近年、肥料や燃料の価格高騰により、農産物生産者の経済環境が悪化しています。加えて生産者の高齢化により、耕作放棄地が増加しているのが現状です。さらに、消費者のあいだではお米や果物離れが進んでいます。静岡県の特産品であるイチゴやメロンもその例外ではありません。一方で、消費者ニーズに応じた新たな加工品開発は、地域の農産物を効果的に活用し、生産者の所得向上と産地の活性化につながる取り組みとして注目されています。
また、発酵食品は腸内環境を改善し、免疫機能を強化するという特性から、コロナ禍において再度注目を浴びています。特に乳酸発酵により作られるヨーグルトの需要は増加傾向にあります。
静岡県農林技術研究所では、県内の豊かな海や地域資源から乳酸菌を分離しその特性を解明してきました。お米を使ったお粥と組み合わせることで、牛乳アレルギーを持つ方や体質的に摂取できない方でも食べられる植物性の発酵食品を作ることができます。
そこで私は、静岡県の特産品であるイチゴやメロンを活用し、乳酸菌とお米を利用してその魅力をさらに引き立てる加工食品の開発を通し、農産物の消費が促進され、地域の活性化につながることを目指しています。
私が開発しているお粥と果汁を混合したものを乳酸発酵させた植物性発酵食品は、乳酸発酵によってヨーグルトに類似した植物性の発酵食品を作り出すことができます。その開発は、以下のプロセスで進める予定です。
1. 有望な乳酸菌を選抜
静岡県農林技術研究所では、県内の豊かな海や地域資源から乳酸菌等を分離し、その特性を評価してきました。なかでも、浜名湖の食用青のりから分離した乳酸菌は、低温で増殖し、発酵原料の抗酸化能を高め、GABA含量を増やすことがわかっています。
2. 新たな発酵食品の試作
お米をお粥状にしたものにイチゴまたはメロン果汁を混合し、選抜した乳酸菌を添加し乳酸発酵させます。乳酸菌の増加とpHの変化を調査し、発酵特性を明らかにします。
3. 試作品の特性調査
試作した発酵食品は、糖酸・硬さ・色・抗酸化機能を調査します。イチゴではポリフェノール、メロンではGABA含量の調査により、果汁の機能性成分の変化も明らかにします。また、試作する発酵食品は、果汁の香りが強くなる可能性があるので、官能調査やガスクロマトグラフ質量分析装置により、その特性を明らかにします。
4. 商品化に向けた課題の抽出
実需者や消費者との意見交換により商品化に向けて課題を抽出します。
先にも述べましたが、お米をはじめとした農産物も牛乳同様に乳酸発酵でき、ヨーグルトに似た発酵食品をつくることができますが、農産物を乳酸発酵させてその変化を解析した研究は少なく、科学的な知見は十分とはいえません。そこで今回は、浜名湖の食用青のりから分離した乳酸菌とお粥を使ってイチゴとメロン発酵食品を試作し、「農産物を乳酸発酵させるとどうなるか」「発酵させた農作物の有効な活用法」を科学的に明らかにします。
下の写真は、メロンとお粥の混合物の発酵前後の比較です。色の変化は明らかで、それに伴い内容成分も変化していることが予想できます。
イチゴには抗酸化物質であるポリフェノール、メロンにはストレス緩和等に効果があるGABAが多く含まれています。乳酸菌による発酵は、農産物が持つ機能性を増強させている可能性があります。また、イチゴ、メロンともに芳醇な香りが特徴ですが、発酵によって優れた香りをより引き出されていることも期待できます。
このように、農作物は発酵により別物といっていいほど、内容成分や香りが変化している可能性があります。このため、従来の農作物の利用法にとらわれることなく、さまざまな可能性を模索したいと考えています。
今回のプロジェクトでは、乳酸菌とお米の力でイチゴやメロンの良さを引き出した新たな発酵食品の開発に取り組みます。試作した発酵食品は、硬さ、色、糖酸含量等の基本的な特性に加え、微生物数、機能性成分の含有量、香り等についても調査します。これらの分析では、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)やガスクロマトグラフ質量分析装置 (GC-MS)という精密機械を用います。分析には高額な試薬等の消耗品の他に、分析機器のメンテナンスも必要です。また、加工品の試作や評価には、原材料費、学会出席や食品加工業者等との打合せに要する旅費等も必要です。皆さんからご支援は、主に上記の用途に充てさせていただきます。
クラウドファンディングは、研究活動資金を集めるだけでなく、研究に関心を寄せ、協力してくれる仲間を広く募ることができます。今回開発を目指す新たな発酵食品を多くの方に召し上がっていただくためには、消費者や生産者の皆様の根強い支援も必要です。今回の取り組みは、さまざまな農作物に応用でき、新たな需要創出やフードロスの解消にもつながる可能性もあります。ご支援のほどよろしくお願いいたします。
研究提案部署の加工技術科は、浜名湖の海藻から分離した乳酸菌がストレス軽減等の機能を有するGABAを増強する特性を解明するとともに、豆乳を原料とした新しい発酵食品の製法を開発した実績があります。また、提案者の村上上席研究員は、未利用果実の新たな加工技術を開発するとともに、地元企業との新商品開発にも意欲的に取組んだ実績があり、クラウドファンディングが成功した後には目標達成に向かって精力的に取組む研究者です。
今回の研究で注目する海洋由来の乳酸菌は、研究・食品応用の事例が少ないものです。提案課題では、この特性を解明しつつ、未利用果物の有効化を図る発酵技術の確立を目指すため、学術面・食品ロスの削減から有益です。また、村上さんは果樹等の栽培現場から要望のあった機能性を活かした商品開発等にも成功しているため、提案課題に関わる十分な実績がある研究者です。
時期 | 計画 |
---|---|
2023年9月 | 試作品の製作、コメと果汁混合物の発酵特性解明 |
2023年10月 | 試作品の色、硬さ、糖酸分析 |
2023年11月 | 試作品の機能性分析 |
2023年12月 | 試作品の試食による官能調査実施 |
2024年1月 | 試作品の香りの分析 |
2024年2月 | 商品化に向けた実需者等との意見交換 |
2024年3月 | 学会等で成果発表 |
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