今回はタイトルにあるように塩と砂糖について話そうと思ったのですが、これがつまらない……時計と自動車は歴史的なストーリーがあって興味深かったのですが、塩と砂糖はそれがない!データとしては醤油・味噌・鍋・茶碗も入力しましたが、面白いのは醤油くらいですね。というのことで後半は醤油の話をするとして前半はデータ全体の進捗についてです。
データが溜まってきたのは嬉しいのですが、やはり問題にぶち当たりました。史学系の先行研究で既に言われているように、時代が変わるとお金の単位やモノの価値が変わるので比較が困難という問題です。経済学などであれば物価指数などを用いて一律的に通時的に捉える試みがあります。私の研究では財の社会分布を用いて一律的に通時的に捉えようとするわけです。この実践をまだやっていないために、今回の塩や砂糖などの数値データのみの場合は面白みが出てこないわけです。ということでライブ配信(これも無料一般公開の予定)まであと4日……なんとかチャレンジしてみます!
また財の発生~消滅過程を生物の発生~絶滅過程と対比することが私の理論の特徴です。これまでの知見から、それぞれの財は生産量が少ない内は奢侈品として分布し、生産量が増えてくると廉価品を含めた様々なバリエーションが出現してきます。このバリエーションの発生は種の分化とニッチ戦略(棲み分け・食い分け)として捉えることができそうです。ただこうした財の動きは文章で書くことは困難なので、やはり最近停滞しているアニメーション/シミュレーションとしてグラフを動かして表現する必要があります。こちらは長期戦になりそうですが、ひとまずは古代~現代までのそれぞれの財の通時的変化をきっちり抑えてからぼちぼちやっていきたいなと思います。
さて最後に醤油のお話をして5月の進捗報告を締めたいと思います。日本では醤油と味噌は欠かせない伝統的な調味料です。現在でも自家製味噌を使っている家庭があるそうですが、江戸時代では味噌は家で作るものという感覚が強かったようです。そうしないとお金が貯まらないといったような文言も残っています。そのため味噌の市販化はかなり遅れます。他方で醤油の市販化は早く、京都・兵庫・和歌山など酒醸造の盛んな地域では室町時代には起こっています。醤油の市販化が東に伝播してくるのが江戸時代です。ちなみに醤油の生産量第1位で全国の33%を占めます。そんな千葉県において醤油産地として発達したのが銚子市なのですが、銚子の醤油醸造元の多くは江戸時代前期から中期に紀州(和歌山)から移住してきた技術者なのです。何故ここなのかというと、単に銚子の気候が紀州と似ていたから。ちなみに銚子では創業正保2年(1645年)の老舗「ヤマサ醤油」がよく知られていますね。
ということで月末のライブ配信、更には来月以降の研究の進展をお楽しみに!