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終了 イカの頭にある「石」からルーツを読み解く

月額支援型

山口忠則

九州大学、博士後期課程3年

挑戦期間

2022/05/16 - 2024/03/29

最終活動報告

2024/03/04 18:45:02

活動報告

25回

サポーター

5人

経過時間

2022/05/16 10:00:00

挑戦者の自己紹介

山口忠則

私は京都大学理学部(動物学専攻)を卒業後、佐賀県に入庁して水産試験場を中心に30年間奉職しましたが、海洋モデリングを学びたくて九州大学大学院に入学したところ、業務との両立が難しく、令和2年度末に自己都合退職しました。現在は通常の学生と同じように研究に専念しています。実は公務員のとき、日本大学通信教育部文理学部でカント哲学を学び、放送大学大学院では科学哲学について研究したこともあります。いろいろ考えることが好きですが、夕方のジョギングと、寝る前のビール1缶、飼い猫(三毛猫)と遊ぶことが日々の楽しみです。イカ以外にも、いま考えていることを交えていろいろ報告しますので、ぜひご支援をお願いいたします。

あなたが研究を通して成し遂げたいことはなんですか?

スルメイカ、ヤリイカ、ケンサキイカ、ホタルイカなど、日本周辺では様々な種類のイカがそれぞれ決まった時期に漁獲されます。しかし、彼らがどこで生まれて、どのようにやって来るかは意外に分かっていません。実は、イカだけでなく回遊魚の多くについても、その再生産の仕組みは明らかになっていないのです。水産生物は海の中を泳ぎ回るため、移動を追跡するのが難しいことに加え、広い海では調査しようにも限界があります。特に近年では、国家間の政治的緊張が高まり、調査困難な海域が拡大しつつあります。彼らの移動や生態をよく理解しなければ、その資源を守ることはできないのに、とても残念です。私はこの困難を乗り越えるため、使える手段はどんな手段を使っても、イカの移動経路を知りたいと思いました。イカの移動を知ることは魚類の移動を知ることにつながるからです。生態系のなかで、イカは強力な捕食者であると同時に、多くの魚にとっては餌生物でもあり、彼らは食う食われるの関係を維持しながら、一団となって大海を移動しています。と、話は大きいですが、まずは先にあげたイカ類のふ化場所や移動経路、再生産の構造を明らかにしていきたいと思います。

どのようなプロセスで実現しようとしていますか?

イカの頭部には平衡石と呼ばれるごく小さな炭酸カルシウムの塊(魚類の耳石に相当)があり、それらは日々成長します。断面に木の年輪のような輪紋が形成されるため、それを計数してふ化日を推定することができます。また、平衡石に含まれる微量元素の成分は個体が生息していた海域の特性が反映され、特にカルシウムに対するストロンチウムの比率(Sr/Ca比)は、経験水温と負の相関があることが知られています。私はケンサキイカの室内試験によってこの関係を定式化したのですが、イカ類については世界で初めてだったようです。これによってイカが経験した水温の履歴を復元できましたが、まだ移動経路を推定することはできません。日本周辺を含む広範囲の、しかも任意の月日の水温分布情報が必要です。幸いにも、現在ではデータ同化技術を用いた海洋数値モデルの進歩で、インターネットで詳細な情報を入手できます。さらに、マイクロプラスチックや軽石の漂流の予測で使われた粒子追跡実験をコンピュータで行うと、想定したふ化場所から実際の漁獲場所までの移動を検証できます。私はこれらの技術を組み合わせてイカ類のふ化場所や移動経路、再生産構造を明らかにします。

現在取り組んでいる研究課題はなんですか?

