本日、クラウドファンディング最終日に目標額を達成することができました。
御支援して頂きました皆様に感謝申し上げます。
今後は皆様のご期待に沿うことができますように研究に邁進し、この分野の発展に貢献していきたいと思います。
「アズレン」という化合物をご存じでしょうか? アズレンは分子式がC10H8の多環式芳香族化合物のひとつです。アズレン誘導体は人体に対して極めて安全な化合物であることが知られ、副作用のない医薬品として、うがい薬や目薬などの抗炎症薬、胃潰瘍治療薬に利用されています。
アズレン誘導体の物理的な性質のひとつに、「光らない化合物」という点があげられます。一般に多環式芳香族化合物は発光を示すものが多く存在していますが、アズレン誘導体の発光は極めて弱く目視で観測することは困難です。もうひとつの特徴に、色の変化があげられます。pHの変化によって化合物の色調が変化する現象は「ハロクロミズム」とよばれ、たとえば中和滴定の際に用いられるフェノールフタレインは、塩基性で無色から赤紫色に変化するハロクロミズムを示します。アズレン誘導体も、このハロクロミズムを示すという特徴があります。
近年、私たちの研究グループは、ある種のアズレン誘導体が酸性溶液中で顕著なハロクロミズムを示すだけでなく、酸性溶液中でのみ発光することを実験中に偶然発見しました。これまでアズレン誘導体は光らない化合物として考えられてきたため、発光を示すアズレンの開発はほとんど行われておらず、未開拓の領域となっています。
私たちは、このアズレン誘導体の特徴をがん細胞のみを光らせる蛍光プローブに応用できないかと考えました。がん細胞は、正常細胞よりも酸性であることが知られています。私たちが発見したアズレン誘導体は、中性や塩基性では発光を示さず、酸性溶液中のみで強い発光を示すことから、酸性のがん細胞を特異的に光らせる新たな蛍光検出薬の開発につながる可能性があります。これが可能となれば、がんの外科的切除手術において、肉眼では見つけにくい小さながん細胞を光らせ、確実に取り除くことに役立つと期待されます。
しかしながら、私たちが開発したアズレン誘導体が発光を示す酸性度は、がん細胞よりもpHが低いため、がん細胞と同程度の酸性条件(pH 6.5〜6.8)で発光を示すアズレン誘導体の合成が必要です。
また、アズレン誘導体の発光波長にも課題があります。波長の短い光は高いエネルギーを持つため、短波長領域で発光を示すプローブは発光により細胞を損傷してしまう可能性があります。私たちが開発したアズレン誘導体の発光波長は600nmほどですが、細胞へのプローブに応用する場合は、よりエネルギーの低い長波長領域(700nmほど)で発光を示すことが必要です。
本研究は、がん標識への応用を目指して、がん細胞と同程度の酸性条件で発光を示し、かつ長波長領域で発光する新たなアズレン誘導体を開発することを目的とします。その開発指針となるのが、分子の化学修飾です。
私たちはこれまでに、アズレン誘導体の発光波長が分子中の置換基の性質に依存することを明らかにしました。置換基が電子供与性の場合は長波長側、電子求引性の場合は短波長側で発光が観測されることを、アズレン誘導体へさまざまな置換基を導入する合成実験から明らかにしています。この性質を利用して、より長波長領域での吸収および発光を示すアズレン誘導体を開発します。
さらに、がん細胞の酸性条件で特異的に光るアズレン誘導体を開発するために、酸性条件で発光するアズレン誘導体の発光メカニズムとその置換基の効果について検討します。種々の置換基を導入したアズレン誘導体を合成することで、発光を示すpH領域と置換基の関係を明らかにし、その知見にもとづき、がん細胞の酸性条件での発光を示すアズレン誘導体の分子設計と合成方法を検証します。
将来的には、アズレン誘導体の発光メカニズムを解明し、がん細胞の蛍光プローブとして役立てることを目標としています。
ご支援いただいた研究費は、有機合成実験のための有機溶媒や合成用試薬の購入、各種測定経費に充てたいと思います。また、学会発表および論文投稿の際の経費としても使用したいと考えています。
本クラウドファンディングでは、研究費の獲得という点だけではなく、私たちの研究を多くの分野の研究者の方々に知ってもらうことで、将来的に異分野の研究へ発展し、新たな研究分野を開拓できればとも考えています。
今回の研究課題では、pHの変化によって特異的に発光を示す新しい発光性有機分子の開発を目指しています。一般的な発光性の有機分子は固体状態や中性溶液中で発光を示すものがほとんどであり、酸性溶液中でのみ発光を示す分子はあまり知られていません。本研究が発展することで有機化学分野のみならず、医化学分野への波及効果を期待して、研究に取り組んでいきます。
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ご寄附いただいた皆様へ、確定申告により税制上の優遇措置が適用される領収書を信州大学より発行致します。
