廣木亮哉:代表 東京科学大学博士後期課程/JSPS DC2 「人間行動気象学」の提唱に向け研究中。研究環境を改善したいという想いから、LabTreeの提案・開発に取り組んでいます。
船岡佳生: 企画運営・研究 日本リベラルアーツ協会合同会社 代表社員。同大学で工学修士号取得後、社会教育と人間理解を基盤に新規事業創出に尽力。課題意識とファシリテーションの経験を活かし、LabTreeに参画。
藤本未来:システムデザイン 慶應義塾大学SFC2022学士卒/東京科学大学博士後期課程1年 可聴化の研究を行っています。学生と先生が両方使いやすいシステムのUI/UXデザインを目指します。
A・SUZUKI:プログラマー 同大学修士課程卒業
研究を進めていく上で重要な要素とは何でしょうか?閃きや高い能力、あるいは忍耐力でしょうか?研究者や学生によって答えは様々かもしれません。私たちは研究を円滑に進めるためには「議論」が重要であると考えています。議論を通して新たな視点が得られ、課題への道筋が見えてくるだけでなく、モチベーションを高めることができます。
しかし.多くの研究室では以下のような課題が存在しています。
・教員は多忙で、学生が十分なフィードバックを受けられない。
・教員から学生の研究の進捗や論点を確認する手間が大きく、きめ細かい指導や継続的な指導が難しい。
・本質的な議論はアカデミックハラスメントのリスクにより、教員も学生も心理的安全性を持った研究議論を行うことが難しい。
このような問題が研究の進展を妨げています。
これらの課題を解決するには、研究室内での「議論」の機会を増やし、「議論」を建設的なものとする必要があります。私たちは、研究における本質的で効率的な「議論」とは何か?を研究し、研究を円滑にするためのシステムを開発することで、研究指導のあり方や教員とのコミュニケーションに悩んだり、非効率的な時間を無くすことを目指します。
フンボルト理念(大学教育において研究が不可欠である)に基づき、大学教育には講義だけでなく適切な研究指導も重要です。しかし、研究指導の質が大学評価に直結していないため、教員の熱意や工夫が報われづらい現状があります。研究室が抱えるコミュニケーションを起因とする課題を解決するためには、研究室内での「議論」の機会を増やし、それを通じて研究の質を高めることが必要です。私たちは、この「議論」を建設的かつ効率的なものにするためのアプリケーション開発を進めています。
私たちは、より良い研究環境を実現するために東京科学大学(旧:東京工業大学)のリーダーシップ教育院で学んだコミュニケーションや組織論の知識を活かし、「本質的で効率的な議論」とは何かを追求してきました。その結果、研究室内の議論を促進するシステムアプリ『LabTree』の開発に至りました。
今後、社会実装に向け以下の活動を行なっていく予定です。
・LabTreeのβ版運用と改善
・研究における議論の深化
・研究議論に関する事例分析とFD活動としての成果報告 など
<これまでの実績>
令和5年度東工大基金による学生スタートアップ支援事業 採択
私たちは、各研究室が抱えている課題を解決するために、以下の課題に取り組んでいます。
・研究室における課題の調査:
旧東京工業大学内で、主に学生を対象とした研究教育に関するアンケート調査を実施しました (n=52)。その結果、約40%の学生が教員とのミスコミュニケーションによって研究の進捗が滞った経験があると回答しました。問題の原因として「教授が忙しすぎる」「指摘が不足している」「定期的な進捗管理がない」などが挙げられました。また、教員からは「学生とコミュニケーションがとりやすくなるような仕組みが欲しい」といった声が聞けました。
今後、LabTreeを広く普及させるためには、様々な分野・大学における実態調査を継続して行うことが求められます。
・アプリケーションLabTreeの開発:
実態調査に基づき、私たちはリーダーシップ教育院やスタートアップ支援事業のサポートを受けながら、ゼロからLabTreeの開発を進めてきました。現在は、アプリケーションの最小限のプロダクト(MVP)の開発に注力していますが、今後さらに仕様やデザインを改善し、実際の研究室で活用できるように改良を続けていく必要があります。
研究室におけるコミュニケーション課題を解決したい
研究は一人で進められるものではなく、教員や先輩からのフィードバックが不可欠です。しかし、質疑やフィードバックを得る機会が限られ、多くの学生が行き詰まっています。この問題は学生だけでなく、多くの研究者や教員にとっても重要なテーマです。そこで私たちは、議論を創造しコミュニケーション課題を解決するためのアプリケーションLabTreeの開発に取り組んできました。
academistを通じて、私たちが開発してきたアプリケーションをより良いものにし、他の研究室でも同様の課題を解決したいと考えています。みなさんのご支援を以下のことに活用していく予定です。
・LabTreeのβ版開発とテスターの募集。
・研究議論に関する事例を分析して知見を集め、FD活動としてその成果報告を社会に発信。
・サービスを作るのがゴールではなく、本当に意味のあるサービスを通してアカデミックに貢献する。
LabTreeが研究環境の改善に役立ち、最終的にはアカデミア全体の研究進展を加速させる未来を実現できると信じています。
大学における研究指導の重要性を実感する一方で、学生一人ひとりと十分に向き合う時間を確保するのが難しい現状があります。その中でLabTreeは、学生だけでなく、このような状況にある教員にとっても心強いツールとなりえるでしょう。オープンな議論や、研究指導をサポートする役割を果たすことで、研究室の可能性をさらに高めることができると期待しています。このプロジェクトが、より多くの研究室に広まり、研究環境を改善する一助となることを強く願っています。
研究室は新しい知識を創る場であると同時に、新しい研究者を育成する場所でもあります。学生は、研究に携わっていく中で「研究者」として成長していきます。
LabTree のようなツールによって、研究室内でのフィードバックが活性化し、1つでも多くの研究室の機能が回復することを期待しています。また、研究活動が可視化されることで、集団で行う研究活動において、人間はいったい何をしているのか、その過程を見られる点からも興味があり、応援しています。
研究課題は独立したものではなく、過去の研究と関係することが多いため、研究手法や資料の引き継ぎが研究室運営では重要です。LabTreeは研究ノートとディスカッション機能を提供しており、この記録が引き継ぎに役立つと考えています。将来の研究者・学生が過去のノートや議論内容を確認することで、当時用いられた手法やポイントを把握し、効率よく研究を進められるでしょう。LabTreeは研究指導をサポートするだけでなく、研究室運営のツールにもなることを期待しています。
時期 | 計画 |
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2024年12月 | 月額支援型クラウドファンディング開始 |
2025年 春 | 研究議論に関するイベント開催(予定) |
2025年 春〜夏 | LabTree β版仮運用と改善 |
2025年 冬 | LabTreeを通した研究発表 |
2026年 冬 | 月額支援型クラウドファンディング終了 (ないし継続の検討) |
近い将来 | LabTreeの本格運用開始 |