私が成し遂げたいことは、救急外来に搬送された終末期患者に救急医療従事者が必要で適切な終末期医療を提供できるようにすることです。終末期とは、治療困難な疾病により残された寿命が1年以内と考えられる時期を指し、終末期医療とは、本人の意思や尊厳を尊重しながら、残された余命を平穏に過ごすことを目的とし、QOLを保つことを目指した医療です。
終末期患者が予期せず救急外来を受診した場合、意識が低下していたり、症状が悪化していたりするため、意思の表出が十分にできないことが多くあります。そのため、平常時の患者・家族の判断と異なる、救急現場に応じた侵襲的な治療を受けてしまう可能性があります。たとえば最近のコロナ禍では、終末期と考えられる患者がCOVID-19に感染し重症化した症例を救急医は多数診察しました。当時は医療資源配分をめぐる問題が生じており、人工呼吸器管理など侵襲的な治療が患者の予後を改善するかどうかを素早く正確に判断する必要があり、終末期医療の重要性が如実に表れていました。
このように予期せず救急外来を受診する終末期患者は、望んだ終末期医療を受けられないことがあります。そのため、救急医は終末期医療を学び、提供する必要がありますが、日本では学ぶ機会が限られています。その結果、侵襲的な治療を実施後に、患者がその医療機器によって生命維持される状態となり、その状態をご覧になった家族から治療の継続を望まない意向が示されることもあります。患者やその家族、さらには救急医療従事者もその状況への善処に苦しむ現状があります。こうした状況を避けるためには、救急医が患者の余命や希望を正確に聴取し、症状緩和を行いながら、適切なタイミングで緩和ケア科に相談し、患者にとって望ましい終末期医療を提供することが重要です。これらの問題を解決したいとの思いから、私は本研究を立案しました。
厚生労働省は、望む医療を前もって考え、家族や医療チームと話し合う取り組みを「人生会議」と定義しています。しかし、日本では人生会議を詳しく話し合った人は1.5%と低く、先述した通り救急外来でさまざまな葛藤が生じています (参照)。私が終末期医療を学んでいなかったころ、重篤な終末期患者に対してできる限りの治療を行いましたが、患者は亡くなりました。家族からは感謝の言葉をいただいた一方で、「もう少し何とかならなかったのか」という発言があり、強い精神的負担を感じました。多くの救急医も似たような経験があると思います。
患者やその家族が望む治療を受けるには人生会議の普及率向上が重要ですが、日本人は「死について考えることを忌避する」傾向があります。たとえば私は祖母に「悪くなった時どうしたい?」と尋ねたところ「縁起でもない」と泣かれたことがあります。人生会議の普及率を上げるにはまだ時間がかかります。しかしこのままでは、急速に高齢化が進む日本で、救急医の負担が増えることが予想され、救急外来で適切な終末期医療を提供できる仕組みづくりは喫緊の課題です。
何か手立てはないかと模索していたところ、大内啓医師と出会いました。大内医師は米国の救急専門医で、終末期医療の研究に精通しています。私の考えを伝えたところ、「EPEC-EM」を日本に導入することを提案されました。私は現在、大内医師の指導のもと、EPEC-EMを調整し、まずは日本の救急医の終末期医療の知識と技術を向上させることを目指しています。
EPEC-EM (Education in Palliative & End-of-Life Care for Emergency Medicine)は、終末期医療の知識と技術を救急医に提供することを目的として米国で開発されたトレーニングコースです。これまでに3,500人以上の指導者を育成し、その指導者のもと26か国で20万人以上が受講しています。
私はEPEC-EMを日本の医療に調整し実施・普及することを目指し、2023年12月から以下のアプローチで研究を進めています。
まず、EPEC-EMの開発責任者であり、本研究の協力者であるDr. Tammie Quest (推薦者) の許可のもと、内容や指導法を分析します。
次に、日本の救急現場に適応可能な内容にカスタマイズするため、日本の文化や医療制度の違いを考慮したプログラムを設計します。これには、日本の救急医が直面する課題を明らかにする必要があります。すでに「悪い知らせの伝え方の日米間の差異」に関する論文を掲載し、コミュニケーションにおいて日米間に大きな差異があることが示唆しています。現在、日本の救急医を対象に半構造化インタビューという手法を用いて、具体的な知識や技術を特定しています。
得られた結果をもとに、今後2年以内にトレーニングコースを開発・実施し、診療にどのような影響を与えるかを調査する予定です。
私がクラウドファンディングに挑戦した主な理由は、「適切な終末期医療を受けられない患者を減らしたい」と「救急医の悩みを解決したい」という強い思いからです。この目標を実現するため、終末期医療の先進国アメリカへの研究留学までにさまざまな困難を乗り越えてきました。何とかしてこのプロジェクトを成功させ、日本の医療・患者・医師に貢献したいと考えています。
また、このプロジェクトを通じて、医療従事者以外の方々と接する機会が増え、救急外来における終末期医療の現状をお話しすると、「え、そんなことになっているの!」と驚かれることが多くありました。確かに、医療従事者でなければ、こうした問題を日常生活で実感することは少ないかもしれません。academist を通じて幅広い方々に研究を公開し、認知していただき、ご意見をいただきたいと思い、この挑戦に踏み切りました。
ご支援は、研究活動に必要な経費や学会費、論文投稿料、そして将来開催予定のトレーニングコースの人件費などに大切に使用させていただきます。応援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
沼田先生は、優れた臨床技術と患者中心のアプローチを持つ非常に有能な救急医です。学術面でも多くの学会発表や論文を発表し、積極的に活躍しています。終末期医療に対する情熱と研究への取り組みは、今後の日本の救急医療に大きく貢献することでしょう。個人としても、医局としても彼のさらなる発展を心から期待し、強く推薦いたします。
沼田先生の日本におけるEPEC-EMの導入プロジェクトは、救急医療における終末期ケアの新たな道を切り開くものであり、私はその成功を強く支持します。私は、米国救急医学における緩和ケア教育の指導者として20年以上の経験を持ち、多くの医師を指導してきました。沼田先生は、日本の医療現場に適した新しい緩和ケア教育プログラムを開発し、その導入を通じて、日本の救急医療の質を大きく向上させると確信しています。彼の取り組みは、日本の高齢化社会において極めて重要な意義を持ち、私は彼を心から推奨いたします。