なお、領収書の日付は、お申込み受付日やカード決済口座からの振替日ではなく、アカデミスト株式会社より信州大学に入金された日付となります。当プロジェクトの終了予定日は2020年12月10日ですが、寄付金入金日は2021年2月の予定です。そのため、寄附金控除も翌年の対象となりますので、予めご了承ください。
【法人・団体様からのご寄附】
・全額損金算入が可能です。(法人税法第37条第3項第2号)
【個人様からのご寄附】
・所得税…寄附金額(総所得金額の40%を上限とする)から2,000円を差し引いた額を、当該年の課税所得から控除することができます。
・個人住民税…信州大学を寄付金控除の対象法人として条例で指定している都道府県・市区町村にお住いの方は、個人住民税の控除を受けることができます。
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時期 | 計画 |
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2020年10月 | クラウドファンディング挑戦 |
2020年11月〜 | アズレンの合成実験と発光測定実験 |
2021年3月 | 学会発表(日本化学会春季年会を予定) |
2021年3月〜 | 論文執筆 |
研究報告レポート(PDF版)をお送りします。レポートでは、本研究を含む発光性アズレン誘導体に関する研究の進捗状況などについて報告します。
研究報告レポート(PDF版) / 寄付金受領証
12人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
アズレンの発光実験動画または実験画像をお送りします。動画や画像では、アズレン誘導体の発光の様子(中性溶液および酸性溶液での発光挙動の変化)などを紹介します。
アズレンの発光実験動画または実験画像 / 研究報告レポート(PDF版) / 寄付金受領証
14人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
研究室ホームページにお名前を掲載します。
研究室ホームページにお名前掲載 / アズレンの発光実験動画または実験画像 / 研究報告レポート(PDF版) / 寄付金受領証
10人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
学会(日本化学会春季年会を予定)での発表資料にお名前を掲載します。また、アズレンの発光サンプルをお送りします。アズレンの発光サンプルは、光らない中性溶液と光る酸性溶液サンプルの2つを予定しています。
学会資料にお名前掲載とアズレンの発光サンプル / 研究室ホームページにお名前掲載 / アズレンの発光実験動画または実験画像 / 研究報告レポート(PDF版) / 寄付金受領証
6人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
論文の謝辞にお名前を掲載します。
論文の謝辞にお名前掲載 / 学会資料にお名前掲載とアズレンの発光サンプル / 研究室ホームページにお名前掲載 / アズレンの発光実験動画または実験画像 / 研究報告レポート(PDF版) / 寄付金受領証
0人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
本研究についての一対一のディスカッションの機会を提供します。ディスカッションのテーマは、アズレンやトロポロン誘導体、π共役系分子の合成などについてお話しできますので、ご要望をお聞かせください。実施はオンラインを予定しています。
個別ディスカッション権 / 論文の謝辞にお名前掲載 / 学会資料にお名前掲載とアズレンの発光サンプル / 研究室ホームページにお名前掲載 / アズレンの発光実験動画または実験画像 / 研究報告レポート(PDF版) / 寄付金受領証
2人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
当サイトは SSL 暗号化通信に対応しております。入力した情報は安全に送信されます。
研究報告レポート(PDF版)、寄付金受領証 他
12
人
が支援しています。
(数量制限なし)
アズレンの発光実験動画または実験画像、寄付金受領証 他
14
人
が支援しています。
(数量制限なし)
研究室ホームページにお名前掲載、寄付金受領証 他
10
人
が支援しています。
(数量制限なし)
学会資料にお名前掲載とアズレンの発光サンプル、寄付金受領証 他
6
人
が支援しています。
(数量制限なし)
論文の謝辞にお名前掲載、寄付金受領証 他
0
人
が支援しています。
(数量制限なし)
個別ディスカッション権、寄付金受領証 他
2
人
が支援しています。
(数量制限なし)