挑戦期間
2022/11/01 - 2025/03/31
最終活動報告
2024/11/11 22:34:23
活動報告
51回
サポーター
42人
経過時間
2022/11/01 10:00:00
この研究プロジェクトで活用している制約理論(TOC)は非営利組織の経営改善にはよく使われていますが、寄付募集に活用された例は非常に少なく、アクションリサーチとして研究された例はほぼ見られません。
しかし、少し違う分野の非営利組織では、制約理論を使ったアクションリサーチがあります。
たとえば病院の経営改善には制約理論はよく使われており、アクションリサーチも複数報告されています。
その一例が、TOCを眼科病院のオペレーション改善に使った例です。
この論文では、ブラジルのサルヴァドールの病院において、制約理論に基づくごくわずかな打ち手を行うことで、診察できる患者数を1.6倍以上に引き上げています。
詳細は論文をご覧いただきたいのですが、彼らが使ったのはイス3つと、スケジュール変更によるバッファ管理テクニック(制約理論の基本の1つです)でした。
Bacelar-Silva, G. M., Cox, J. F., & Rodrigues, P. (2024). Achieving rapid and significant results in healthcare services by using the theory of constraints. Health Systems, 13(1), 48–61. https://doi.org/10.1080/20476965.2022.2115408
お金をほとんど使わずに、マネジメントを変えるだけで診療キャパシティをこんなに上げられるならば、こんなにありがたいことはないと思います。
これを、寄付募集の世界で展開しようというのが私のアイデアでして、既に実務者としては実例をつくってきました。
https://www.goldratt.co.jp/journal/vol.-007
ただ、制約理論が再現性のある理論だとしても、寄付募集においてどんな条件を揃えたときにその成果が出るのかは、まだよく分かっていないと認識しています。
(逆に、例えば企業のサプライチェーンマネジメント等の分野では、制約理論を使って利益を確保するための知識がかなり蓄積されています。在庫過多にならず、また欠品もしないDynamic Buffer Managementなどが典型です)
冒頭に挙げたアクションリサーチでも、成果が出た後、それを主導した人物の異動によってそれが継続しなかったという後日談が記録されており、制約理論の応用に関する研究も、まだまだ道半ばだと言えます。
しかし、制約理論はスコープの広い理論であり、ごく小さな領域において厳密な因果関係を発見する、というような研究が実務者にとっての魅力があまり大きくないのとは対照的に、これからの社会において「全体最適」をデザインし、マネジメントしていくには非常に適した理論だと考えています。
制約理論をつくりだしたGoldrattはもちろん、アクションリサーチを報告してくれたBacelar-Silvaらの研究を参考にして、自分のプロジェクトを進めているところです。
こうした先人の取り組みの上に、「科学的に再現性のある寄付募集」を確立していくことを目指します。
※今回の写真はunsplashで見つけたSalvadorの街並み(by Marianna Smileyさん)です。ブラジルに住んでいた2002-2003年に旅行したのですが、本当に素敵な街でした。