ケンサキイカに関してはすでに7本の論文を出版し、日本周辺で漁獲される個体の多くは台湾北部(東シナ海南部)でふ化しているという仮説を出しました。その親イカについては東シナ海にいる個体だけなのか、他の海域から来ている個体はいないのか未だ不明ですが、一部の親イカはもっと南の海域から来遊していると考えています。これを明らかにするため、ヤンマー資源循環支援機構からの研究支援を受けて、来年1月にフィリピンとベトナムでケンサキイカのサンプリングを行う予定です。また、スルメイカに関しては、粒子追跡実験の結果と、漁獲量や人工衛星夜間画像の解析結果から、移動経路や産卵場を推定して、論文として投稿します(博士論文の主題)。さらに5月からは、一般財団法人中辻創智社からの研究支援を受け、水産庁から提供されたスルメイカ平衡石のSr/Ca比を分析するつもりです。ヤリイカに関しては、Sr/Ca比の分析は終了しているので、粒子追跡実験で移動経路を検証したあと、論文としてまとめます。ホタルイカに関しても、富山県などと連携して、平衡石の分析を進めていきたいと考えています。このように4種のイカについて並行して研究を進めます。

なぜacademistに挑戦していますか?

水産庁は「日本周辺水域の資源評価」のために水産生物の調査研究を行っていますが、調査水域が日本の排他的経済水域に限られていることと、この事業が国益に資することを目的にしているため、他の国や地域の水域との移動はほとんど考慮されていません。つまりブラックボックス化した水域を放置したまま、移動や分布を想定し、それに基づいて調査や研究を行っているのです。これでは近年の不漁原因を合理的に説明できるわけがありません。また、仮に実効性のある資源管理が行われた場合、当分漁獲量は制限されますから、消費者は今より高い値段の魚を買わなければなりません。消費者が納得して高い魚を買うためには、水産資源に関する信頼のおけるデータや情報が不可欠です。この種の調査や研究の一部については、大学などの第三者機関が「資源税」などの特定財源や、市民からの寄付で行うのもありうる方法の1つです。海からの生態系サービスを世界中で公平公正に持続可能な範囲で利用する未来を想像しながら、一般の方々がどれほど水産資源に関心をもっているか、どれほど資源管理にコミットしてくれるか、それを実感したくてacadimistに挑戦することにしました。

推薦者コメント

広瀬直毅
九州大学応用力学研究所 教授

山口さんの目標であるイカの移動経路、再生産構造の解明には、海洋数値モデルによる海流の解析が不可欠です。そこで、私の専門分野であるデータ同化技術を用いたコンピュータ・シミュレーションを学ぶために九州大学大学院に入学されました。従来の生物学的な手法に加えて、粒子追跡実験などの手法を習得して研究を進めれば、水産業だけではなく、生物資源や生態系、海洋環境の変化に関して極めて重要なインパクトを与える結果が得られるものと私は確信しています。

中島隆太
ミネソタ大学芸術学部 教授

地球温暖化による海水温が上昇は海洋生物の生態や分布に影響を及ぼしています。これにより世界の水産は「食べる水産」から「守る水産」に移行しつつあり、水産資源をいかに管理し持続的な水産業を営むかが課題となっています。本研究は大切な蛋白源である「イカ」を管理する上で非常に重要であると同時に、平衡石の解析という画期的なメソードは、世界のイカ資源管理にも大きく貢献することが期待できます。是非本研究をご支援ください。

岩田容子
東京大学大気海洋研究所 准教授

近年漁業活動や気候変動の影響を受け、水産資源が危機的状況にあることは、多くの報道でも目にすることと思います。私たちが利用している海洋生物は、どこで生まれて、どんな経路を辿ってやってきているのか。極めてシンプルで基本的な問いに思えますが、多くの種でそれすらもわかっていないのが現状で、山口さんは海洋数値モデリングを駆使してその問いに答えようとしています。イカ類の生態を研究する一人として、応援しております。

研究計画

時期 計画
2022年5月 月額支援型クラウドファンディング開始
2022年6月 スルメイカ平衡石のSr/Ca比分析開始
2022年7月 スルメイカ論文(粒子追跡実験)投稿
2022年9月 ヤリイカ論文投稿
2022年10月 ホタルイカ平衡石のSr/Ca比分析開始
2022年11月 水産海洋学会で発表
2022年11月 博士論文執筆開始
2022年12月 スルメイカ論文(Sr/Ca分析)論文投稿
2023年1月 フィリピンとベトナムでケンサキイカのサンプリング
2023年2月 博士論文提出
2024年3月 月額支援クラウドファンディング終了

リターンの説明

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0人が支援しています。

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3,300 円/月 (税込)

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