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古代エジプト人の祈りを、神像の科学的調査から読み解く!

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寄付型
SUCCESS
山花京子
東海大学、准教授
支援総額: 1,388,000 円
目標金額: 1,000,000 円
達成率
138 %
サポーター
150
残り時間
終了
募集期間は終了しました

目標金額を達成しました!

皆様
プロジェクト達成目標に到達しました~~!!
本当にありがとうございます!

6月10日に開始し、約6週間でプロジェクト達成目標に到達することができました!皆様、本当に心からお礼を申し上げます。

中盤に伸び悩んだときは、正直なところもうダメだろうと思いました。やはりこのコロナ禍では文化財の修復保存などにはあまりご関心がないのではないか・・・と考えたりもしました。

しかし、その時にアカデミストの担当の阿部さんをはじめ、研究者仲間や友人、職場の同僚、教え子が積極的にSNS発信をしてくださったおかげで、支援の輪が広がり、普段ではアウトリーチができないようなところまでクラウドファンディングの情報を拡散することができました。

6週間の道のりはちょうど大学の春学期の繁忙期でしたので、サポーターの方々のご支援を把握してお返事を差し上げるのが遅れたり、SNSでの情報発信が不十分だったりと、いろいろと不手際がありましたことお詫び申し上げます。

ただ、今回121人(現在)ものサポーターの方々がヒヒ神像を救おうと立ち上がってくださってくれたことに、大変感動しています。
愛のあるサポートをいただき、本当にありがとうございます。

今後はヒヒ神像の調査を入念に行い、最適な修復保存方法を考えていきたいと思います。まずはヒヒ神像のフォトグラメトリーとX線CTスキャン、樹脂による3D復元、顔料や金属の成分分析と結晶構造の解明、木部の同定、放射性炭素による年代測定に着手します。

さて、皆様からは多大なサポートを頂戴いたしましたので、その返礼についても少しお話をさせていただきます。

進捗状況は活動報告レポートとして皆様にお渡しさせていただきます。そして、ご支援金額に応じてお名前を報告書や論文等の謝辞欄に掲載させていただきます。

次に、フォトグラメトリーの結果は、ご自宅のパソコンでくるくる回せる画像としてご支援金額1万円以上の皆様にお渡しいたします。

そして、X線CTスキャンや成分分析など、装置を使う分析等については録画をしますので、編集したものを3万円以上のご支持を頂戴したサポーターの方々にはドキュメンタリー映像としてお渡しいたします。

また、Academist Barでお話していましたように、私の専門のガラス質物質(ファイアンス)、あるいは古代エジプトに関連するお話(よもやま話も含めて)語り合う場としてアカデミック・カフェを設けましたので、5万円以上のご支援の返礼として開催させていただきます。楽しみにお待ちください!

それから、本来非公開のAENETコレクションをご支援額10万円以上をしてくださった方々にオンラインで披露します。コレクションの総数約5600点の中から、ご関心のありそうな遺物をお見せし、またご要望にお応えして収蔵庫の中を探し回ります。

今回、このプロジェクトが成立したのは
皆様のおかげ。
その御恩に報いるためにも、そして古代エジプトの神像の存続のためにも、これから頑張っていきたいと思います。

引き続き、ご支援とご協力をよろしくお願いいたします。
ありがとうございました。

チャレンジャー 山花京子

academist スタッフからの一言
文理融合の研究手法で、遺物から古代社会の様相を探る

阿部 麻衣子

古代エジプト人の暮らしはどのようなものだったのでしょうか。これまでも当時の遺物からは高い技術力と文化水準を持っていたことが明らかにされてきましたが、その実態はまだまだ多くの謎に包まれています。従来の考古学の型式学的研究手法だけでは難しいと考えた山花さんは、文理融合の研究により当時の社会様相を解明しようとしています。それは同時に、貴重な遺物を後世へ残すために適切な保存修復をおこなうための取り組みでもあります。「学部の垣根を超え文と理が融合した形でおこなうことが、大学という研究機関で遺物を保存し研究する意義」であると山花さんは語ります。今回のプロジェクトでは、ヒヒ神像を徹底的に調査することにより当時の交易状況や自然環境を解き明かしていきます。

「東海大学古代エジプトコレクション」を活用した取り組み

東海大学では、古代エジプトに関連する約6000点もの遺物と約15000枚の写真資料を所蔵しています。これらは1950年代から60年代にかけてエジプトに滞在されていた故鈴木八司名誉教授のご家族から2011年に寄贈を受けたものです。

