2022年9月25日10時よりプロジェクトの成果報告会をZOOMで開催いたしました。次のプロジェクトへのつながりについても説明いたしました。
2017年に設立した一般社団法人ラ・プロンジェ深海工学会の設立目的は、「深海に関する学術技芸を考究し、海中観測・作業や機器開発など、深海を含む海中活動に関する普及と振興に関する活動を行うことで、国民の海洋理解の増進に寄与すること」です。
この理念のもと、2017年8月には、五島列島沖合に遠隔操縦式潜水機(ROV)を潜らせることで、海没処分された24艦の潜水艦の現状を明らかにしました(「伊58呂50特定プロジェクト」 )。また2018年には、若狭湾の探索により、Uボート(日本に贈られた「U-511」は「呂500」と改名)を含む3艦の潜水艦と、南シナ海の戦時徴用船「大洋丸」を発見(「大洋丸探索プロジェクト」 )。さらに2021年には、東京湾に墜落した「B-29」爆撃機の調査をしました(「東京湾に墜落した『B-29』を探し出す!」 )。私たちの技術を使い、深海に眠る過去の歴史を再び世に伝えることができました(「立ち上がる伊47潜水艦」)。
2020年には「アルバコア探査プロジェクト」を開始しましたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大により調査活動の延期を余儀なくされました。2022年5月、COVID-19の感染がおさまりつつあることを鑑み、調査活動を再開することにいたしました。
最新鋭の技術によって沈没した艦船を調査することで、深海工学の理解が深まるとともに、歴史的な背景も明らかにすることができます。今回調査する潜水艦「アルバコア」は、太平洋戦争中、アメリカ海軍において77隻建造されたガトー級潜水艦の7番艦で、全長96.3m、4インチ砲1基(艦後部)、20ミリ機銃(艦橋前後部)、21インチ魚雷発射管10基を備えた潜水艦でしたが、1944年11月7日に北海道恵山沖合(下の画像)にて触雷し、沈没したとされています。
海底に沈んでいる艦船のおおよその位置がわかっていない場合、マルチビームソナー(Multi-Beam Echor Sounder:MBES)によって広い海域を長時間かけて調査する必要があります。また、水深が深くなれば、調査データの水平分解能が悪くなるため、艦船であるか、単なる海底の凹凸であるのかの判別が難しくなります。さらに、水深が深い領域の探索には大型のROVが必要となり、ROVを展開するための大型船が必要になります。
このような制限条件と、掛けられる経費とを天秤にかけ、今回の調査ターゲットを絞りました。その結果、沈没位置がすでにおおまかに絞り込まれており、海底までの深さが200m程度であるアルバコアを私たちの5番目のターゲットとして選びました。さらにアルバコアは、航空母艦「大鳳」や軽巡洋艦「天龍」、駆逐艦「大潮」「漣」を沈めるなど、注目すべき潜水艦でもあります。
米国は第二次世界大戦中に52艦の潜水艦を失いました。うち11艦は戦後に発見されましたが、そのなかにアルバコアはありません。アルバコアはいまだ「Eternal Patrol」(永遠のパトロール) 中なのです。下の写真は、テキサスにある太平洋戦争博物館にある碑文です。太平洋艦隊司令長官チェスター・ニミッツがDeeds(功績)と「Eternal Patrol」へのRoll Call(点呼)を記しています。
ちなみに、日本は太平洋戦争中に127艦の潜水艦を失いました。58艦が残存しましたが、戦後海没処分されました。私たちは、その海没処分された潜水艦のうち、27艦を確認しています。
アルバコアの探索計画として、以下のようなフローを考えています。まず、推定される沈没位置の周辺の海底地形をMBESで計測し、不陸(海底の出っ張り)を計測します。このとき、2隻の支援船(えさん漁協椴法華支所に所属する漁船を用船します)を準備して、それぞれにMBES送受波器を取り付けます。一隻は第十八仁栄丸で、ここで調査の指揮をとります。二隻の船は、調査海域を分担して作業を進めます。数m程度と思われる大きな不陸のなかから、アルバコアの候補を絞り込みます。伊58呂50特定プロジェクトでは、水深は200mの海底に鎮座している潜水艦がMBESで見えていました。今回の深度は同程度なので、アルバコアがバラバラになっていなければ、細長い艦の形をデータの中に見ることができるはずです。
2020年の当初計画では、支援船の内の一隻を自律航行船(USV:Unmanned Surface Vehicle)とする予定でした。自律航行船は2021年におこなった東京湾でのB-29の探査に利用しました。しかし、今回は準備が間に合わず、通常の船を利用することにしました。
次いで、第十八仁栄丸からROVを展開して不陸が何であるのかを確認し、撮影します。ROVの位置は、第十八仁栄丸に取り付けられたSSBL(Super Short-BaseLine)方式の音響測位システムによりリアルタイムで計測。撮影した画像をモザイクして、全体像を明らかにします。なお、ROVは呂500調査の時に利用したものを使います。小型なうえに、潮の流れが強いことが懸念されることもあり、ROV調査は困難を極めるものと思います。そこで、今回の調査の成果に基づいて、2022年8月末に大型ROVを利用した再調査も計画しています。
なお、今回の調査がこれまでの調査と大きく異なる点は、MBESを2台使って調査効率をあげ、短時間の内にターゲットを発見しようとしていることです。海底の調査や研究の第一歩は地図を作ることです。そのことの重要性をお示ししたいと思います。