沼田先生とは2020年に知り合い、以来月1回のミーティングを通じて交流を深めてきました。現在は私の指導のもとで、研究とコース開発に積極的に取り組んでいます。彼の取り組みは、日本の終末期医療における私の認識と合致しており、非常に重要なプロジェクトです。沼田先生が進めるこのプロジェクトに対する熱意と取り組みは非常に素晴らしく、成功を強く願っています。
私は救急外来における終末期や緩和ケアの重要性を実感しており沼田先生の取り組みに強く共感しています。沼田先生とは共に働いた経験があり、その際の熱心で献身的な仕事ぶりや現在の研究分野に対する献身に感動しました。現在、私たちは若手医師が救急外来で必要なコミュニケーションスキルを学べるトレーニングコースを共同で開発しています。これまでの研究や取り組みを元にして新たに取り組もうとしているこのコースは、日本の救急医療にとって非常に重要なものとなります。沼田先生の活動を心から応援しています!
沼田先生とは2017年に聖路加公衆衛生大学院で出会い、2018年には私が責任者を務める連携医療・緩和ケア科で学んでいただきました。彼の熱意と情熱には深く感銘を受け、現在は彼のプロジェクトのアドバイザーを務めています。彼の取り組みは、今後の医療において非常に重要なテーマを扱っています。ぜひともご支援のほど、よろしくお願いいたします。
時期 | 計画 |
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2023年12月 | 日本の救急医に対して半構造化インタビューの開始 |
2024年7月 | ブリガム・アンド・ウィメンズ病院での留学開始 |
2024年9月 | 半構造化インタビュー結果を解析、論文化/EPEC-EMのテキスト、講義スライドの分析を開始 |
2024年10月 | EPEC-EM受講 |
2025年1月 | 日本版EPEC-EMをオンラインでトライアル開催、診療の変化を調査 |
2025年5月 | 米国救急学会である、The Society for Academic Emergency Medicine (フィラデルフィア)にて学会発表 |
2025年7月 | 日本版EPEC-EMを本格開催 (聖マリアンナ医科大学) 随時開催を検討 |
2025年10月 | 第53回日本救急医学会総会・学術集会 で成果の報告 |
メールでお礼のメッセージをお送りします。
お礼のメッセージ
リターン | 実施予定日 |
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お礼のメッセージ | 2025年02月 |
12人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
academist Journalに寄稿する研究報告レポートにお名前を掲載します。
このリターン実施は2025年10月を予定しています。
研究報告レポートにお名前掲載 / お礼のメッセージ
リターン | 実施予定日 |
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お礼のメッセージ | 2025年02月 |
49人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
本プロジェクトに関するオンラインサイエンスカフェにご招待します。
このリターン実施は2024年12月を予定しています。
オンラインサイエンスカフェ / お礼のメッセージ / 研究報告レポートにお名前掲載
リターン | 実施予定日 |
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オンラインサイエンスカフェ | 2024年12月 |
お礼のメッセージ | 2025年02月 |
7人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
論文謝辞にお名前を掲載させていただきます。
論文謝辞にお名前掲載 / お礼のメッセージ / 研究報告レポートにお名前掲載 / オンラインサイエンスカフェ
リターン | 実施予定日 |
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お礼のメッセージ | 2025年02月 |
オンラインサイエンスカフェ | 2024年12月 |
11人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
寄付のお返しとして、個別にディスカッションする機会を設けさせていただきます。具体的な内容や日程は個別にご相談させていただきます。内容としては、研究内容、留学に関する体験談、助成金の取得方法、そして「人生会議」についての一般的なお話など、幅広いテーマに対応いたします。ご要望にできる限りお応えいたします。2025年2月以降を予定しております。
個別ディスカッション / お礼のメッセージ / 研究報告レポートにお名前掲載 / オンラインサイエンスカフェ / 論文謝辞にお名前掲載
リターン | 実施予定日 |
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個別ディスカッション | 2025年02月 |
お礼のメッセージ | 2025年02月 |
オンラインサイエンスカフェ | 2024年12月 |
2人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
本研究に関する出張講義を行います。具体的な内容や日程は個別にご相談いたします。
※宿泊費・交通費は別途いただきます。
このリターン実施は帰国予定の2025年7月以降を予定しています。
出張講義 / お礼のメッセージ / 研究報告レポートにお名前掲載 / オンラインサイエンスカフェ / 論文謝辞にお名前掲載 / 個別ディスカッション
リターン | 実施予定日 |
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お礼のメッセージ | 2025年02月 |
オンラインサイエンスカフェ | 2024年12月 |
個別ディスカッション | 2025年02月 |
0人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
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