私たちはこの膨大なコレクションを分類整理し、保存するプロジェクトを進めてきました。2011~13年は写真資料のデジタル化プロジェクト、2013~15年はパピルス文書の修復保存における国際プロジェクト、2017年~20年はコレクション遺物の復元実験プロジェクトなどをおこないました。それらの成果として、古くなった写真資料の画像復元処理をおこない展覧会などに活用できるようになりました。また、パピルス文書の解読が進み国際的なパピルスアーカイブのリストに本学のコレクションが加えられるようになりました。さらに、コレクション遺物の中の硫黄製ビーズやファイアンス、施釉凍石の復元実験をおこなうことによって特許申請にもつながり、古代の技術水準の高さを改めて認識することができるようになりました。

このように、私たちはコレクションを適切に保存するとともに、これを活用することで古代エジプトの社会様相を明らかにする取り組みをおこなっています。今回は「ヒヒ神像」を精査することによって物質的な構造を明らかにし、当時の神像制作技術の詳細を知るとともに、このような神像が作られた社会的背景をも調査し、古代エジプト人が崇めた神像には当時の人々のどのような祈りが込められていたのかを明らかにしたいと考えています。

知恵の神の化身「ヒヒ神像」

東海大学が所蔵しているヒヒ神像は、木材を彫刻した本体に樹脂(?)を浸み込ませた布で身体のパーツを作り、さらに青銅製の顔と冠、そして護符が付けられています。このようにさまざまな材料を合わせて作った像を複合像といいます。王立の神殿に祀られるような貴金属製でも、神殿内に奉納されるような青銅無垢でもない本像は、市井の人々の守り神として作られた可能性が高いといえます。

さらに、ヒヒは古代エジプトの知恵の神であり書記の神(知識階級の神)だった「トト神」の化身であったため、本像は家庭内の祠というよりも書記階級の人々が多く集まる場所に祀られていたと考えられます。

また、ヒヒのマントの形状や台座の形状、そして顔などを美術史的な観点から観察した結果、本像の制作年代をおおよそ末期王朝時代からプトレマイオス朝時代のあいだと推測します。つまり、古代エジプト文明が斜陽の時期を迎え、アケメネス朝ペルシアやアレクサンドロス大王と後続のプトレマイオス朝による外国の勢力による支配が続くなかで本像は作られたことになります。外国人による王朝が続くなかでも、古代エジプトで古来から信仰されていた知恵の神トトに対する信仰は市井の人々のあいだでは衰えをみせていなかったということです。

本像は作られてからおよそ2700~2400年経過していますが、完全な形を留めています。朽ちやすい有機物で作られた尻尾や、マントの青色、尻や爪の赤色、象嵌を施した眼なども残っています。本像がどのような素材を使い、どのように作られたのかを解明することにより、像が作られた当時、つまり征服王朝下でも古来のエジプトの神々への信仰を保持し続けた人々の生活の様子を垣間見ることができます。同時に外来の為政者たちが古代エジプト人をどのように統治したのか、統治の実態を文献史料とともに推測することも可能になります。

科学的調査から社会様相を探る

今回の調査では、ヒヒ神像を科学的に精査することからはじめます。まず、表面に残存する顔料のXRFによる成分分析とXRDによる結晶構造分析で、顔料の特定をおこないます。金属部分も走査型電子顕微鏡SEMにより金属の同定をおこないます。次に、ヒヒの胴体の木部に使われている木材をサンプリングし同定をおこないます。同時に放射性炭素年代測定によってこの像の実年代を推定します。さらに、尻尾部分を構成している布の顕微鏡観察と分析を通して材質と硬化剤(樹脂)の同定をおこないます。

その後、像全体をX線CTスキャンにて360°の透過画像で撮影します。これにより、ヒヒ像内部の構成やほぞ穴、木釘などの存在を確認し、ヒヒ像の正確な現状を把握します。さらにそこから3Dプリンタを使って忠実なレプリカを作成します。

複合像で使われた材料は多岐にわたるため、それらを分析することによって、材料の入手先もわかると期待しています。たとえば青銅は銅に錫を混合することによって作られますが、エジプトでは錫の産地は発見されていません。つまり、エジプト以外の土地との錫あるいは青銅の交易がおこなわれていたことになります。さらに、錫の産地を同位体分析などで明らかにすることによって、当時のエジプトの交易範囲がわかるのです。また、木の種類を調べることによって、当時の自然環境の復元にも役立ちます。

