3年間の育苗履歴の中で自信をつけてきた我々だったが、結論から言うと4年目では停滞したと言わざるを得ない。
前年とトライと経験から、苗代作りの前にヘアリーベッチを育て、苗床の窒素を増加させるというアプローチに確信をもったため、この年は全ビニールハウスでこの方式を実施した。しかし、ビニールハウスによって条件が異なり、ヘアリーベッチの生育はかなりバラつき、その生育差がその後のイネの育苗結果に大きく作用し
何事においても”3年目”というのは重要な意味を持つ。
なぜなら1年目は未経験の中でのまっさらなチャレンジ、2年目は1年目を踏まえ改良を加えた上でのチャレンジなので、2年の経験+1度の改良、を踏まえた上でのチャレンジが3年目だからだ。
ここで大きな手応えを掴めたら、自らの改良能力にも自信が持てるが、ここで手応えが掴めないと自分の改良能力に大きな疑問符がつく。そうした意味で、「3度目の正直」という言
とにかくやってみたレベルだった1年目の育苗では以下の課題が出た。
①発芽率が悪く苗箱の欠株が目立つ。
②ハウスの入水口の苗が低温障害で発病する等し死んでしまった。
③ハウス内を歩いた時に苗箱にかけてしまった泥水の中に雑草の種が多く、苗箱から多くの雑草が発生した。
④均平さが甘く、苗箱が苗床に設置していない所は苗が水分を吸収できず枯れてしまった。
以下、それぞれの課題に対しての対応策とそ
稲作においてはほうぼうで”苗半作”とよく言われる。すなわち「良い苗を作ることは、良い米作りの50%を占める」というニュアンスだが、田植え後に後から肥料や農薬を投入しない自然栽培では、良くない苗が出来たらリカバリーは困難だ。すなわち良い苗づくりの重要性は自然栽培ではより大きいと言える。
私は”研究”という立場から農業に携わり始めたが、2018年からは”生産”という立場に身を移し、自然栽培稲作に取
世界中のファーマーにとって、”反収”すなわち「単位面積当たりの収穫量」は必要不可欠な指標だが、自然栽培ファーマーにとってはその重みはより大きくなる。
なぜなら、肥料や農薬を使用した栽培に比べて、自然栽培の反収のバラつきはより大きい傾向があるからだ。
実際、私にとっての初めての米作りは大学キャンパス内の庭園水田の管理を任された農学部3年生の頃のことだが、研究室に代々伝わる「稲作ノート」に従
除草剤というのは革新的なテクノロジーで、その発明によって人類がどれほど農作業から免れたかは筆舌しがたいものがある。とある研究では、除草剤の使用により除草作業時間は約1/50に減少したという報告すらある。(参照→https://www.jcpa.or.jp/qa/a6_18.html)
他方で、近年では様々な背景や理由により(ここでその議論は避けるが)除草剤を使用せずに水稲作を出来ないかというニ
「肥料を投入せずに農業生産を続けると、生産の度に農地の養分が収奪され、最終的には何も作れない場所になる」
というのが、農学における常識です。
農業には「収奪」という前提があるからこそ、その農地の養分を「補填」する施肥の知識・技術が発展してきました。現代農業の高い生産性は、明らかにそうした土壌肥料学の知見に拠っていることは明らかです。
他方で、マイノリティながらも、長期的に施肥をしない水田で
肥料も農薬も使わない米作りに魅せられ、”研究”と”生産”の異なる立場から自然栽培の田んぼに関わり始め早10年の月日が経ちました。
私の農業観のベースは、博士課程の3年間、東日本の100以上の自然栽培農家さんを調査させてもらったことにより出来上がったと思います。その内容の一部は、博士論文(文章最下部参照)にまとめていますが、そこで書ききれていないこと、その後生産現場での実践経験を通じて、加筆や修