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ヒト腸内細菌の定着メカニズムを「腸管モデル」で解明する!

月額支援型 academist Prize 2nd 採択

野村 佳祐

筑波大学、博士後期課程1年

挑戦期間

2022/11/01 - 2026/03/31

最終活動報告

2024/04/17 14:56:34

活動報告

21回

サポーター

9人

経過時間

2022/11/01 10:00:00

2023年3月① 論文紹介「腸内細菌学入門①」

皆様こんにちは!野村佳祐です!

2月ももう終わりですね…。1か月経つのが本当に早い…。
ずっとお約束していた、論文紹介について、今回の投稿から進めていこうと思います!

とは言っても、いきなりコアな論文を紹介されても、その意義が伝わりにくいかなと思ったので、
まずは基礎的な知識として、腸内細菌とは何か、ライトに論じていきたいと思います。
今回の内容のほとんどは、以下の文献から抜粋した内容となります。興味があればご覧ください。

Donaldson, G., Lee, S. & Mazmanian, S. Gut biogeography of the bacterial microbiota. Nat Rev Microbiol 14, 20–32 (2016). https://www.nature.com/articles/nrmicro3552#citeas

【ヒトとともに腸で生きる細菌】
今一度、腸管の位置のおさらいです。
人の消化管の部位を口腔から大まかにまとめると、

口腔→食道→胃→小腸→盲腸(虫垂)・大腸

となり、単純に「腸」というと小腸・盲腸・大腸を指す場合が多いです。

胃では胃酸によってpHが1程度まで下がり、非常に強力な酸性状態となるため、ほとんどの細菌はここで死滅します。ただし、酸に強い乳酸菌などの一部の細菌や、人工的なカプセルなどに包むことで酸との接触を免れた菌は死滅せず、生きたまま小腸より先に到達します。

その後、小腸へ進むにつれ、胃と小腸の間に接続している胆のう・膵臓から胆汁・膵液が分泌される事でpHが中和されていき、さらに口腔とほとんど隔絶されているため外気のガス成分が侵入せず、低酸素状態になっていきます。

この中和されたpHと、低酸素状態の影響で、小腸以降は腸内に特有の細菌、腸内細菌が爆発的に増えていきます。より消化物の流れが遅くなる大腸では細菌数はさらに多くなり、胃付近の消化物1gあたりの細菌数が100細胞ほどであるのに対し、大腸では1兆もの細胞が含まれるとも言われています。また多様な種の細菌が含まれています。そして、大腸で水分を吸収された消化物と腸内細菌の固まりは糞便となり、肛門から外部へ排出されます。

【どんな腸内細菌がいる?】
どんな腸内細菌がいるかは、個々人の生活習慣や遺伝的要因に大きく依存しますが、大まかな傾向があることが知られています。

その前に…生物の分類法について軽く説明する必要があります。
あらゆる生物は、その遺伝子配列の相同性や相違性からグループ分けされ、大きいグループからまとめると、
ドメイン>界(かい)>門(もん)>網(こう)>目(もく)>科(か)>属(ぞく)>種(しゅ)
最も大きなグループ、ドメインは「真核生物(Eukaryota)、細菌(Bacteria)、古細菌(Archaea)」の3種類です。

ヒトの糞便からはこれまでに、688種の細菌と、2種類の古細菌が見つかっています。(PharmD et al.(2015)
存在量で考えても、糞便に含まれる微生物のほとんどは細菌なので、古細菌よりも細菌、つまり「腸内細菌」に着目した研究が多く行われてきました。

腸内細菌は、腸内の部位によって定着する細菌種の構成が異なる事が知られています。

主に栄養吸収を担う小腸では、ヒトが利用可能な栄養素を利用する細菌が多いです( Zoetendal et al. (2012))。
そのため、その働きはヒトの代謝(体内で起こる化学反応)に多大な影響を及ぼし、糖尿病などの代謝異常で起こる生活習慣病の改善・悪化との関連が報告されています(Duca et al.(2021))。

大腸では、小腸を通過する間に代謝されなかった食物繊維を分解できる細菌が多く検出され、一部の細菌種が産生する短鎖脂肪酸は、免疫機能の活性化(Kim et al.(2021))や運動機能向上(Sales et al. (2023))に影響を及ぼす事が知られています。また、消化物の流れが遅い影響で分厚い粘液層が形成され、柔らかい外層と硬い内層で存在する細菌種が異なっており、内層の部分まで入り込めるかどうかが、腸内細菌の定着性の違いに影響を及ぼすと考えられています。

私の研究の話になりますが、腸管モデルは、具体的にはこの大腸の粘液層に着目しており、粘液層が存在する環境で腸内細菌がどのようなメカニズムで定着してゆくか、詳細に解析する事を目指しているのです。

話は変わりますが、小腸と大腸の間にある盲腸は、大腸の入り口付近にあり、小さな袋のような構造をしているため、小腸→大腸の消化物の流れの影響を受けずらく腸内細菌が留まりやすい、いわば「腸内細菌の隠れ家」となっています。その物理的環境の違いから、盲腸には小腸・大腸と異なる細菌種も存在する事が知られています。これと関連して、盲腸を切除すると、腸内細菌の組成が変化し、大腸がんの一員となる事が知られています(Shi et al.(2023))。

他にも盲腸を切除することによる免疫機能の低下も報告されており(Kooji et al. (2016))、盲腸炎の際の治療法として、安易に盲腸を切除する事の危険性が唱えられ始めています。

全体として、腸内には多様な機能を持った細菌が存在し、ヒトの健康と密接に関わっている事がざっくりわかるかと思います。健康に生きていく上で、腸内の細菌の組成を多様に、バランスよく保つことの重要性がわかりますね。

さて、次回の論文紹介では、腸内細菌はどこからやってくる?生まれたときからどう変化していく?人為的なコントロールする事は可能なのか?などの疑問について考えていきます!

【ご連絡】
サポーターの方々や、サポーターになることを検討している方々の声を聴きながら活動していきたいと考えています!ご意見・ご感想・ご質問などがありましたら、nomura.keisuke.sg@alumni.tsukuba.ac.jpまでご連絡下さい!宜しくお願いします!!!

野村佳祐 2023/03/02 12:13:17
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