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五十嵐 大輔

東京理科大学、博士後期課程1年

挑戦期間

2022/05/16 - 2025/03/31

最終活動報告

2024/11/12 10:54:06

活動報告

34回

サポーター

14人

経過時間

2022/05/16 10:00:00

academist Prize第2期の振り返り・研究活動の進捗

みなさま
いつもご支援ありがとうございます.

今回は,約一週間後の5/24に開催されるacadmist Prize 企業賞発表イベントへ向けて,academist Prize第2期の振り返りと,これまでの研究活動の進捗について書きたいと思います.

(注:
研究者あるあるだと思いますがこの投稿の締切直前に慌てて書き上げています.
研究費や助成金の申請書と違って活動報告は字数と紙面の制限が無いのもあり,ダラダラと長い文章になっている気がします.
ところが,どれも簡単に切り捨てられない大事な内容なのでカットせずに感じたことを全部書いています.ぜひお暇な時に適当に読み飛ばしながら読んでください.
)

【academist Prize第2期へ採択されて】

もともと月額支援型プロジェクトにチャレンジした主な動機は,蓄電池の研究に携わる中で (主に私の指導教官・所属研究室が業界で有名・有力ということが大きいですが),新聞社の取材や時々テレビの取材が研究室に入ったりして,EVや再生可能エネルギーの開発に因んだ次世代電池の研究に非常に多くの期待が寄せられているのを感じていたからです.
その中で (これは本来は蓄電池の研究に限った話ではないはずですが) 新しい技術を実現させるための学問の進歩のためには,主体となる研究者と,それを取り巻く社会とのコミュニケーションが重要だろうという思いが強くあり,支援者をはじめとした関係者皆様との双方向的な関係を気付ける活動を何かしたい,という思いでプロジェクトを開設しました.

また,他の多くのPrize第2期チャレンジャーの方と異なり,私はPrize第2期の企画が始まるより少し前からこの月額支援型プロジェクトにチャレンジさせていただいていました.
そのおかげで実は Prize 第1期の終盤のイベントに少しだけ登壇させていただく機会があったりして,academist Prize という企画の雰囲気を少し前から感じることができていました.
Prize 1期の皆さんの中は皆さん研究のアウトリーチに大変熱心で,聞いていてワクワクするような研究の説明がとても上手な方,とにかく情報発信の回数・量が桁違いに多い方など,月額支援プロジェクトのチャレンジャーとして尊敬すべき方々ばかりで,お話させていただいて毎回とても良い刺激になっていました.
そんなPrize 1期生の方々への憧れもあり,acemist運営スタッフの皆様からのお薦めもあり,Prize 第2期へと応募・無事に採択をいただき今に至ります.
Prize第2期イベントもお披露目会「原点とビジョン」,そして来週のイベント「若手研究者と考える『基礎研究の社会実装』」...と数を重ねていますが,毎回会場では選挙カーように「ナトリウム(Na)イオン電池」という電池の名前だけでも覚えてください!と演説(?)しています.何度かイベントに来ている人や同期チャレンジャーには覚えてもらえている気がします.

実際に自分がPrizeのチャレンジャーになって得たものは,やはり人と人との繋がりができたということが圧倒的に一番大きいと思っています.

[1] Prize 第2期生同士のヨコのつながり

Prize 第2期生には私と似た理工系の研究者も多いですが,全く異分野の研究者も多く参加されています.
大学院の博士課程まで来ると同期や周りの学生が全員就職して社会人となり,自分ひとりで研究室へ引きこもりがちな中,研究そのものや研究を取り巻く環境について意見し合い,時には愚痴をこぼせるような人たちとの繋がりができたことはとても大きな経験です.
野口さん中野さんと,同じ化学でも扱う物質がいろいろ違うお互いの研究について込み入った議論ができたり,
高木さんの学問バーのイベントへ遊びに行って研究環境についての話をしたり,
石坂さんと最近何かと話題のSDGsについてのお話をしたり,
渡邉さんと教育やボランティアについての議論をしたりと,
Prizeに参加していなければ絶対につくれなかった繋がりの中で,有意義な議論をして学びを深めていけるのがとても嬉しいです.

[2] イベント参加者の皆様との繋がり

同期チャレンジャーだけでなく,参加者の方々にも会場で様々な声をかけていただき,「面白いコンセプトですね」「この電池はどんな良いところがあるんですか?」といった素朴なご感想をいただけるのがとても嬉しいです.
研究室や学会会場にずっといると周りに電池の専門家しかいないので,自分の研究の意味・意義について,やたら込み入った崇高な意識や高すぎる目標を置いてしまいがちです
(この材料は実際の実用性は微妙だよなぁとか,これしか電圧と容量が出ないんじゃ無駄な実験かも...とか,挙げればキリがありません).
そんな中で,参加者の方に研究の目的とするビジョンに共感や期待をしていただけるのは,大変研究の励みになります.

次回イベントでも,たくさんの方と交流できるのを心から楽しみにしています.

