新規化合物の探索は地道ですが、得られた化合物からさまざまな展望がひらける可能性があります。新規化合物探索の研究を進める青木さんが特に注目するのはキノコ。これまでにキノコからはユニークな構造や生理活性を有した成分が数多く見つかっており、一方で日本に生息するキノコの9割以上が未利用キノコで研究が少ないことから、キノコは新規化合物探索源として非常に魅力的な生物と考えられます。より多くの新規化合物をキノコから探索すべく、新しい化合物探索法の確立を目指す今回のプロジェクトに応援をよろしくお願いします!
天然からの新規化合物探索は新しい医薬品や農薬を開発する創薬分野をはじめ、生物の代謝物から生命現象の解明を目指すメタボロミクス分野などにおいても重要です。特に化合物の単離・構造解析に関わる研究は、成分分析において必須となる化合物の各種スペクトルデータを提供することができ、さらには得られた新規化合物もライブラリとして新規医薬品候補物質の探索に活用することができるため、地道ではありますがさまざまな展望が期待できます。
私は特にキノコに着目して、新規化合物探索の研究を進めています。キノコとは子実体を形成する菌類を総称したものです。これまでにキノコからはユニークな構造や生理活性を有した成分が数多く見つかっており、新規化合物探索源として非常に魅力的な生物です。化合物が単離精製できた瞬間は達成感があり、研究の面白みを感じる瞬間です。そして単離した化合物の構造が分かり、新規化合物であったときの喜びはひとしおです。
日本には推定5000種程度のキノコが生息しているとされていますが、これまで食用や薬用として利用されてきたのはわずか100種程度であり、成分に関する先行研究もそれらに対するものがほとんどです。つまり日本に生息するキノコのうち実に9割以上の種が未利用資源の状態なのです。先行研究の少ない未利用なキノコも新規化合物の探索源として期待できます。
キノコは普段、倒木や土の中で菌糸というカビのような状態で生活しています。そして菌糸は人工的に培養することができ、その培養物からも成分を探索することができます。またこのとき菌糸を育てるための培地の組成などの環境条件を変えると生成する成分も変化します。これを応用した新規化合物探索方法である一系統多化合物法(OSMAC法)が近年糸状菌や放線菌に対してよく用いられています。一方、子実体(キノコ)も栽培時の環境条件によって含まれる成分に違いが生じることが知られています。しかし、この現象を新規化合物探索に応用した例はありません。
よって未利用キノコからの化合物探索と言ってもその方法は単に採集してきた子実体から探すだけではありません。新しい探し方を考え出すことも重要となってくるのです。
(未利用キノコからの化合物探索については前回のクラウドファンディングページ「キノコの知られざる有用性や化学成分の多様性を探索する!」 もご参照ください。)
未利用キノコのなかでも現在私はホウライタケ科のキノコに注目しています。このグループに属するキノコからはこれまでにひときわ珍しい骨格や優れた生理活性を有する新規化合物が多く報告されているにもかかわらず、研究されていない種が数多く存在するからです。これまでにこの科に属するツキヨタケから6種の新規化合物を発見し、論文として発表したほか、現在ヒロヒダタケの成分探索を進めているところです。
また、新しい化合物探索法の確立も目指しており、子実体形成時の環境因子を制御することで化合物を誘導する方法を試みています。この研究を行うにあたりまずはその有効性を検証する必要があることから、短期間で容易に子実体形成を行うヤグラタケというキノコを用いて効率的な栽培方法の検討など準備を進めています。
私は未知の現象を調べて解明することに特段に強い興味と魅力を感じ、大学院に進学しました。天然物の研究を始めるまでは、植物やキノコなどの成分はすでに調べつくされているのではないかという印象を抱いていました。ところが実際に研究に従事してみると実情はまるで逆で、自然界には未だ多くの未知な物質が眠っていることを知り、新規化合物の探索に一層強い興味を感じるようになりました。とりわけ未利用キノコの成分はその大部分の種においてまだ研究がされていないこと、そしてキノコの生態自体も分からないことばかりであることも知り、このような未知であふれたキノコの生態について化学の視点から解明したいと思い博士課程まで進学しました。何よりも自分の好奇心を原動力にして研究を進められることにこの上ない魅力を感じています。
自分の研究内容を発信できる場を作りたい、そして少しでも研究環境良くすることで研究に専念できるようにしたいと思ったことから、今回のacademist Fanclubを立ち上げました。
未利用キノコの研究は食用・薬用キノコと比べると注目される機会が少ないです。一方、優れた医薬品が天然から見つかった物質に由来する例は多くあり、キノコからはこれまでに構造的にも生理活性的にも興味深い新規な化合物が多く見つかっています。したがって、先行研究の少ない未利用キノコに着目して研究を進めていく過程で多くの新規化合物が見つかることが期待されます。
academist Fanclubでいただいたご支援は主に専門書の購入や学会へ参加するにあたって必要となる参加費・交通費・宿泊費などに利用させていただきます。
青木 聡樹(あおきさとき)と申します。山形大学大学院にて修士課程を修了後、岩手大学連合大学院に進学し、現在博士課程3年生です。配属先は山形大学のままです。クラウドファンディングでは多くの方から支援をいただきましたこと、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。趣味は鉱物の収集や読書のほか、野外でキノコを観察するのも好きです。キノコの研究をしていますがたけのこ派です。
(2021年7月追記)2021年4月より岩手大学にて博士研究員となりました。
時期 | 計画 |
---|---|
2020年5月 | academist Fanclub 開始 |
2020年10月頃 | 日本農芸化学会支部会にて発表(予定) |
2021年1月 | 博士論文の提出 |
2021年3月 | 日本農芸化学会年次大会にて発表(予定) |
注目のリターン : 活動報告閲覧権
活動報告閲覧権
Webサイト上の活動報告欄を限定公開し、研究の進捗などを毎月報告いたします!まだ誰も知らない世界を明らかにしていく道のりを一緒に歩んでいただけると嬉しいです。応援よろしくお願いいたします!
0人が支援しています。
(数量制限なし)
注目のリターン : 活動報告閲覧権(500円のリターンと共通)
活動報告閲覧権
Webサイト上の活動報告欄を限定公開し、研究の進捗などを毎月報告いたします!まだ誰も知らない世界を明らかにしていく道のりを一緒に歩んでいただけると嬉しいです。応援よろしくお願いいたします!
0人が支援しています。
(数量制限なし)
注目のリターン : 活動報告閲覧権(500円のリターンと共通)
活動報告閲覧権
Webサイト上の活動報告欄を限定公開し、研究の進捗などを毎月報告いたします!まだ誰も知らない世界を明らかにしていく道のりを一緒に歩んでいただけると嬉しいです。応援よろしくお願いいたします!
0人が支援しています。
(数量制限なし)
0人が支援しています。
(数量制限なし)
0人が支援しています。
(数量制限なし)
0人が支援しています。
(数量制限なし)