「肥料を投入せずに農業生産を続けると、生産の度に農地の養分が収奪され、最終的には何も作れない場所になる」
というのが、農学における常識です。
農業には「収奪」という前提があるからこそ、その農地の養分を「補填」する施肥の知識・技術が発展してきました。現代農業の高い生産性は、明らかにそうした土壌肥料学の知見に拠っていることは明らかです。
他方で、マイノリティながらも、長期的に施肥をしない水田で収穫量が安定的に得られている事例も存在しています。特に滋賀県栗東市の水田は、18年間にわたり収穫量のモニタリングしたデータがあるため、貴重な事例ということが言えます。
論文「Rice Production in Unfertilized Paddy Field : Mechanism of grain production as estimated from nitrogen economy」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/pps1998/5/1/5_1_83/_article/-char/ja/
この無肥料水田では、肥料を与える一般栽培の約80%の収穫量を安定的に生産しているため、生産効率としては極めて優秀(肥料や農薬のコストがないので)と言えるのですが、残念ながら全ての無肥料水田でこのような高いパフォーマンスが見られている訳ではないのです。一般栽培の収穫量の50%を得られていれば及第点、というのが生産現場での相場だと私はみています(地理や気象要因にもよりますが)。
私のこれからの研究活動では、「及第点以下の水田のパフォーマンスをどう上げていくか」にまずは着目し、アプローチをしていきたいと思っています。