皆様の暖かいご支援によりまして、本日9月7日(水)に目標金額をクリアいたしました。応援してくださったすべての皆様にこの場をお借りして感謝申し上げます。
この研究費により、変異の影響を受けないコロナウイルスの「動的エピトープ」を標的とする創薬を一気に加速して、一日も早く皆様が日常生活に戻れますように努力いたします。
このクラウドファンディングプロジェクトもあと2日となりましたが、最後まで全力投球で頑張りますのでよろしくお願いいたします。
新型コロナウイルスのワクチン接種が進められていますが、変異株(変異ウイルス)の出現が大きな問題となっています。初期の天然型ウイルスのmRNAをもとに設計されたワクチンでは、変異株に対して体内でつくられる抗体の中和効果が低減するおそれがあるためです(※1)。ウイルスやバクテリアなど(病原性微粒子)が体内に侵入すると、私たちの免疫システムは、病原性微粒子の表面に多数分布する膜タンパク質を抗体によって見つけ出し、攻撃して無毒化します。抗体の標的となる特殊な微小構造を「エピトープ」と呼びますが、ワクチンは、病原性微粒子のエピトープを免疫システムに覚えさせることで、実際に感染した際に素早く防御できるようにするしくみといえます。
新型コロナウイルスは、自身の遺伝子をランダムかつ頻繁に変異させてエピトープの構造を変えることで、免疫系からの攻撃を絶えず回避しようとしています。ところが、このウイルスの膜タンパク質(スパイクタンパク質)には「変異の頻度が著しく低い領域」がいくつも存在することが明らかになってきました。さらに、この領域を詳細に解析すると、ほとんどが糖鎖という分子で修飾されていることがわかりました。スパイクタンパク質の糖鎖修飾は免疫系の攻撃からウイルスを守ったり、ウイルスが感染・増殖しやすい環境に移動させたりするための重要な役割を担っています。すなわち、こうした糖鎖修飾領域の多くは、ウイルスにとって失うことができない「変異したくない領域」だと考えられるのです。言い換えると、このような領域は「ウイルスの弱点」であり、ウイルスの変異にも左右されにくい創薬の有望なターゲットとなる可能性が高いと言えます。
私たちはこれまで、タンパク質が糖鎖などで修飾されるしくみやその生物学的な意義、疾患との関連性について研究してきました。その過程で、糖鎖修飾によってタンパク質の構造が変化し、抗体が認識する特定の構造(エピトープ)が出現したり消失したりすることを発見しました。たとえば、MUC1というタンパク質の糖鎖修飾は、がん患者さんと間質性肺疾患の患者さんでは全く異なります。この糖鎖修飾の違いによって、この2つの疾患では異なるエピトープが出現することを初めて明らかにしたのです。この発見は、疾患に特徴的なエピトープの形成機構としてはこれまでにないメカニズムであり、私たちはこのように糖鎖修飾によってダイナミックに出現するエピトープを「動的エピトープ」と名付けました。
動的エピトープの考え方が重要なのは、このような疾患に特徴的な構造が創薬の新たなターゲットになるためです。私たちは、新型コロナウイルスの弱点がスパイクタンパク質の糖鎖修飾部位にあるのであれば、この「動的エピトープ理論」を応用することでこのウイルスへの効果的な攻めの対抗策を明らかにできるかもしれないと考えました。
この研究プロジェクトの第一の目的は、動的エピトープ理論に基づいて、新型コロナウイルスの治療薬(特効薬)のターゲットとして最も重要な「ウイルスの弱点」を見つけることです。
すでに紹介したように、このウイルスのスパイクタンパク質には糖鎖によって修飾される領域がいくつも存在しています。これらの動的エピトープ候補は変異の頻度が著しく低いことから、ウイルスが増殖するためには決して失うことができない「極めて重要な弱点」が存在すると考えられます。私たちはこれまでにそのような「ウイルスの弱点」としての動的エピトープ候補をいくつか見出して、現在それらを特異的に見分けて攻撃する治療薬候補(中和抗体)の作製を進めています。
もちろん、新型コロナウイルスに対する実用的な治療薬の開発には、このような中和抗体と動的エピトープの結合の様子、さらにこのウイルスの感染メカニズムの特徴などに基づいて安全でより効果の高い医薬品としての構造や性質などを調整する必要があります。しかし、「ウイルスの最大の弱点」としての膜タンパク質の「動的エピトープ」をターゲットとする私たちのアイデアによって創られるユニークな特効薬の候補にはワクチンで懸念されているウイルス遺伝子の変異の影響を受ける可能性がほとんどありません。
私たちの研究活動は、主に文科省や厚労省などからの競争的資金や企業との共同研究費などで支えられています。しかし、公的な競争的資金の多くは、ウイズコロナ・ポストコロナの強靭な社会を創るための研究課題に充てられ、難易度が高い「治療薬」のための基礎研究の資金確保は大変困難な状況にあります。守りの要である「ワクチン」と同様に、攻めの切り札の「治療薬」、とりわけウイルスの感染と増殖を特異的に阻止する「特効薬」の必要性が一層高まっています。
今回のクラウドファンディングの目標金額520万円は、これまでの研究で明らかとなってきた動的エピトープが真にウイルスの弱点であることを、主として治療薬候補分子の設計(約50万円)と作成(約30万円)、構造物性分析(約150万円)や薬効の評価(約120万円)などの実験によって証明して具体的な治療薬候補のデザインを実現するために使いたいと思います。このもっとも基本的で重要なステップの成功こそが新型コロナウイルスに特異的で有効な治療薬(特効薬)を実現するために今、私たちに課せられた使命であると考えています。私たちの挑戦が、皆様からのご支援によって新型コロナウイルスの「治療薬」開発を加速する新しいアイデアやシーズのさらなる「大きなうねり」へと展開することを期待しています。
(※1)読者からのご指摘により文章を変更いたしました(2021年9月2日)。
Date | Plans |
---|---|
2021年9月 |
高分子討論会招待講演(予定)
|
2021年12月 |
国際学会招待講演(The 2021 International Chemical Congress of Pacific Basin Societies)
|
2022年3月頃 | 新型コロナウイルスに対する新しい治療薬候補についての研究成果・進捗状況などの情報を開示、さらに論文として公表予定。 |
研究報告レポート(PDF版)をお送りします。レポートでは、本研究に関する研究の進捗状況などについて報告いたします。
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皆さまにお送りする研究報告レポートにお名前を掲載させていただきます。
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オンラインのセミナーにご招待いたします。今回のプロジェクトについてお話しいたします。当日参加できなかった方には当日のセミナーの動画をお送りいたします。
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今回のプロジェクト「動的エピトープとコロナウイルス治療薬」に関する新たなテーマ等を含む特別講義を配信いたします。
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