【研究活動】
Prize第2期採択後に行った主な研究と,その成果の発表については次のようなものがあります(発表時の時系列順).
私の場合はPrize第2期採択が博士1年の11月~,現在博士2年の5月ということで,博士課程の研究としてはいろいろなことに手を出してアイデアを発散させていった (いる) 時期に相当すると思っています.
なので結構バラバラな研究テーマを横断的にいろいろ手を付けており,いろいろな学会で毎回違うテーマの内容を発表してきました.
今後は博士論文の執筆等もありますので,順調に進んでいるテーマに少しずつ絞りながら,これまで広げてきた研究をまとめ,収束させていく時期に移っていくかな,というところです.

[1] Naイオン電池の大容量負極材料の開発
→ 2022年9月 ドイツ・ベルリンで開催された国際会議 "Sodium Battery Symposium SBS-3" にてポスター発表
私のプロジェクトページにも主要な研究として概要を掲載していますが,Naイオン電池に溜められるエネルギー量を高めるため,負極に使う材料の容量を大きくしていく研究をずっと続けています.
研究が本格化した修士1年からちょうどコロナ禍も本格化してしまった世代の私としては,博士1年になって初めて国際学会へ現地参加することができました.
会場にはNa電池の研究で有名なヨーロッパの先生が集結していて,講演を聴講して大変勉強になりました.
全くの余談ですが普段から掛けている丸/四角・青/赤メガネのおかげで,イギリスの大学の有名な先生に顔を (というかメガネを) 覚えていただけました.
最近日本でお会いする機会があったのですが,あの学会にいたよね?と言っていただき光栄でした.

[2] 充放電中のLiイオン電池材料中のLiイオン拡散の観測
米国化学会 ACS Applied Energy Materials に論文投稿
→ 理科大・高エネ研等からプレスリリース発表
日刊工業新聞にて紹介されました
こちらは高エネルギー加速器研究機構等との共同研究でずっと続けている研究で,電池材料そのものというよりは電池材料の評価・分析を行うための新しい装置の開発をしているようなイメージの研究です.
充放電している最中の電池を分析する新しい方法を確立しようということで,使用する電気化学セルの設計から行い,測定の試料調製,測定中の電気化学試験や論文投稿用の追加の電気化学試験までを主に私が担当しました.
この時は初めての測定例なのでよく知られている既存のLiイオン電池の物質を使った実験を行いましたが,現在はこれをNaイオン電池・Kイオン電池の材料へと適用する研究に着手しています.

[3] Kイオン電池用電解液の開発
→ 2022年11月 第63回電池討論会にて発表
こちらはKイオン電池用の新しい電解液に関する研究です.Kイオン電池の高電圧化や高出力化に貢献できるかもしれない新しい電解液の開発に取り組みました.
Li電池やNa電池で研究されてきている電解液を真似してKに置き換えたところ,LiやNaには無い意外な面白い性質があることがわかりました.
会場に来ていた他大学の有名な先生方複数名に声を掛けていただき,面白いねと言ってもらえたのが思い出です.
論文投稿に向けて追加実験・原稿執筆中です...

[4] ルビジウム(Rb)と黒鉛との電気化学反応に関する研究
→ 2023年3月 電気化学会第90回大会にて発表
優秀学生講演賞を受賞しました
Liから始まり,Na,K と元素周期表を1つずつ下っていって,興味が出たのでRbという元素を電池っぽく使う研究もやっていました.
学会の電池のセッションで電池っぽい謎の研究を発表するという奇妙な状況でしたが,思っていたより多くの人に興味を持っていただけたようで,初めて大きな学会で賞をいただくことができました.

【今後の目標,展望,課題,etc.】

一番の目的として,研究に関して何らかのアウトリーチができたらいいな!という動機で始めたプロジェクトですので,もっともっと活動報告やTwitter等SNSで発信の機会を増やしていきたいと思います.
なかなか研究も忙しく,というか今まさに忙しく,この活動報告も明日(5/17)から東海村の大強度陽子加速器施設(J-PARC)へ出張して最大連続144時間の測定を行うための実験準備に追われる中,執筆・投稿締切の1時間前に急いで書いている状態なのですが,そんな学生・研究者のリアルな状況こそ発信する価値があるような気がしています.
ちなみに5/24イベント当日のポスターは出張先の東海村の研究者用ドミトリーで作ります.あとイベント当日のお昼ごろに東京へ帰ってくるので,その足で会場入りします!
ポスターを作る時間がちゃんと確保できるようにトラブル無く測定が進むことを祈りつつ,イベント当日を楽しみに待ちたいと思います.

【なんかいい感じの写真】

ときどきイベントのスライドやポスターに載せる写真として使っていますが,実験室で組み立てたNaイオン電池の試作品です.
あくまで大学の実験室レベルなので小さなコイン型の電池で,使う材料の量を節約しながら作っています.
いつかこれが円筒型や角型の大型電池になって世の中で使われるようになったら良いなぁ,というのが電池の研究者みんなの夢です.

五十嵐 大輔 2023/05/16 23:06:24
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