当時、私(藤田恭之)は大学院の2回生(29歳)でした。その時所属していた研究室には、協調性に欠け、他の研究者と度々軋轢を起こすメンバーが一人いました。ある日、彼は研究室の他のメンバーに大きな迷惑をかける事件をしでかしてしまいました。しかし、彼は全く反省する様子がないばかりか、その後始末を私に押し付けてきたのです!怒りの収まらなかった私は、研究室の横のトイレの便座に腰掛け、彼をどうしたものかとあれこれ考え始めました。そして、「あいつは本当にがんのような奴やなあ、どうしたら退治できるのだろうか」と呟いた瞬間閃いたのです。
私たちの社会では、我々の手に負えないような極悪人が出現した際には、警察が処理にあたります。でも、少し悪い彼のような人間に対しては周りの人間がなんとか排除あるいは矯正しようと試みます。同様に、悪性度の高い腫瘍細胞は免疫細胞という特殊な細胞が処理にあたるのですが、チョイ悪の腫瘍細胞は周りの正常細胞がなんとか対応するのではないだろうか?この考えは面白いぞ!!
それから10年近く、そのアイデアを温め続け、2002年にロンドンで自分の研究室をもつ機会を得てから、満を持して研究に着手しました。研究の立ち上げの時には、様々な技術的な困難に出くわし、壁に何度も何度もぶち当たりましたが、研究室のメンバーと必死で試行錯誤を繰り返し、問題解決に挑みました。そして、2005年某日、正常細胞と発がんタンパク質Ras変異細胞とを混ぜて両者の間で何が起こるかを調べたところ、Ras変異細胞が正常細胞層から管腔側へはじき出されるのを観察することができました。正常細胞が隣接するがん細胞を自分の社会から排除したのです! そのムービーを見た時の興奮は今でも忘れることができません。そして、2009年、正常細胞に囲まれた初期がん細胞が組織から排除されることを世界で初めて報告することができました。その後の私たちの研究で、正常細胞が様々なタイプのがん細胞を駆逐する能力を有していることが明らかになってきました。
私の研究テーマは、正常細胞とがん細胞の間で起こる競合現象(細胞競合)です。正常細胞とがん細胞はお互いの違いを認識することができるのでしょうか?その境界では、一体何が起こっているのでしょうか?
最近の私たちの研究で、がんの超初期段階では、正常細胞は隣接するがん細胞の存在を認識し、それらを駆逐する能力があることが明らかになってきました。私の研究室は、この新たながん研究分野のパイオニアであり、現在世界の先頭を走っています。
しかし、どのような分子がこのがん排除機構に関わっているのかについては、まだ明らかになっていません。
そこで、様々なスクリーニング手法を用いて、正常細胞とがん細胞の境界で、正常細胞側およびがん細胞側においてどのような分子が、細胞間の認識機構やがん細胞の排除に関わっているのかを明らかにしていきます。これにより、これまでがん研究のブラックボックスであった「がんの超初期段階で何が起こっているのか?」という謎に迫ることが期待できます。
さらに、それらの分子の機能を制御する薬剤を開発することによって、「正常細胞ががん細胞を排除するメカニズムを活性化する、あるいはがん細胞が正常細胞からの排除を免れるメカニズムを不活性化する」という、がんを取り巻く細胞の社会性を利用した、全く新しいタイプのがん予防・治療法の確立を目指します。
現在、日本では2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなっています。『がんで苦しむ患者さんを少しでも減らしたい』、その願いが、私の研究への大きな原動力です。糖尿病や膠原病など他の慢性疾患と同じように、がんについてもより早期に発見し治療することによって治療成績が大いに向上することが期待できます。遺伝子の変異が1つあるいは2つしか蓄積していない超初期段階において病変を見出し、予防的治療を行うことができれば、医療分野に革新的な波及効果を与えることでしょう。その大きな目標に向って、私たちは毎日夜遅くまで研究に励んでいます。是非、皆様のお力を得て、さらに研究を加速させていきたいと心から願っております。
