2017年に設立した一般社団法人ラ・プロンジェ深海工学会の設立目的は、「深海に関する学術技芸を考究し、海中観測・作業や機器開発など、深海を含む海中活動に関する普及と振興に関する活動を行うことで、国民の海洋理解の増進に寄与すること」です。
この理念のもと、2017年8月には、五島列島沖合に遠隔操縦式潜水機(ROV)を潜らせることで、海没処分された24艦の潜水艦の現状を明らかにしました(「伊58呂50特定プロジェクト」 )。また2018年には、若狭湾沖の探索により、Uボート(日本に贈られた「U-511」は「呂500」と改名)を含む3艦の潜水艦と南シナ海の戦時徴用船「大洋丸」を発見(「大洋丸探索プロジェクト」 )。私たちの技術を使い、深海に眠る過去の歴史を再び世に伝えることができました(「立ち上がる伊47潜水艦」)。
最新鋭の技術によって沈没した艦船を調査することで、深海工学の理解が深まるとともに、歴史的な背景も明らかにすることができます。今回調査する潜水艦「アルバコア」は、太平洋戦争中、アメリカ海軍において77隻建造されたガトー級潜水艦の7番艦で、全長96.3m、4インチ砲1基(艦後部)、20ミリ機銃(艦橋前後部)、21インチ魚雷発射管10基を備えた潜水艦でしたが、1944年11月7日に北海道恵山沖合(下の画像)にて触雷し、沈没したとされています。
海底に沈んでいる艦船のおおよその位置がわかっていない場合、マルチビームソナー(Multi-Beam Echor Sounder:MBES)によって広い海域を長時間かけて調査する必要があります。また、水深が深くなれば、調査データの水平分解能が悪くなるため、艦船であるか、単なる海底の凹凸であるのかの判別が難しくなります。さらに、水深が深い領域の探索には大型のROVが必要となり、ROVを展開するための大型船が必要になります。
このような制限条件と、掛けられる経費とを天秤にかけ、今回の調査ターゲットを絞りました。その結果、沈没位置がすでにおおまかに絞り込まれており、海底までの深さが200m程度であるアルバコアを私たちの4番目のターゲットとして選びました。さらにアルバコアは、航空母艦「大鳳」や軽巡洋艦「天龍」、駆逐艦「大潮」「漣」を沈めるなど、注目すべき潜水艦でもあります。
米国は第二次世界大戦中に52艦の潜水艦を失いました。うち11艦は戦後に発見されましたが、そのなかにアルバコアはありません。アルバコアはいまだ「Eternal Patrol」 中なのです。下の写真は、テキサスにある太平洋戦争博物館にある碑文です。太平洋艦隊司令長官チェスター・ニミッツがDeeds(功績)と「Eternal Patrol」へのRoll Call(点呼)を記しています。
ちなみに、日本は太平洋戦争中に127艦の潜水艦を失いました。58艦が残存しましたが、戦後海没処分されました。私たちは、その海没処分された潜水艦のうち、27艦を確認しています。
アルバコアの探索計画として、以下のようなフローを考えています。まず、推定される沈没位置の周辺の海底地形をMBESで計測し、不陸(海底の出っ張り)を計測します。このとき、MBESなどの計測機器は、自律航行無人船(USV:Unmanned Surface Vehicle)および小型船(第十八仁栄丸)に取り付け、遠隔操縦あるいは自動で計測します(下イラスト)。次に、小型船から曳航体(サイドスキャンソナー)を曳き、海底の映像を取得し、人工物を探索します。その後、数m程度と思われる大きな不陸のなかから、候補を絞り込みます。アルバコアがバラバラになっていなければ、細長い艦の形をデータの中に見ることができるはずです。
次いで、小型船からROVを展開して不陸が何であるのかを確認し、撮影します。ROVの位置は、小型船に取り付けられたSSBL(Super Short-BaseLine)方式の音響測位システムによりリアルタイムで計測。撮影した画像をモザイクして、全体像を明らかにします。
なお、今回の調査がこれまでの調査と大きく異なる点は、MBES調査において効率をあげるためにUSVを導入し、短時間の内にターゲットを発見しようとしていることです。USVと小型船の2台体制で海域を分担して調査することで、調査効率は2倍になるのです。このようにUSVを利用して海底探索の効率を上げる調査の実施は、今後の深海研究の先駆けとなるものです。
これまでの3回の調査は、クラウドファンディングからの研究費などで賄ってきました。ご支援・ご声援いただいた方々に対してここに改めてお礼申し上げます。利益を求めないボランティアベースによる沈没船調査は、多くの方々からのご協力で行ってこそ意義があるものと考えています。すべての情報を公開し、また、実況中継することで参加意識を高めることが大切であり、今回も同じような考えに立って行います。さらに、今回の調査対象は米国の潜水艦であることから、米国を含め国際的にも支援を受けていきたいと考えています。