顔料の分析においても、ヒヒのマント部分を彩る青い顔料の組成がわかれば、その顔料の作り方を復元することが可能になります。そしてX線CTによる画像解析では、本像が一木造なのか、寄木造なのかといった全体の構造を知ることができ、隠れた部分の詳細もわかるため、制作した当時の技術水準が明らかになります。

ヒヒ神像は王権がエジプト人から外来の人々へと移行する時期に作られています。その時代背景を踏まえながら、外来の王朝と土着の神々との関係性についても当時の文献資料をもとに検討していきたいと考えます。

研究費サポートのお願い

ヒヒ神像の科学的調査のためには、さまざまな分析をおこなう必要があります。なかでも木部の放射性年代測定、顔料の結晶構造分析(XRD)、木と布、そして硬化剤(有機物)の同定は外部の調査機関に委託する必要があります。

また、本像は経年変化により木部に大きな亀裂が走り、部分的に断裂しています。特に、手はいつ崩落するかわかりません。貴重な古代の遺物を後世に伝えるためにも、今回の調査をもとに修復することを今後の大きな目的としています。3Dプリンタにて精巧なレプリカを作っておくことは、修復保存にも活用できます。さらに、この一連の分析はビデオを使って記録する予定です。

今回のプロジェクトは大学内の多くの専門家の協力を得ておこなわれます。分析は外部機関に委託しますが、分析結果の解釈は材料科学や有機化学、無機化学、物理学、生物学など大勢の専門家との対話によって研究が進められることになります。このように大学での文化財保護あるいは活用は、単に博物館学や文科系の学問分野だけが関与するものではなく、文と理が融合した形でおこなわれるのが理想と考えます。つまり、「知の集積機関」である大学にて学部の垣根を超えてさまざまな議論が交わされ、知のリソースを縦横に活用することで、最終的に「知の結晶」としての結論が導かれ、これまでわからなかったことまで解明することができるのです。

***
ご寄附いただいた皆様へ、確定申告により税制上の優遇措置が適用される領収書を東海大学より発行致します。

なお、領収書の日付は、お申込み受付日やカード決済口座からの振替日ではなく、アカデミスト株式会社より東海大学に入金された日付となります。

【法人・団体様からのご寄附】
・全額損金算入が可能です。(法人税法第37条第3項第2号)

【個人様からのご寄附】
・所得税…寄附金額(総所得金額の40%を上限とする)から2,000円を差し引いた額を、当該年の課税所得から控除することができます。
・個人住民税…東海大学を寄付金控除の対象法人として条例で指定している都道府県・市区町村にお住いの方は、個人住民税の控除を受けることができます。
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挑戦者の自己紹介

山花京子

私は高校生時代、アメリカに住んでいました。最初のころは英語でコミュニケーションができない焦りに毎日苛まれていました。ある日、担任の先生が「なんでも良いから一冊の本を読んで感想文を書きなさい」という課題を出し、その時に手にしたのがツタンカーメンに関する書籍でした。夏休みには州立大学で一般人向けの夏期講座を受講したのですが、そのトピックが「アクティウムの海戦」でした。当時高校生だった私にとって、大学の授業はとても新鮮で、しかも紀元前の出来事であるのにもかかかわらず、まるで実況中継のように戦況がわかることにすっかり感心してしまい、夏期講座が終了した後も歴史を学ぶ決意をしました。そして、その講座を教えてくれた先生から、古代エジプト史を学ぶならばシカゴ大学へ行きなさい、と助言を受けたことがその後の人生を変えたと思っています。その後、古代エジプトの遺物を扱う研究をおこなうには、従来の型式学的研究だけでは古代社会を浮き彫りにすることが難しいと考え、「文理融合」の研究手法を推し進めることを決意しました。古代エジプト人が残した遺物を科学の眼で謎解きをし、そこに歴史的解釈を加えることによって、当時の技術がよくわかることに気づきました。現在では、ガラスより古いガラス質物質であるファイアンスや施釉凍石について、科学の専門家と共同研究体制を取り、古代技術の発展と、その発展に裏打ちされた古代社会の様相を解き明かす研究をしています。

研究計画

時期 計画
2021年秋 総合研究機構 研究交流会 ポスター発表予定
2022年春 日本西アジア考古学会 口頭またはポスター発表予定
2022年秋 日本オリエント学会 口頭またはポスター発表予定
2022年3月 日本西アジア考古学会「研究ノート」投稿予定
2022年秋 American Research Center in Egypt(国際学会誌)投稿予定

リターンの説明

リターンの金額に加え、追加支援をすることができます。追加支援分には消費税がかかりません。
1,000 円
注目のリターン : 活動報告レポート(PDF)、寄附金領収書