これまで文科省からの研究費(科研費)を主に用いて研究を進めてきましたが、フルパワーで研究を推進するには残念ながら十分な額ではありません。そこで今回、皆様からの御支援を頂くことで、「がん予防薬の開発」という大きな夢に向って前進していきたいと考えています。また、皆様から様々なフィードバックを頂くことによって、実際に研究を行っている私の研究室の若いメンバーにとっても大きな励みになると思います。
現在研究に用いている培養細胞は、(私たちが独自に樹立した)テトラサイクリン添加によってがんタンパク質を発現する特殊なもので、その培養には高額な試薬が必要になってきます。また、各種スクリーニングにかかる費用や同定したタンパク質に対する抗体の作成にも多額の研究費が必要になってきます。そこで是非とも、「がんを撲滅したい」という熱い思いを皆様と共有し、大きな目標を一緒に目指していきたいと考え、今回のプロジェクトを立ち上げました。
時期 | 計画 |
---|---|
2015年11月〜2016年02月 | クラウドファンディングに挑戦 |
2016年02月 | 実験開始 |
2016年09月 | 学会発表@日本癌学会 |
2017年07月 | 論文執筆 |
これから新たな知見を論文で発表するごとに、培養細胞のイメージ(正常細胞が変異細胞を駆逐する様子など)、あるいはマウスにおける初期がん排除の写真、などを御送りします。私たちの研究が発展していく様子をしっかりと御伝えできれば、と願っております。
オリジナル画像 / 学会講演資料(解説付き)
45人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
オリジナル画像と解説付きの学会講演資料に加えて、研究室特性Tシャツ(通称:ヤスラボTシャツ)をプレゼントいたします。オリジナルの「押しくら細胞」のデザインにご注目ください!
研究室特製Tシャツ / オリジナル画像 / 学会講演資料(解説付き)
63人のサポーターが支援しています (限定 200 個)
特別講演会(一般席)にご招待いたします。北海道大学と東京の二拠点開催です。どちらかの講演会にご参加いただくことができます。 【日程】2016年9月以降 【場所】東京都内あるいは北海道大学 日程が合わずに参加できない場合には、特別講演会オリジナルレポートを電子メールでお送りいたします。この機会にがん研究の最先端にふれてみませんか?
講演会参加権(一般席) / オリジナル画像 / 学会講演資料(解説付き)
28人のサポーターが支援しています (限定 200 個)
「押しくら細胞」のイラスト入りのオリジナル白衣をプレゼントいたします。着るも良し、飾るも良し、用途はさまざまです。特性Tシャツと共にご活用ください。
オリジナル白衣 / 研究室特製Tシャツ / オリジナル画像 / 学会講演資料(解説付き)
10人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
上記のリターンに加えて、アカデミスト限定で配信する「がん研究日誌(3回分)」をお送りいたします。研究過程で解明したことや、研究での苦労などについてリアルタイムでお届けいたします。
がん研究日誌(3回分) / オリジナル白衣 / 研究室特製Tシャツ / オリジナル画像 / 学会講演資料(解説付き)
9人のサポーターが支援しています (数量制限なし)
特別講演会(特等席)にご招待いたします。また、講演会後の懇親会にご参加いただき、がん研究に関する質疑応答や議論を行えればと思います(1時間程度)。
講演会参加権(特等席・藤田教授との会合実施) / がん研究日誌(3回分) / オリジナル白衣 / 研究室特製Tシャツ / オリジナル画像 / 学会講演資料(解説付き)
6人のサポーターが支援しています (限定 10 個)
がん予防薬開発の第一歩となる論文と学会スライドにお名前を記載しませんか?藤田先生の目指す夢を最大限に応援できるリターンです。
論文謝辞にお名前掲載 / 学会スライドにお名前掲載 / 講演会参加権(特等席・藤田教授との会合実施) / がん研究日誌(3回分) / オリジナル白衣 / 研究室特製Tシャツ / オリジナル画像 / 学会講演資料(解説付き)
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