調査はボランティアベースで行います。研究費は、用船料、輸送費、交通費、広報費などに使います(下の画像は、今回の探索で使用予定のUSVです)。私たちの第4回目の調査によろしくご支援、ご声援ください。アルバコアを見つけることができれば、その次の調査へと進んでいけます。私たちが探し出し、その位置と現状を明らかにすべき沈没艦船は、まだたくさんあるのです。
時期 | 計画 |
---|---|
2020年8月24日 | 北海道函館市の椴法華港入り。 |
2020年8月25日 | 椴法華港にて第十八仁栄丸に音響機材や通信装置などの取付けおよび無人船の搭載を行う。 |
2020年8月26日 | 第十八仁栄丸で調査海域に無人船を運び、クレーンで海面に降ろし、自動航行でMBES調査を実施。同時に、第十八仁栄丸でも MBES 調査を行う。 |
2020年8月27日 | 無人船については、第2日と同様。必要に応じて曳航体を用いてサイドスキャン計測を行う。 |
2020年8月28日 |
第十八仁栄丸にROVを積み、発見した不陸に潜らせ、船名を確認。調査終了後帰港。
|
今回の調査の様子をまとめた「調査報告レポート(電子版)」をお送りいたします。気合いを入れて作成しますので、ぜひご支援ください(画像は「伊58」プロジェクトの表紙の一部です)。
調査結果概要(PDF) / お礼メッセージ
3人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
調査全体の詳細な報告書をお送りします。ぜひご支援ください!
お礼メッセージ / 調査結果概要(PDF) / 調査報告詳細版(PDF)
72人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
調査終了後、できるだけ早い時期に結果をとりまとめ、報告を兼ねた講演会を開催します。東京都内において夕刻に行う予定です(画像は「伊58」プロジェクトの際の特別報告会の様子です)。また当日の様子はZoomで配信し、当日のアーカイブ動画は参加者の皆さまに限定公開しますので、遠方の方もふるってご参加ください。
お礼メッセージ / 調査結果概要(PDF) / 調査報告詳細版(PDF) / 特別報告会(@東京)参加券
30人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
10月ごろの土曜日、皆様とオンライン飲み会をいたしましょう。アルバコアにまつわる話、調査の裏話や、今後の展望、皆様のご要望などを話しながら、大いに飲み、大いに盛り上がりましょう。1回の飲み会の参加者を10名程度にして、数回にわたって開催します。潤滑油(飲料)と添加剤(ツマミ)は各自の持参です。
お礼メッセージ / 調査結果概要(PDF) / 調査報告詳細版(PDF) / 特別報告会(@東京)参加券 / 海中調査技術に関する裏話も聞ける! オンライン飲み会参加券
1人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
水中映像を含め、調査の様子などをダイジェストビデオとしてお送りします。
お礼メッセージ / 調査結果概要(PDF) / 調査報告詳細版(PDF) / 特別報告会(@東京)参加券 / 海中調査技術に関する裏話も聞ける! オンライン飲み会参加券 / 調査ビデオダイジェスト版
5人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
調査結果の詳しいビデオ映像をお送りします。画像は、「伊58」プロジェクトの際のデータ。アルバコアが沈んでいる海域は同じ程度の深さなので、大きく壊れていなければ、このような画像が得られる予定です。
お礼メッセージ / 調査結果概要(PDF) / 調査報告詳細版(PDF) / 特別報告会(@東京)参加券 / 海中調査技術に関する裏話も聞ける! オンライン飲み会参加券 / 調査ビデオダイジェスト版 / 調査ビデオ詳細版
0人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
当サイトは SSL 暗号化通信に対応しております。入力した情報は安全に送信されます。
調査結果概要(PDF)/お礼メッセージ
3
人
が支援しています。
(数量制限なし)
調査報告詳細版(PDF) 他
72
人
が支援しています。
(数量制限なし)
特別報告会(@東京)参加券 他
30
人
が支援しています。
(数量制限なし)
海中調査技術に関する裏話も聞ける! オンライン飲み会参加券 他
1
人
が支援しています。
(数量制限なし)
調査ビデオダイジェスト版 他
5
人
が支援しています。
(数量制限なし)
調査ビデオ詳細版 他
0
人
が支援しています。
(数量制限なし)