プロジェクトの活動をまとめたレポートをメールでお送りいたします。

リターン内容

活動報告レポート(PDF) / 寄附金領収書

37人のサポーターが支援しています (数量制限なし)

5,000 円
注目のリターン : 活動報告レポートに謝辞掲載、寄附金領収書

皆さまにお送りする活動レポートに、お名前を掲載いたします。

リターン内容

活動報告レポートに謝辞掲載 / 活動報告レポート(PDF) / 寄附金領収書

40人のサポーターが支援しています (数量制限なし)

10,000 円
注目のリターン : ヒヒ神像360°データ、寄附金領収書

今回のX線CTスキャンで撮影するヒヒ神像の360°データをお送りします。普段は知ることのできない、貴重なデータです。

リターン内容

ヒヒ神像360°データ / 活動報告レポートに謝辞掲載 / 活動報告レポート(PDF) / 寄附金領収書

61人のサポーターが支援しています (数量制限なし)

30,000 円
注目のリターン : ヒヒ神像X線CTスキャンドキュメンタリー動画、寄附金領収書

X線CTスキャン撮影の記録動画を編集して、配信いたします。

リターン内容

ヒヒ神像X線CTスキャンドキュメンタリー動画 / ヒヒ神像360°データ / 活動報告レポートに謝辞掲載 / 活動報告レポート(PDF) / 寄附金領収書

9人のサポーターが支援しています (数量制限なし)

50,000 円
注目のリターン : オンラインアカデミックカフェ、寄附金領収書

オンラインのアカデミックカフェにご招待いたします。古代エジプトコレクションのお話や、今回のプロジェクトについてご説明いたします。

リターン内容

オンラインアカデミックカフェ / ヒヒ神像X線CTスキャンドキュメンタリー動画 / ヒヒ神像360°データ / 活動報告レポートに謝辞掲載 / 活動報告レポート(PDF) / 寄附金領収書

2人のサポーターが支援しています (数量制限なし)

100,000 円
注目のリターン : コレクションの個別オンライン見学会、寄附金領収書

東海大学古代エジプトコレクションを、オンラインであなただけにご案内いたします。通常は見ることのできない貴重な遺物もご紹介します。

リターン内容

コレクションの個別オンライン見学会 / オンラインアカデミックカフェ / ヒヒ神像X線CTスキャンドキュメンタリー動画 / ヒヒ神像360°データ / 活動報告レポートに謝辞掲載 / 活動報告レポート(PDF) / 寄附金領収書

1人のサポーターが支援しています (数量制限なし)

150,000 円
注目のリターン : 大学HPにお名前掲載

東海大学のホームページに、あなたのお名前を掲載いたします。

リターン内容

大学HPにお名前掲載 / コレクションの個別オンライン見学会 / オンラインアカデミックカフェ / ヒヒ神像X線CTスキャンドキュメンタリー動画 / ヒヒ神像360°データ / 活動報告レポートに謝辞掲載 / 活動報告レポート(PDF) / 寄附金領収書

0人のサポーターが支援しています (数量制限なし)

このプロジェクトは、 2021年06月10日(木) 10時00分 から 2021年07月29日(木) 17時00分 までの間に目標金額1,000,000円を達成した場合のみ、決済が確定します。
お支払について
お支払にはクレジットカード(VISA, Mastercard)、銀行振込、コンビニ決済、Pay-easy、PayPalをご利用頂けます。
追加支援について
リターンの金額に加え、追加支援をすることができます。追加支援分には消費税がかかりません。
セキュリティについて

当サイトは SSL 暗号化通信に対応しております。入力した情報は安全に送信されます。

1,000 円

活動報告レポート(PDF)、寄附金領収書

37 人 が支援しています。
(数量制限なし)

5,000 円

活動報告レポートに謝辞掲載、寄附金領収書

40 人 が支援しています。
(数量制限なし)

10,000 円

ヒヒ神像360°データ、寄附金領収書

61 人 が支援しています。
(数量制限なし)

30,000 円

ヒヒ神像X線CTスキャンドキュメンタリー動画、寄附金領収書

9 人 が支援しています。
(数量制限なし)

50,000 円

オンラインアカデミックカフェ、寄附金領収書

2 人 が支援しています。
(数量制限なし)

100,000 円

コレクションの個別オンライン見学会、寄附金領収書

1 人 が支援しています。
(数量制限なし)

150,000 円

大学HPにお名前掲載

0 人 が支援しています。
(数量制限なし)

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