田中奈穂美
近年、デートDVやリベンジポルノなど恋愛関係における問題がメディアで多く取り扱われるようになっています。牛窪恵さんの著書『恋愛をしない若者たち』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)では、若者の恋愛阻害要因として、恋愛リスクの露呈と若者のリスク回避を指摘しています。具体的には、1990年代にエイズ(HIV感染症)などの性感染症が取り扱われ、その後セクハラやDV、リベンジポルノなど多くの恋愛に関するリスクが露呈し、若者はこれを回避するために恋愛をしない選択を取っていると述べられています。
恋愛における性や性感染症に関するリスクについては、徐々に心理学の分野でも研究されるようになってきています。しかし私は、青年が捉えているリスクはデートDVなどの犯罪的なものから、恋愛でお金を浪費することや自分の時間が無くなるなど日常的なものまで多岐に渡るのではないかと考えます。また恋愛といっても、実際に交際しているときや、片想い・誰かに好意を寄せられている、交際相手と別れた、恋愛をしていないときなど状況はさまざまあり、状況によってリスクと捉えるものは異なると予想されます。
先行研究(※)において、青年が恋人を欲しいと思わない理由のひとつに「恋愛をすると負担がかかる」というリスク回避的思考があることが示されています。また、日本性教育協会の『青少年の性行動全国調査報告』では、リスクの観点から若者の恋愛や性行動にみられる消極化傾向が考察されており、「恋愛や性が自由化され、異性との接触機会が増えたことによって、自分自身の選択にシビアにならなければならない状況がうまれてきたことが大きな要因である」と結論付けられています。しかし、具体的に恋愛の何が青年にとってリスクになっているのかは、明らかになっていません。
そこで、私は実際に青年が恋愛に関して何をリスクであると考え(恋愛リスク認知)、またそれに対してどの程度脅威に感じているのか、 それは年齢によってどう違うのかを調査することにしました。この調査結果を用いることで、青年自身が恋愛に対するリスクを客観的に捉えることができるのではないかと思っています。
(※)高坂康雅, "恋人を欲しいと思わない青年"の心理的特徴の検討, 青年心理学研究, 23, 2 (2011) など
これまでに私は、青年の恋愛リスク認知を明らかにするため、
1. 交際前:片思いをしている、あるいは誰かから好意を寄せられている
2. 交際中:誰かと交際をしている
3. 交際後:交際相手と別れた
4. 非恋愛:誰とも付き合っておらず、好意を寄せている相手もいない
の4つの状況にわけて調査を行ってきました。
その結果恋愛に対するリスクとして、交際前では「告白しても振られるかもしれない」「恋愛に気を取られて他のことに手が付かない」など計87個が挙げられました。また、交際中では「交際相手の嫌なところが目につく」「お金や時間を消費する」「浮気をされる」などの計103個、交際後では「支え合える存在がいなくなる」「別れたことについて他者から話を求められる」などの計91個のリスクが得られています。非恋愛においても「恋愛をするメリットを体験できない」「子孫を残すことができない」など計80個の記述がありました。
次に青年が恋愛リスク認知に対し、どの程度脅威に感じているかを尋ねるためのアンケート(恋愛に関するリスク認知尺度)を作成し、信頼性(結果が安定しているか)と妥当性(測りたいと思っているものが的確に測れているか)の検討を行いました。質問項目など観測された変数がどのような潜在的な因子から影響を受けているかを探る因子分析を行い、既存の尺度との相関係数を算出した結果、恋愛に関するリスク認知尺度は、十分な信頼性と妥当性があることを確認しています。その他、性別や恋人の有無、交際経験の有無で、恋愛リスク認知を比較検討する研究も行なっています。
以上の研究データをもとに今後は、高校生、大学生、社会人を対象に恋愛に関するリスク認知尺度を尋ね、年齢によってどのように変わるのかを検討したいと考えています。具体的には、80問程度の調査用紙を作成し、900人を対象に調査を実施します。この際、年齢によるリスク認知変化を明らかにするため、発達段階などの研究に使われる「時間的展望体験尺度」と「モラトリアム分類尺度」を用い、将来に対する見通しやアイデンティティの発達が恋愛リスク認知に与える影響を調べます。
高校生・大学生対象の調査は実施する目処がたっていますが、社会人への調査は、調査会社に依頼する必要があり、費用の関係で予定が組み立てられていない状況です。いただいたご支援は、社会人を対象とした調査費に利用したいと考えています。
このような恋愛に関するリスクを研究テーマに選んだのは、私自身が恋愛に対しリスクを感じており、恋愛をする気力が持てないことが理由です。恋愛では、交際する前から別れた後までリスクとなり得るものが多く、もう恋愛はしたくないと考える人がいる一方で、恋愛をしない、できないことで虚無感や劣等感や焦燥感を覚える人もいると考えています。
本研究によって青年の恋愛リスク認知の実態を明らかにできれば、恋愛をしたいと思っているにも関わらず消極的になってしまう人の後押しや若年層(中学生)に向けたリスク予防教育につながるほか、恋愛による心身の危険や精神的苦痛を回避するための知見が得られると思います。ご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします。
中村悠里恵
時期 | 計画 |
---|---|
2019年7月 | クラウドファンディング挑戦 |
2019年8月 | クラウドファンディング終了 |
2019年9月 | 教育心理学会にて学会発表 |
2019年12月 | 青年心理学会にて学会発表 |
2020年1月 | 修士論文提出予定 |
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