これまでの4回の調査は、クラウドファンディングからの研究費などで賄ってきました。ご支援・ご声援いただいた方々に対してここに改めてお礼申し上げます。利益を求めないボランティアベースによる沈没船調査は、多くの方々からのご協力で行ってこそ意義があるものと考えています。すべての情報を公開し、また、実況中継することで参加意識を高めることが大切であり、今回も同じような考えに立って行います。さらに、今回の調査対象は米国の潜水艦であることから、米国を含め国際的にも支援を受けていきたいと考えています。
調査はボランティアベースで行います。研究費は、用船料、輸送費、交通費、広報費などに使います。私たちの第5回目の調査によろしくご支援、ご声援ください。アルバコアを見つけることができれば、その次の調査へと進んでいけます。私たちが探し出し、その位置と現状を明らかにすべき沈没艦船は、まだたくさんあるのです。
***
なお、本調査はニコニコ生放送にて全編ライブ配信されます。
2022年5月25日(水)早朝からスタート(予定)
【みんなで探そう】北海道沖に沈む「潜水艦アルバコア」海底探索ライブ中継/Finding the Lost Submarine "ALBACORE"
放送スケジュール
5月25日(水)調査1日目
5月26日(木)調査2日目
5月27日(金)予備日
5月28日(土)予備日
※全ての日程で同じURLよりご視聴いただけます
***
時期 | 計画 |
---|---|
2022年5月23日 | 北海道函館市の椴法華港入り。 |
2022年5月24日 | 椴法華港にて第十八仁栄丸に音響機材や通信装置などの取付ける。 |
2022年5月25日 | 第十八仁栄丸と小型漁船でMBES調査を実施。 |
2022年5月26日 | 第十八仁栄丸にROVを積み、発見した不陸に潜らせ、船名を確認。調査終了後帰港。 |
2022年5月27日 | 予備日 |
2022年5月28日 |
予備日
|
今回の調査の様子をまとめた「調査結果概要(PDF)」をお送りいたします。気合いを入れて作成しますので、ぜひご支援ください(画像は「伊58」プロジェクトの表紙の一部です)。また、ご希望の方は調査報告書にお名前を掲載いたします。
調査報告書にお名前掲載 / 調査結果概要(PDF)/ お礼メッセージ
64人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
academist Journalに寄稿する研究報告レポートにお名前を掲載します。
academist Journalに掲載する報告レポートにお名前掲載 / 調査報告書にお名前掲載 / 調査結果概要(PDF)/ お礼メッセージ
85人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
調査終了後、できるだけ早い時期に結果をとりまとめ、報告を兼ねたオンライン講演会を開催します(画像は「伊58」プロジェクトの際の特別報告会の様子です)。当日のアーカイブ動画は参加者の皆さまに限定公開します。
オンライン特別報告会 / academist Journalに掲載する報告レポートにお名前掲載 / 調査報告書にお名前掲載 / 調査結果概要(PDF)/ お礼メッセージ
57人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
調査全体の詳細な報告書をお送りします。ぜひご支援ください!
調査報告書(PDF) / オンライン特別報告会 / academist Journalに掲載する報告レポートにお名前掲載 / 調査報告書にお名前掲載 / 調査結果概要(PDF)/ お礼メッセージ
14人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
水中映像を含め、調査の様子などをダイジェストビデオとしてお送りします。
調査ビデオダイジェスト版 / 調査報告書(PDF) / オンライン特別報告会 / academist Journalに掲載する報告レポートにお名前掲載 / 調査報告書にお名前掲載 / 調査結果概要(PDF)/ お礼メッセージ
3人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
調査結果の詳しいビデオ映像をお送りします。画像は、「伊58」プロジェクトの際のデータ。アルバコアが沈んでいる海域は同じ程度の深さなので、大きく壊れていなければ、このような画像が得られる予定です。
調査ビデオ詳細版 / 調査ビデオダイジェスト版 / 調査報告書(PDF) / オンライン特別報告会 / academist Journalに掲載する報告レポートにお名前掲載 / 調査報告書にお名前掲載 / 調査結果概要(PDF)/ お礼メッセージ
3人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
当サイトは SSL 暗号化通信に対応しております。入力した情報は安全に送信されます。
調査結果概要(PDF)/ お礼メッセージ 他
64
人
が支援しています。
(数量制限なし)
academist Journalに掲載する報告レポートにお名前掲載 他
85
人
が支援しています。
(数量制限なし)
オンライン特別報告会 他
57
人
が支援しています。
(数量制限なし)
調査報告書(PDF) 他
14
人
が支援しています。
(数量制限なし)
調査ビデオダイジェスト版 他
3
人
が支援しています。
(数量制限なし)
調査ビデオ詳細版 他
3
人
が支援しています。
(数量制限なし)