号を取得後に、その高度な教育を生かした職に就くことが難しい現状があります。そこで今回は、博士号を取得した方がその技術や経験を生かして起業した例をいくつかご紹介し、博士課程に在籍する方のキャリアの選択肢として起業やスタートアップへの参画があることを知って頂けたら幸いです。

「就職難」と言われてしまう博士卒

文部科学省発表の、平成29年度学士・修士・博士卒業者のうち、進学者を除いて、進路ごとの割合をグラフに示しました。

文部科学省「学校基本調査」を基に作成

「正規の職員等」(就職者のうち、雇用の期間の定めのないものとして就職した職員・従業員・自営業主等をいう。)の割合は、学士課程で81.9%、修士課程で82.4%に対して、博士課程で53.7%となっており、博士課程修了者の進路の不安定さが際立ちます。この要因の一部として、1990年代に博士課程入学者が急増したにも関わらず、大学の職員などの研究者としての受け皿が十分ではなく、研究に関連のある職を見つけたいという需要に応えきれていないことが考えられます。

文部科学省「学校基本調査」を基に作成

高度な教育を受けた博士卒の人材が、専門性を活かした職に就けず、「博士卒は就職難」と揶揄されてしまう状況は、日本にとっても大きな損失なのではないでしょうか。

一つの解決策として、新産業での活躍の場が増える事。つまり、中堅・大手での研究職というキャリア以外に、スタートアップでの中心的な役割での活躍の場が増えることは、今後期待されることです。

今回は、まだまだ特殊なことと思われているかもしれませんが、起業家としてスタートアップを創る側で活躍をされている博士卒の方の事例をご紹介したいと思います。

博士卒で注目を集めるスタートアップ起業家

岡島 礼奈 氏
東京大学大学院 理学系研究科天文学専攻修了 博士(天文学)

博士号取得後、外資系証券銀行での勤務を経て、新興国ビジネスコンサルティング会社の立ち上げに携わり副社長に就任、その後、2011年にALEを設立しました。

人工流れ星の研究開発を行う同社は、世界初の宇宙エンターテイメント企業として注目を集めています。2020年の東京オリンピックでの披露を目指し、2018年にはサービスの運用を開始する予定です。

関水 康伸 氏
東京大学大学院 理学系研究科生物科学専攻修了 博士(理学)

博士号取得後、経営コンサルタントとしての経験などを経て、2015年に東京大学の坂田利弥准教授が発明したセンサ技術を事業化するPROVIGATEの設立に経営者として参画しました。

同社は「知覚拡張センサ」と呼ぶ、自分では感じることのできない体内の信号を感知するセンサ技術によって、健康状態をリアルタイムで把握することを目標としています。

寺田 真介 氏
東京大学大学院 情報理工学系研究科電子情報学専攻修了 博士(情報理工学)

博士号取得後、大手電機メーカーに約3年間勤め、東京大学の客員研究員でもある寺田氏は、2012年にPatheeを設立しました。

例えば、「ソファーのあるカフェ」や「近所で一番安いクリーニング屋さん」を探そうとすると、徒歩数分以内に答えがあるにも関わらず、検索に数十分かかりますが、同社はそれを解決するために空間情報の検索を可能にするサービス「Pathee」を提供しています。

網盛 一郎 氏
米国ブラウン大学院工・材料科学専攻博士課程修了(材料科学)

1994年に東京大学にて修士号を取得後、国内大手メーカーにて勤務。社内留学制度により、2006年に米国ブラウン大学で材料科学の博士号を取得しました。その後、2014年に参画したJST/ERATO「染谷生体調和エレクトロニクス」プロジェクトからスピンオフをし、Xenomaを共同創業しています。

同社のe-skinは、動きを認識するセンサーを搭載する次世代のスマートアパレル製品としてCES等イベントでも注目を集めています。

高橋 祥子 氏
東京大学大学院 応用生命化学科農学生命科学専攻修了 博士(分子生物学)

2003年、高橋氏は博士課程在籍中にジーンクエストを起業しました。自宅に届いたキットに唾液を入れて郵送すると、遺伝子を解析することで得た病気のリスクや体質などの解析結果をWeb上に見ることができるようになる、というサービスを提供しています。

大学院では、遺伝子解析によって糖尿病など生活習慣病の予防メカニズムを明らかにする研究に携わっており、それがサービスへと繋がりました。

鎌田 富久 氏
東京大学大学院理学系研究科情報科学専攻博士課程修了

在学中の1984年、ソフトウェア会社ACCESSを共同創業。同社は携帯向けブラウザで携帯市場と共に成長をし、2001年東証マザーズに上場しました。同社は、Palm OSを開発する 米PalmSourceの買収でも話題を集めました。

2011年に退任をされた後は、技術系スタートアップの起業家を支える支援者として活躍をされています。

博士卒の起業家は、更に求められる時代に

技術が垣根を跨いで融合し、バイオ×データ解析技術、ロボット×医療など、新しいプロダクト・サービスが生まれる中、技術的な理解とビジネス感覚を共に持ち合わせた起業家の存在は重要性を増しています。

その中では、自らのアイディアでの起業だけでなく、研究者との共同創業というパターンも増加しています。

一般の方にとって、イメージの付きづらい技術に対して、ハードルなく取り組めること。そして技術者の気持ちが理解でき、その良さを引き出すコミュニケーションが取りやすいことも起業家としての強みの一つと言えるでしょう。

Beyond Next Venturesは、博士卒として専門的知見をお持ちで、ビジネス領域で挑戦をしたいという方を応援しています。起業家として、共同創業者として挑戦をお考えの方は、お気軽にコンタクトしてください。

(※本記事はBeyond Next VenturesのMediumに掲載された記事を転載したものです)

academistとBeyond Next Venturesは、「異端」の研究者を募集しています。詳しくは下記バナーをClick!

この記事を書いた人

Beyond Next Ventures株式会社
Beyond Next Ventures株式会社
Beyond Next Venturesは、技術系スタートアップへのインキュベーション投資に特化した独立系アクセラレーターです。大学シーズの事業化支援からベンチャー投資、成長支援までに渡る投資経験と運用実績を有する、当分野におけるリーディング企業の1社です。2015年2月に設立した1号ファンド、2018年10月に設立した2号ファンドを合わせて累計100億円超と、アクセラレーターとしては国内最大のファンドを運用し、多数の技術系スタートアップへの投資とその事業化・成長支援を手掛けています。

代表取締役・伊藤毅氏のインタビュー記事はこちら