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渡邉文隆

京都大学、特定准教授

挑戦期間

2022/11/01 - 2027/10/31

最終活動報告

2025/05/19 20:35:28

活動報告

58回

サポーター

38人

経過時間

2022/11/01 10:00:00

#47 高齢層と寄付についての研究をご紹介

最近、風邪の治りがめっぽう悪く、中高年に足を踏み入れているな…と感じる渡邉です。

さて今日は、いくつか高齢層の方々と寄付の関連について、研究をレビューしていこうと思います。

研究への寄付募集、特に高額寄付の募集を考える時に、保有する資産額が多い傾向のある高齢層の方々は、非常に重要な存在だからです。

寄付行動は幸福につながる(Dunn et al., 2020)といわれておりますが、高齢層は寄付からより大きな感情的メリットを得る(Bjälkebring et al., 2016)ということが指摘されています。

やはり、年を重ねて人間性が円熟していくると、寄付の価値がより感じ取れるようになるのでしょうか。

また、寄付は高齢者の運動を促すインセンティブとしても機能します(Harkins et al., 2017; Raposo et al., 2021)。

例えば、たくさん歩くことで、スポンサー企業が(その人が応援したい団体に)寄付をする、などの仕組みに好意的に反応するのは、若年層よりも高齢層だろうと予想できます。

高齢層の認知能力の維持にも、向社会的行動は好影響だと考えられています(Farmer et al., 2025)。

運動し機能や認知機能を維持・向上するということは高齢になるにつれて重要でしょうから、これも相性が良いと言えます。

一方で、高齢者のデジタルデバイドは、健康に関する情報の取得を妨げる(Fang et al., 2024)ことが知られています。

寄付においても、申込時のインターフェイスが使いづらくて寄付をあきらめる高齢の方は多くおられます。

そのような中、生成AIが高齢者のデジタルデバイドを解決する可能性があります。

「あなたをどう使ったら良いですか?」と質問したら答えてくれるスマートフォン。今や夢ではありませんよね。

サービス設計においては、高齢者との共創がポイント(Chan et al., 2024)とのこと。

自分が年々高齢層に近づくことも、「ひとり共創」、つまり自分自身が「顧客」に近づくことができるという意味では、悪くないなと思うこのごろです。

しかし、認知機能などが関わってくると、心理学を越えて老年学、医学などの論文が少しずつ入ってきて大変ですね。

生成AIなどを使いつつも、AIが出してくるトンデモ回答に注意しつつ、論文のカバーを増やしていきたいところです。

<文献リスト>
Bjälkebring, P., Västfjäll, D., Dickert, S., & Slovic, P. (2016). Greater Emotional Gain from Giving in Older Adults: Age-Related Positivity Bias in Charitable Giving. Frontiers in Psychology, 7, 846. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2016.01075

Chan, S., Liu, R., Ostrowski, A. K., Vaidya, M., Brady, S., Yoquinto, L., D’Ambrosio, L., Zulfikar, W., Maniar, N., Patskanick, T., Leong, J., Kosmyna, N., Coughlin, J., & Maes, P. (2024). Co-designing Generative AI Technologies with Older Adults to Support Daily Tasks. An MIT Exploration of Generative AI. https://doi.org/10.21428/e4baedd9.4f2a95fc

Dunn, E. W., Whillans, A. V., Norton, M. I., & Aknin, L. B. (2020). Prosocial spending and buying time: Money as a tool for increasing subjective well-being. Advances in Experimental Social Psychology, 61, 67–126. https://doi.org/10.1016/bs.aesp.2019.09.001

Fang, Z., Liu, Y., & Peng, B. (2024). Empowering older adults: Bridging the digital divide in online health information seeking. Humanities and Social Sciences Communications, 11(1), 1–11. https://doi.org/10.1057/s41599-024-04312-7

Farmer, J. G., Macchia, L., Bu, F., Gong, J., Steptoe, A., Demakakos, P., & Kubzansky, L. D. (2025). Prosocial Intentions and Subsequent Cognitive Health: A Prospective Cohort Study. The Journals of Gerontology: Series B, 80(3), gbaf004. https://doi.org/10.1093/geronb/gbaf004

Harkins, K. A., Kullgren, J. T., Bellamy, S. L., Karlawish, J., & Glanz, K. (2017). A Trial of Financial and Social Incentives to Increase Older Adults’ Walking. American Journal of Preventive Medicine, 52(5), e123–e130. https://doi.org/10.1016/j.amepre.2016.11.011

Raposo, S., Hogan, C. L., Barnes, J. T., Chemudupati, T., & Carstensen, L. L. (2021). Leveraging goals to incentivize healthful behaviors across adulthood. Psychology and Aging, 36(1), 57–68. https://doi.org/10.1037/pag0000428

※利用したのは、UnsplashのMark Timberlakeが撮影した写真です。

Fumitaka Watanabe 2025/05/19 20:35:28
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