今月は古代マヤ文明の一大都市、ティカルの建造物マウンドのサイズ分布に見られる冪乗則のチェックを行いました。具体的にはマウンドサイズ(㎡)と順位(Rg; Ranking)とを両対数グラフを用いて表示し、直線グラフが得られるかどうかによって冪乗則に従っているかどうかを確認しました。
下に示した図がその両対数グラフです。王族や貴族に属すると考えられる大型マウンド(図中a;上位30位程度)では傾きが-0.5程度の冪乗則に従うことが分かりました。またデータの大部分を占める中型~小型サイズ(図中b;30~1300位程度)では傾きが-0.8程度の冪乗則に従うことが分かりました。一方で最小クラスの小型マウンド群(図中c;1300~1800位程度)では点群が直線形にならず、この範囲では冪乗則に従っていないことが分かりました。
この最小クラスのマウンド群が冪乗則に従わない結果になった要因は、マウンドサイズのデータを1960年代にペンシルヴァニア大学が行った測量成果図から取得したことであると考えています。私はこの測量図からマウンドサイズを測り、縮尺に合わせてオリジナルサイズを算出したわけですが、地図の縮尺の関係上、最小サイズのマウンド群はいずれも地図上では長軸・短軸共に数mmといった似通った値になります。そのため分布の裾でゆっくりと減衰することを特徴とする冪乗則とは異なり、同値のデータばかり集まってしまったために先述のような結果になった可能性があると考えています。
12月は主に自然科学や経済学、社会学に見られる冪乗則を取り扱った論文を読んで勉強していました。1月後半からはいよいよ調査が始まりますが、他分野の勉強と、冪乗則モデルの分析方法についても勉強を続ける予定で、個々のマウンドではなく建築グループ単位の分析も始めたいと思います。また来月末からは少しずつ調査成果を報告できればと考えています。